4) プロキシグループの分離
等価性コピーが完了すると、マスタグループとプロキシグループは等価性維持状態になります。等価性維持状態のマスタグループとプロキシグループを分離することにより、プロキシグループにマスタグループのスナップショットを採取します。
4-1) ファイルシステムの整合性を確保します。
スナップショットのファイルシステムの整合性を確保するには、ファイルシステムの更新を抑止する必要があります。しかし、/、/usr、/var などのファイルシステムは、システムが動作するのに必要であるため、システム運用中にはマウント解除できません。以下の方法で、システムディスクへの書込みや、システムディスクに未反映の書込みが少ない状態にしてください。
システムをシングルユーザモードで起動します。(省略可能)
ETERNUS ディスクアレイの SAN ブート環境で OPC 機能を使用してバックアップを行う場合、本手順は推奨しません。本手順を実施した場合、OPC物理コピーが完了するまで、マルチユーザモードによる再起動ができません。
システムディスクに書込みを行っているアプリケーションプログラムを停止します。(省略可能)
sync(1M) コマンドを実行することにより、メモリ上で更新されてディスクにまだ書き込まれていないファイルシステムのデータをディスクに書き込みます。
注意
lockfs(1M) コマンドを使用して / ファイルシステムを書込みロックすると、システムがハングアップすることがあります。また、/var ファイルシステムを書込みロックすると、GDS および GDS Snapshot のコマンドがハングアップします。したがって、/ および /var は書込みロックしないでください。
a.、b.、c. をすべて実施しても、ファイルシステムの更新を完全には抑止できません。そのため、スナップショットのファイルシステムには、システムパニック発生後と同様な不整合が生じる場合があります。
a.、b.、c. をすべて実施した場合、スナップショットのファイルシステムは、シングルユーザモードでパニックが発生した後のファイルシステムと同様な状態になります。
a.、b. を省略して c. のみ実施した場合、スナップショットのファイルシステムは、システム運用中にパニックが発生した後のファイルシステムと同様な状態になります。
どちらの場合も、ファイルシステムに不整合が生じる場合があるため、手順 5-2) で整合性のチェックと修復を行う必要があります。
4-2) プロキシグループを分離します。
# sdxproxy Part -c System -p Proxy1,Proxy2 |
参照
GDS 運用管理ビューを使用する場合は、「5.3.2.2 バックアップ (等価性方式) 」の「プロキシ分離」を参照してください。
参考
ETERNUS ディスクアレイの SAN ブート環境
OPC 機能が使用できる場合、プロキシグループが分離された状態で、以下のコマンドを実行することにより、マスタグループからプロキシグループにデータをコピーします。GDS 運用管理ビューを使用する場合は、「5.3.2.3 バックアップ (OPC 方式)」の「プロキシ更新」を参照してください。プロキシ更新の環境設定では、「瞬間スナップショット-する」を選択します。
# sdxproxy Update -c System -p Proxy1,Proxy2 -e instant |
4-3) 手順 4-1) の a. でシングルユーザモードで起動した場合は、マルチユーザモードで再起動します。
OPCを使用している場合、OPC物理コピーが完了してからマルチユーザモードで再起動します。OPC物理コピーの進捗は、sdxinfo -SコマンドのSTATUSフィールドで確認できます。
4-4) 手順 4-1) の b. でアプリケーションプログラムを停止した場合は、アプリケーションプログラムを起動します。
5) 代替ブート環境の作成
システムディスクの故障やデータ破損に備えて、プロキシボリュームからブートできるように設定を行います。
5-1) プロキシボリュームのアクセスモード属性を rw (読書き用) に変更します。
プロキシグループに作成されたプロキシボリュームのアクセスモード属性が ro (読取り専用) の場合は、rw (読書き用) に変更します。アクセスモード属性は、sdxinfo -V -e long コマンドの出力の MODE フィールドで確認できます。アクセスモード属性がすでに rw (読書き用) に設定されている場合は、下記のコマンドを実行する必要はありません。
# sdxvolume -F -c System -v Proot,Pusr,Phome,Pswap,Pvar,Popt # sdxattr -V -c System -v Proot -a mode=rw # sdxattr -V -c System -v Pusr -a mode=rw # sdxattr -V -c System -v Phome -a mode=rw # sdxattr -V -c System -v Pswap -a mode=rw # sdxattr -V -c System -v Pvar -a mode=rw |
5-2) プロキシボリューム上のファイルシステムのチェックと修復を行います。
プロキシボリューム上のファイルシステムには不整合が生じている場合があるため、fsck(1M) コマンドを使ってチェックと修復を行います。
