ETERNUS SF Storage Cruiser ユーザーズガイド 13.1 - Solaris (TM) Operating System / Microsoft(R) Windows(R) -
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第1章 ETERNUS SF Storage Cruiser(以下ESC)の概要

1.1 最近のストレージ動

ITを活用した社会システムが、生活の様々なシーンで利用されています。例えば、コンビニエンスストアにおけるチケット予約やATMによる現金引出し、携帯電話におけるeメール、写真メール、インターネット接続、インターネット経由の宅配便の配達状況確認などがあります。これらの社会システムは24時間、365日止まることなく、突発的なアクセス集中にも迅速に追随することが求められています。

ITが生活シーンの隅々にまで浸透することによって、これらのシステムを支えるストレージのデータ量が増大し、管理負担が増す傾向にあります。また、ビジネス上重要な情報の蓄積により、データへの常時アクセスが必須となったため、万一の問題発生時には早急な復旧が要求されます。これを裏付けるものとして、下のグラフのように、ストレージ投資の判断基準として、運用管理とシステムの信頼性を重視されるお客様が多いというアンケート結果もあります。

このような背景から、サーバノード直結ストレージ(DAS)に代わる技術として、ストレージをサーバノードから独立させ、複数サーバノードに分散していたデータを集約するSANやNASといったネットワークストレージの導入が進んでいます。DASの場合はサーバノードごとのストレージ管理が必要であり、その結果、未使用領域が多数のストレージ装置に散在することもしばしばですが、ストレージ装置を集約することにより、管理の一元化による運用管理コストの削減や、ストレージ容量の有効活用が可能になりました。この意味で、SANなどのネットワークストレージはシステムの全体最適化をストレージの面から推進するものといえます。

しかし、ストレージ装置やサーバが増加し、SAN構成が複雑化するのに伴い、信頼性や性能の面から見て最適な構成を設計するには高度なノウハウが要求されるとともに、問題が発生した際にその原因箇所を特定し、その影響がどの業務のどのデータに及ぶのかを把握するのが困難になってきました。これは、サーバノードとストレージ間の接続構成が複雑になり、データを格納するストレージとアプリケーションとの対応関係が人手では管理できなくなってきたことを意味しています。言い換えれば、従来の管理手法の延長では、システムとして一定のサービスレベルを維持することが難しくなっています。

1.2 製品の特

本製品は、ストレージ関連資源を統合管理する構成および関係・障害・性能管理機能を用いて、SAN 、DAS 、NAS等のマルチベンダストレージシステム環境の安定運用を支えます。

■ストレージシステム全体の装置管理を実現する構成管理

現状のストレージシステム全体の各装置の状態と装置間の物理接続状態をGUI 上でグラフィカルに表示します。各装置のアイコンからは詳細な画面にドリルダウンし、各装置のどの部分(例えばファイバチャネルスイッチのポート等)がどこに接続されているかを詳細に把握することが可能です。

■各装置の細かなリソースも完全管理する関係管理

ストレージ装置内部の詳細構成の管理はもとより、ディスクから物理経路、関連するサーバノードのファイルシステム、マルチパス、ミラーディスク、データベースの構成情報を自動的に取得し、これらを関連付けて一画面で表示します。

今までは、各要素に各管理ツールがあり表示形式が様々であるために要素間の関連付けを認識することは非常に困難でした。本製品では同一画面で同一の表示形式で要素の関連付けを表示できるため、全体構成を簡単に把握し、万一構成ミスがあったとしても問題点を検出する事ができます。さらに、これらの構成情報をファイルに保存できるので、オフラインで構成をチェックしたり、以前の構成と比較したりすることができます。

■障害箇所・影響範囲の把握が容易な障害管理機能

装置に発生した障害内容は適切に解読され解り易く表示されます。さらに、関係管理画面で詳細表示することにより部品単位での原因特定が可能となります。また、経路表示により障害部品の影響範囲も細かく表示可能ですので、リカバリも迅速・的確に行えます。

障害情報は、総合運用管理ソフトウェアSystemwalkerや他社管理ソフトへの自動通報も可能ですので、システムの集中監視が可能となります。

■性能情報管理による最適環境の提供

管理対象装置の性能情報を管理/表示することが可能です。装置の性能情報を運用管理サーバに保管しますので、リアルタイムの性能情報はもちろん過去の性能情報まで参照可能です。さらに性能情報はグラフ形式で参照することができますので、簡単に装置の動作状況や負荷状況を把握することができます。

また、装置に閾値を設定することにより、設定した閾値を超えた場合、アラーム通知させることができます。ボトルネックの原因と場所を特定できますので、装置構成の改善が図られ、最適な環境での運用が可能となります。

