PRIMECLUSTER Global Disk Services 説明書 4.1 (Solaris(TM) オペレーティングシステム版)
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第6章 バックアップとリストア> 6.2 代替ブート環境を使用したシステムディスクのバックアップとリストア

6.2.6 バックアップ手順

4) プロキシグループの分離

等価性コピーが完了すると、マスタグループとプロキシグループは等価性維持状態になります。等価性維持状態のマスタグループとプロキシグループを分離することにより、プロキシグループにマスタグループのスナップショットを採取します。

4-1) ファイルシステムの整合性を確保します。

スナップショットのファイルシステムの整合性を確保するには、ファイルシステムの更新を抑止する必要があります。しかし、/、/usr、/varなどのファイルシステムは、システムが動作するのに必要であるため、システム運用中にはマウント解除できません。以下の方法で、システムディスクへの書込みや、システムディスクに未反映の書込みが少ない状態にしてください。

  1. システムをシングルユーザモードで起動します。(省略可能)

  2. システムディスクに書込みを行っているアプリケーションプログラムを停止します。(省略可能)

  3. sync(1M)コマンドを実行することにより、メモリ上で更新されてディスクにまだ書き込まれていないファイルシステムのデータをディスクに書き込みます。


lockfs(1M)コマンドを使用して / ファイルシステムを書込みロックすると、システムがハングアップすることがあります。また、/var ファイルシステムを書込みロックすると、GDSおよびGDS Snapshotのコマンドがハングアップします。したがって、/ および /var は書込みロックしないでください。

a)、b)、c) をすべて実施しても、ファイルシステムの更新を完全には抑止できません。そのため、スナップショットのファイルシステムには、システムパニック発生後と同様な不整合が生じる場合があります。

a)、b)、c) をすべて実施した場合、スナップショットのファイルシステムは、シングルユーザモードでパニックが発生した後のファイルシステムと同様な状態になります。

a)、b) を省略してc)のみ実施した場合、スナップショットのファイルシステムは、システム運用中にパニックが発生した後のファイルシステムと同様な状態になります。

どちらの場合も、ファイルシステムに不整合が生じる場合があるため、手順5-2)で整合性のチェックと修復を行う必要があります。

4-2) プロキシグループを分離します。

# sdxproxy Part -c System -p Proxy1,Proxy2

4-3) 手順4-1)のa)でシングルユーザモードで起動した場合は、マルチユーザモードで再起動します。

4-4)手順4-1)のb)でアプリケーションプログラムを停止した場合は、アプリケーションプログラムを起動します。

 

5) 代替ブート環境の作成

システムディスクの故障やデータ破損に備えて、プロキシボリュームからブートできるように設定を行います。

5-1) プロキシボリュームのアクセスモード属性をrw(読書き用)に変更します。

プロキシグループに作成されたプロキシボリュームのアクセスモード属性がro(読取り専用)の場合は、rw(読書き用)に変更します。アクセスモード属性は、sdxinfo -V -e longコマンドの出力のMODEフィールドで確認できます。アクセスモード属性がすでにrw(読書き用)に設定されている場合は、下記のコマンドを実行する必要はありません。

# sdxvolume -F -c System -v Proot,Pusr,Phome,Pswap,Pvar,Popt
# sdxattr -V -c System -v Proot -a mode=rw
# sdxattr -V -c System -v Pusr -a mode=rw
# sdxattr -V -c System -v Phome -a mode=rw
# sdxattr -V -c System -v Pswap -a mode=rw
# sdxattr -V -c System -v Pvar -a mode=rw
# sdxattr -V -c System -v Popt -a mode=rw
# sdxvolume -N -c System -v Proot,Pusr,Phome,Pswap,Pvar,Popt

5-2) プロキシボリューム上のファイルシステムのチェックと修復を行います。

プロキシボリューム上のファイルシステムには不整合が生じている場合があるため、fsck(1M)コマンドを使ってチェックと修復を行います。

# fsck -y /dev/sfdsk/System/rdsk/Proot
# fsck -y /dev/sfdsk/System/rdsk/Pusr
# fsck -y /dev/sfdsk/System/rdsk/Phome
# fsck -y /dev/sfdsk/System/rdsk/Pvar
# fsck -y /dev/sfdsk/System/rdsk/Popt

5-3) 代替ブート環境の設定を行います。

# sdxproxy Root -c System -p Proxy1,Proxy2

代替ブート環境の設定が完了すると、以下のようなメッセージが出力されます。

SDX:sdxproxy: INFO: completed definitions of alternative boot environment:
current-boot-device=/pci@1f,4000/scsi@3/disk@0,0:a pci@1f,4000/scsi@3/disk@1,0:a
alternative-boot-device=/pci@1f,4000/scsi@3/disk@2,0:a /pci@1f,4000/scsi@3/disk@3,0:a