# sdxvolume -N -c System -v Proot,Pusr,Phome,Pswap,Pvar,Popt # fsck -y /dev/sfdsk/System/rdsk/Proot |
5-3) 代替ブート環境の設定を行います。
# sdxproxy Root -c System -p Proxy1,Proxy2 |
代替ブート環境の設定が完了すると、以下のようなメッセージが出力されます。
SDX:sdxproxy: INFO: completed definitions of alternative boot environment: current-boot-device=/pci@1f,4000/scsi@3/disk@0,0:a pci@1f,4000/scsi@3/disk@1,0:a alternative-boot-device=/pci@1f,4000/scsi@3/disk@2,0:a /pci@1f,4000/scsi@3/disk@3,0:a |
出力された現用ブート環境のブートデバイス名 (current-boot-device の値) と代替ブート環境のブートデバイス名 (alternative-boot-device の値) を控えておいてください。
注意
/etc/vfstab ファイルと /etc/system ファイルの権限
代替ブート環境の /etc/vfstab ファイルと /etc/system ファイルのグループ権限には、sdxproxy Root コマンド実行時の権限である root が設定されます。この代替ブート環境を使用してリストアを行うと、現用ブート環境の /etc/vfstab ファイルと /etc/system ファイルのグループ権限が sys から root に変更されます。グループ権限が変更されてもシステムの動作に影響はありませんが、リストア実行前と同じグループ権限にしたい場合は、chgrp コマンドを使用してグループ権限を sys に設定しなおしてください。
# mount -F ufs /dev/sfdsk/System/rdsk/Proot /mnt # chgrp sys /mnt/etc/vfstab # chgrp sys /mnt/etc/system # umount /mnt |
参考
ETERNUS ディスクアレイの SAN ブート環境
OPC 機能を使用している場合、OPC 物理コピーの完了を確認します。
# sdxinfo -S -c System
OBJ CLASS GROUP DISK VOLUME STATUS
------ ------- ------- ------- ------- --------
slice System Group1 Root1 root ACTIVE
slice System Group1 Root2 root ACTIVE
slice System Group1 Root1 usr ACTIVE
slice System Group1 Root2 usr ACTIVE
slice System Group1 Root1 home ACTIVE
slice System Group1 Root2 home ACTIVE
slice System Group2 Var1 swap ACTIVE
slice System Group2 Var2 swap ACTIVE
slice System Group2 Var1 var ACTIVE
slice System Group2 Var2 var ACTIVE
slice System Group2 Var1 opt ACTIVE
slice System Group2 Var2 opt ACTIVE
slice System Proxy1 Proot1 Proot STOP
slice System Proxy1 Proot2 Proot STOP
slice System Proxy1 Proot1 Pusr STOP
slice System Proxy1 Proot2 Pusr STOP
slice System Proxy1 Proot1 Phome COPY
slice System Proxy1 Proot2 Phome COPY
slice System Proxy2 Pvar1 Pswap STOP
slice System Proxy2 Pvar2 Pswap STOP
slice System Proxy2 Pvar1 Pvar COPY
slice System Proxy2 Pvar2 Pvar COPY
slice System Proxy2 Pvar1 Popt COPY
slice System Proxy2 Pvar2 Popt COPY |
コピー中は、コピー先のプロキシグループのスライスの STATUS フィールドに COPY と表示されます。プロキシグループのスライスの STATUS がすべて STOP になっていれば、コピーは完了しています。
5-4) プロキシボリュームを停止します。
代替ブート環境のデータを不当な書込みから保護するために、プロキシボリュームを停止します。
# sdxvolume -F -c System -v Proot,Pusr,Phome,Pswap,Pvar,Popt |
参考
GDS 運用管理ビューを使用する場合は、メイン画面でプロキシボリュームを選択し、[操作]:[ボリューム停止] を実行します。
6) 代替ブート環境の確認 (省略可能)
代替ブート環境でブートできることを確認します。