性能情報は、Systemwalker Service Quality Coordinatorのレポート画面等で参照することが可能です。

1.3 各機能の概

ストレージシステムに対して当ソフトウェアは以下のような機能を提供します。

1.3.1 構成管

■メインビュー

本製品の中心となる、ログインアカウントでアクセス可能な装置全体を管理する画面です。

マップ領域には各カテゴリ(サーバ、ストレージ、SAN)のアイコンが表示されます。

■カテゴリビュー

各カテゴリ(サーバ、ストレージ、SAN)を選択すると、そのカテゴリに登録されているドメインもしくはSAN機器種別をマップ表示します。

SANカテゴリを選択した場合は、ログインアカウントでアクセス可能な全装置がツリーに反映されます。

■ドメインビュー

各ドメインに登録されている装置(ホスト、ストレージ)とその関連装置を管理します。

1装置1アイコンでマップ表示されます。

サーバドメインとは、サーバを管理するための論理的な枠組みです。

ストレージドメインとは、ストレージを管理するための論理的な枠組みです。

基本ドメインとは、サーバドメインおよびストレージドメインでサーバおよびストレージの物理資源を管理する論理的な枠組みです。

■SANビュー

SANカテゴリの機器種別を選択すると、その機器種別の装置をマップ表示します。

■サイドビュー

ある装置と物理的および論理的に接続されている装置とファイバチャネルスイッチのみを表示させたい場合、または、アクセスパスの管理を実施する場合に使用します。(アクセスパスはサーバノード、ストレージが選択された場合のみ)

ドメインビューで装置アイコンを選択してダブルクリックすることにより表示されます。

■アクセスパスの管理

サーバノード側、ファイバチャネルスイッチ側、ストレージ側が保持しているセキュリティ機能を統合管理し、自動管理・自動設定を行います。

既に装置に設定されているバインディング/ゾーニング情報からアクセスパスの自動認識・表示も可能です。また、アクセスパスを各装置のセキュリティ情報を元に統合管理しているため、アクセスパスを形成しているSAN上の経路である物理ファイバチャネルケーブルが切断されても、異常状態として表示することが可能です。

本製品が管理しているアクセスパスに関しては、本製品からの自動構成定義変更だけでなく、手動での装置に対する構成定義変更が可能です。この場合、この手動設定変更が正しく実施されたかどうかを本製品から確認することが可能です。

■関係管理ウィンドウ

各装置に論理的に接続されている装置とファイバチャネルスイッチを表示させたい場合に使用します。サイドビューと異なり、各装置の論理要素(エレメント)をより詳細に表示をさせることが可能です。

各エレメントはグラフィカルに関連づけて表示されます。

エレメントが状態を持つ場合は、その状態も表示できますので、装置内部で異常が発生した場合にすぐさまその場所の特定が可能です。

また、各エレメントをクリックするとそのエレメントに関連するエレメントが区別されて表示されますので、障害発生時などに影響箇所を簡単に認識することが可能です。

関係管理ウィンドウの起動および表示方法は以下の3通りの方法があります。

ストレージシステム管理の対象となる装置は、本製品に登録する必要があります。装置の登録には装置のIPアドレスが必要となります。また、ファイバチャネルスイッチ、ストレージに関しては管理用のユーザIDとパスワードが必要となります。

1.3.2 障害管

本製品の障害管理機能は以下の4つの特徴を持っています。

■装置からのイベント通知による非同期障害イベント監視

本製品は、装置からのSNMP Trapや、エージェントからの監視情報を処理し、的確にデコードし、非同期なイベントとして表示します。

本製品が表示するSNMP Trapの内容は、通常のSNMP MIBコンパイラを使ったデコードよりも詳細に分かりやすく、スムースな運用を支援します。

表示するイベントの詳細なカスタマイズ(表示・非表示・表示色等)がXMLファイルを用いて可能です。従って、環境に合わせて運用ができます。また、このXMLファイルを編集・追加することにより、本製品がサポートしていない装置の障害管理も動的に可能になります。

また、イベントはSystemwalker Centric Manager連携やユーザが自由に編集できるShellファイルに連携できますので、環境に合わせた対応が容易です。

イベントについての詳細は「D.6 SNMP Trap XML定義ファイル説明」を参照してください。

■装置ポーリング機能による障害監視(マネージャによる自動処理)

装置ポーリング機能はLANに接続されている全装置について、本製品が定期的にSNMPやping、独自プロトコルを利用して装置の状態監視を行う機能です。本機能により装置からのSNMPトラップが受信できなかった場合にも装置状態の変化を検知することができるとともに、各装置と本製品運用管理サーバ間のネットワーク異常を検知することができます。

状態変化はイベントログとアイコンに反映されます。

本機能は手動組み込み装置に対しても有効です。

■現時点の装置状態の確認による障害監視(ユーザによる手動操作)