6-1) 代替ブート環境からシステムをブートします。
OpenBoot 環境で boot コマンドを実行します。boot コマンドでは、手順 5-3) のメッセージで出力された代替ブート環境のブートデバイスのうち 1 つを指定します。
# shutdown -y -g0 -i0 ok boot /pci@1f,4000/scsi@3/disk@2,0:a |
参考
手順 5-3) で出力された代替ブート環境のブートデバイス名の個数が代替ブート環境のブートデバイス数よりも多い場合、boot コマンドが以下のようなエラーになることがあります。
ok boot /pci@1f,4000/scsi@3/disk@2,0:a
Rebooting with command: boot /pci@1f,4000/scsi@3/disk@2,0:a
Boot device: /pci@1f,4000/scsi@3/disk@2,0:a File and args:
Evaluating: boot /pci@1f,4000/scsi@3/disk@2,0:a Can't open boot device ok |
この場合は、手順 5-3) で出力された代替ブート環境の他のブートデバイス名を指定して再度 boot コマンドを実行してください。
6-2) 正常にブートできていることを確認します。
mount(1M) コマンドや sdxinfo コマンドを使って、代替ブート環境で正しくブートされていることと、GDS のオブジェクトの状態に異常がないことを確認してください。また、必要に応じて、代替ブート環境のファイルシステムの内容に問題がないこと、アプリケーションが正常に動作できることなどを確認してください。
6-3) 元のブート環境に戻します。
OpenBoot 環境で boot コマンドを実行します。boot コマンドでは、手順 5-3) のメッセージで出力された現用ブート環境のブートデバイスのうち 1 つを指定します。
# shutdown -y -g0 -i0 |
参考
手順 5-3) で出力された現用ブート環境のブートデバイス名の個数が現用ブート環境のブートデバイス数よりも多い場合、boot コマンドが以下のようなエラーになることがあります。
ok boot /pci@1f,4000/scsi@3/disk@0,0:a Rebooting with command: boot /pci@1f,4000/scsi@3/disk@0,0:a Boot device: /pci@1f,4000/scsi@3/disk@0,0:a File and args: Evaluating: boot /pci@1f,4000/scsi@3/disk@0,0:a Can't open boot device ok |
この場合は、手順 5-3) で出力された現用ブート環境の他のブートデバイス名を指定して再度 boot コマンドを実行してください。
6-4) プロキシボリュームを停止します。
代替ブート環境のデータを不当な書込みから保護するために、プロキシボリュームを停止します。
# sdxvolume -F -c System -v Proot,Pusr,Phome,Pswap,Pvar,Popt |
参考
GDS 運用管理ビューを使用する場合は、メイン画面でプロキシボリュームを選択し、[操作]:[ボリューム停止] を実行します。
7) プロキシグループの再結合
システムディスクのバックアップを再度行う場合、システムディスクのグループ (マスタグループ) に、バックアップ用のディスクのグループ (プロキシグループ) を再結合することにより、システムディスクの内容をバックアップ用のディスクに再度コピーします。
注意
再結合では、高速等価性回復機構 (JRM) によりマスタおよびプロキシの更新ブロックのみがコピーされるため、コピーは短時間で完了します。ただし、プロキシを分離した後にシステムを再起動した場合は、JRM が無効となり、再結合の際にはボリューム全体がコピーされます。したがって、手順 4-3) や手順 6) でシステムを再起動した場合は、手順 7-1) の再結合では高速等価性回復コピーではなくボリューム全体のコピーが行われます。
参考
ETERNUS ディスクアレイの SAN ブート環境
OPC 機能を使用する場合は、プロキシグループの再結合は行わないでください。
7-1) プロキシグループを再結合します。
# sdxproxy Rejoin -c System -p Proxy1,Proxy2 |
参照
GDS 運用管理ビューを使用する場合は、「5.3.2.2 バックアップ (等価性方式) 」の「プロキシ再結合」を参照してください。
7-2) 等価性コピーの完了を確認します。
# sdxinfo -S -c System |
等価性コピー中は、コピー先プロキシグループのスライスの STATUS フィールドに COPY と表示されます。プロキシグループのスライスの STATUS がすべて STOP になっていれば、等価性コピーは完了しています。
参考
GDS 運用管理ビューのメイン画面では、プロキシボリュームを構成するスライスの表示は以下のようになります。
等価性コピー中は、copy 状態になり、青色のアイコンが表示される。
等価性コピーが完了すると、stop 状態になり、黒いアイコンが表示される。
7-3) 手順 4) ~ 6) に従って、プロキシグループの分離、代替ブート環境の設定、代替ブート環境の確認を行います。