最新状態の取得操作によって、現時点の各装置の状態によりアイコンの色が変化します。

障害が発生すると、カテゴリアイコンまたは装置アイコンが、赤もしくは黄色で表示されます。装置アイコンを関係管理ウィンドウへ組み込むと、故障部品を細かく特定することが可能です。(ただし一部の障害については装置アイコンの色に対しては変化がなく、イベントのみの表示となります。)

■回転灯アイコンの点灯による障害監視

装置状態に変化があった場合に、回転灯アイコンが赤色、黄色または緑色で点灯します。

回転灯アイコンをクリックし、表示されたダイアログに対し[OK]を選択すると、最新状態の取得処理が行われ、現時点の各装置の状態によりアイコンの色が変化します。(上記の「現時点の装置状態の確認による障害監視」と同様の処理が行われます。)

回転灯アイコンについての詳細は「6.5 回転灯アイコン表示」を参照してください。

一度障害管理が開始されると、本製品のクライアントプログラムの動作の可否に関わらず、マネージャの起動のみで障害管理を続けます。

障害監視はLAN経由で行われます。LANが接続できない装置の障害監視はできません。

1.3.3 性能管

メインビュー、ドメインビューまたはSANビュー上で性能情報確保対象の装置に対して性能情報確保指示を行うと、本製品の性能管理部が各装置に対してSNMPを使用して性能情報を獲得し、この情報を運用管理サーバに格納していきます。この情報は性能管理ウィンドウから表示・管理することが可能です。メニューの[ファイル(F)]より[性能管理ウィンドウ]を起動し、ドメインビューまたはSANビューの性能管理を行っている装置をドラッグ&ドロップしてください。

ファイバチャネルスイッチ、およびETERNUSディスクアレイに対して性能管理機能をサポートします。この機能により、装置内の細かな動作状況や負荷状況を把握することが可能です。

さらに、特定の情報には閾値を設定することができます。この機能によりボトルネックを事前に検出して対処することも可能になります。

性能情報は、Systemwalker Service Quality Coordinatorで参照することが可能です。なお、詳細はSystemwalker Service Quality Coordinatorのマニュアルで確認して下さい。

サポート装置については、「1.3.5 サポートレベル」を参照して下さい。

■性能管理できる情報

性能管理できる情報は、ファイバチャネルスイッチとETERNUSディスクアレイで異なります。

  1. ファイバチャネルスイッチの場合

    性能情報(単位) ファイバチャネルスイッチ
    ポート 送信および受信データ転送量(MB/S)
    CRCエラー数

  2. ETERNUSディスクアレイの場合

    性能情報 (単位) ETERNUS8000
    ETERNUS4000(M80/100除く)
    ETERNUS6000 ETERNUS4000 M80/100,
    ETERNUS3000(M50除く),
    ETERNUS GR series
    (ETERNUS GR720以上)
    LUN
    LogicalVolume
    RAIDGroup
    ReadおよびWrite回数 (IOPS)
    ReadおよびWriteデータ転送量 (MB/S)
    ReadおよびWriteの平均応答時間 (msec)
    Read,Pre-fetchおよびWriteキャッシュヒット率 (%)
    ディスクドライブ ディスク使用(ビジー)率 (%)
    CM 負荷(CPU使用)率 (%)
    コピー残量 (GB) ×
    CA 負荷(CPU使用)率 (%) × ×
    ReadおよびWrite回数 (IOPS) ×
    ReadおよびWriteデータ転送量 (MB/S) ×
    DA 負荷(CPU使用)率 (%) × ×
    ReadおよびWrite回数 (IOPS) × ×
    ReadおよびWriteデータ転送量 (MB/S) × ×

■閾値監視できる情報

閾値監視できる情報は、ファイバチャネルスイッチとETERNUSディスクアレイで異なります。

  1. ファイバチャネルスイッチの場合

    Portスループット(%)

    ※Portスループット値(MB/S)に関して、最大転送能力(MB/S)に対する許容範囲の割合(%)として監視します。

  2. ETERNUSディスクアレイの場合

    LUN (OLU)のレスポンス時間(msec)

    RAIDGroup (RLU,LUN_R)の平均使用(ビジー)率(%)

    CM負荷(CPU使用)率 (%)

1.3.4 仮想ストレージ管

仮想ストレージ管理は、ストレージの仮想化機能を装備したバーチャリゼーションスイッチ (仮想化スイッチ) を、ESCが制御することで、ストレージ装置の物理的な属性に依存しないボリュームを提供する機能です。


機能の詳細については、「ETERNUS SF Storage Cruiser ユーザーズガイド 仮想ストレージ管理編」を参照してください。

1.3.5 サポートレベ

ストレージ装置の機種により本製品のストレージ管理機能を利用できる範囲は異なります。 本製品では機能の利用可能範囲をサポートレベルという設定値で表して、障害監視機能などの設定で使用します。 サポートレベルとして選択できるものは以下のとおりです。

サポートレベル

代表装置名

装置検出

障害管理

管理画面連携

FC接続線描画

関係管理詳細表示*1

性能管理

SNMP Trap監視

装置ポーリング監視*2

装置状態の取得

A

ETERNUS8000
ETERNUS6000
ETERNUS4000
ETERNUS3000(モデル50除く)
ETERNUS SN200(モデル250M除く)

ETERNUS SN200MDS *6
PRIMEGRY BX600ファイバーチャネルスイッチブレード

自動*3

自動

○ *10

B

ESCエージェントまたはSSCエージェントインストール済のSolaris OS, Windows, Linux, HP-UXサーバノード
ETERNUS LT270,LT250,LT160 *6
ETERNUS VS900 *6
ETERNUS VD800 *8
McDATA ファイバチャネルスイッチ *6

自動*3

自動

-

E

ETERNUS SX300
ETERNUS SX300S
ETERNUS LT120,LT130,LT230
ETERNUS NR1000F series, NR1000C series

手動

○*6

○*9

-

手動設定

手動

-

I

その他の手動組み込み

手動

-*4

-*5

-

手動設定

手動

-

J

テープ暗号化装置

手動

○*7

-

手動設定

手動

-


*1. ○は、装置内詳細エレメント表示が可能です。△は、装置及びFCポートの表示が可能です。

*2. SNMPを利用する装置はETERNUS8000、ETERNUS6000、ETERNUS4000、ETERNUS3000です。エージェント導入サーバノードは独自プロトコルを利用します。その他の装置はpingを利用した監視となります。

*3. 下記の装置は「サブネット内装置検出」機能に対応していません。IPアドレスを1台ずつ指定する「単体検出」機能を使用して下さい。なお、サーバノードについては「サーバ登録」機能を使用して下さい。

*4. SNMP Trapサポート装置の場合は、SNMP Trap XML定義ファイルを作成することで管理可能です。

*5. LANサポート装置の場合は、手動組み込み時にIPアドレスを指定することでpingによる監視が可能です。

*6. 装置のSNMP Trap送信設定作業は個別に実施する必要があります。(本製品から自動設定できません)

*7. ベンダ固有のトラップは存在しないため、装置共通トラップのみ表示が可能です。

*8. ETERNUS VD800のディスクアレイ装置において、ホストサーバと接続するFC-CAポートに対するアクセスパス設定・削除は実施できません。また、関係管理情報では、ホストサーバと接続するFC-CAポートの論理情報は表示されません。VDSC(Virtual Disk Service Console)を使用し設定・表示確認を実施してください。

*9. ETERNUS SX300、ETERNUS SX300Sは装置ポーリング監視をサポートしていません。

*10. 性能情報をSystemwalker Service Quality Coordinatorで参照することが可能です。ただし、ETERNUS SN200 MDS seriesファイバチャネルスイッチは未サポートです。

1.4 ESCの構 

ESCのプログラムはESCマネージャ、ESCエージェント、ESCクライアントから構成されます。

このユーザーズガイドではそれぞれのプログラムをインストールした装置を、運用管理サーバ、サーバノード、運用管理クライアントと呼んでいます。これらのプログラムは同一装置にすべてインストールして運用することも可能です。この場合、これらのプログラムに対するインストール順序の指定はありません。

ESCマネージャ(運用管理サーバ)は、LANに接続されたストレージシステムに関わる装置の情報を獲得・設定するESCの中央管理部です。制御に使用しているデータのうち、重要なデータについてはデータベースに格納します。

ESCエージェント(サーバノード)は、ストレージを使用するサーバノード上でHBAやマルチパス制御ドライバ等のプラットホームソフトウェアの情報を制御し、ESCマネージャと通信を行います。複数のサーバノードが存在する場合は、各サーバノードにインストールします。

ESCクライアント(クライアント)は、ESCマネージャと接続し、ESCのGUI(画面制御部)として機能します。1つのESCに複数のクライアントを同時接続可能です。

[図1.1 ESCの運用構成]

1.5 ESCとSSCの機能の違 

■ESCで扱いを変更した機能

ESCで扱いを変更した機能は以下の通りです。

機能

SSCの場合

ESCの場合

ログインアカウント

初期値として以下のアカウントが存在

・manage

・monitor

初期値としてのアカウントは存在せず、運用管理マネージャインストール時にログインアカウントを作成

クライアント終了方法

[ファイル(F)]-[終了(X)]でアプリケーション終了

[ファイル(F)]-[ログアウト(G)]でクライアントを終了しログイン画面に戻る


■ESCで提供しない機能

ESCで提供しない機能は以下の通りです。


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