出力された現用ブート環境のブートデバイス名(current-boot-deviceの値)と代替ブート環境のブートデバイス名(alternative-boot-deviceの値)を控えておいてください。

5-4) プロキシボリュームを停止します。

代替ブート環境のデータを不当な書込みから保護するために、プロキシボリュームを停止します。

# sdxvolume -F -c System -v Proot,Pusr,Phome,Pswap,Pvar,Popt

 

6) 代替ブート環境の確認(省略可能)

代替ブート環境でブートできることを確認します。

6-1) 代替ブート環境からシステムをブートします。

OpenBoot環境でbootコマンドを実行します。bootコマンドでは、手順5-3)のメッセージで出力された代替ブート環境のブートデバイスのうち1つを指定します。

# shutdown -y -g0 -i0
ok boot /pci@1f,4000/scsi@3/disk@2,0:a

手順5-3)で出力された代替ブート環境のブートデバイス名の個数が代替ブート環境のブートデバイス数よりも多い場合、bootコマンドが以下のようなエラーになることがあります。

ok boot /pci@1f,4000/scsi@3/disk@2,0:a
Rebooting with command: boot /pci@1f,4000/scsi@3/disk@2,0:a
Boot device: /pci@1f,4000/scsi@3/disk@2,0:a File and args:
Evaluating: boot /pci@1f,4000/scsi@3/disk@2,0:a

Can't open boot device

ok

この場合は、手順5-3)で出力された代替ブート環境の他のブートデバイス名を指定して再度bootコマンドを実行してください。

6-2) 正常にブートできていることを確認します。

mount(1M)コマンドやsdxinfoコマンドを使って、代替ブート環境で正しくブートされていることと、GDSのオブジェクトの状態に異常がないことを確認してください。また、必要に応じて、代替ブート環境のファイルシステムの内容に問題がないこと、アプリケーションが正常に動作できることなどを確認してください。

6-3) 元のブート環境に戻します。

OpenBoot環境でbootコマンドを実行します。bootコマンドでは、手順5-3)のメッセージで出力された現用ブート環境のブートデバイスのうち1つを指定します。

# shutdown -y -g0 -i0
ok boot /pci@1f,4000/scsi@3/disk@0,0:a


手順5-3)で出力された現用ブート環境のブートデバイス名の個数が現用ブート環境のブートデバイス数よりも多い場合、bootコマンドが以下のようなエラーになることがあります。

ok boot /pci@1f,4000/scsi@3/disk@0,0:a
Rebooting with command: boot /pci@1f,4000/scsi@3/disk@0,0:a
Boot device: /pci@1f,4000/scsi@3/disk@0,0:a File and args:
Evaluating: boot /pci@1f,4000/scsi@3/disk@0,0:a

Can't open boot device

ok

この場合は、手順5-3)で出力された現用ブート環境の他のブートデバイス名を指定して再度bootコマンドを実行してください。

6-4) プロキシボリュームを停止します。

代替ブート環境のデータを不当な書込みから保護するために、プロキシボリュームを停止します。

# sdxvolume -F -c System -v Proot,Pusr,Phome,Pswap,Pvar,Popt

 

7) プロキシグループの再結合

システムディスクのバックアップを再度行う場合、システムディスクのグループ(マスタグループ)に、バックアップ用のディスクのグループ(プロキシグループ)を再結合することにより、システムディスクの内容をバックアップ用のディスクに再度コピーします。


再結合では、高速等価性回復機構(JRM)によりマスタおよびプロキシの更新ブロックのみがコピーされるため、コピーは短時間で完了します。ただし、プロキシを分離した後にシステムを再起動した場合は、JRMが無効となり、再結合の際にはボリューム全体がコピーされます。したがって、手順4-3)や手順6)でシステムを再起動した場合は、手順7-1)の再結合では高速等価性回復コピーではなくボリューム全体のコピーが行われます。

7-1) プロキシグループを再結合します。

# sdxproxy Rejoin -c System -p Proxy1,Proxy2

7-2) 等価性コピーの完了を確認します。

# sdxinfo -S -c System

OBJ    CLASS   GROUP   DISK    VOLUME  STATUS
------ ------- ------- ------- ------- --------
slice  System  Group1  Root1   root    ACTIVE
slice  System  Group1  Root2   root    ACTIVE
slice  System  Group1  Root1   usr     ACTIVE
slice  System  Group1  Root2   usr     ACTIVE
slice  System  Group1  Root1   home    ACTIVE
slice  System  Group1  Root2   home    ACTIVE
slice  System  Group2  Var1    swap    ACTIVE
slice  System  Group2  Var2    swap    ACTIVE
slice  System  Group2  Var1    var     ACTIVE
slice  System  Group2  Var2    var     ACTIVE
slice  System  Group2  Var1    opt     ACTIVE
slice  System  Group2  Var2    opt     ACTIVE
slice  System  Proxy1  Proot1  Proot   STOP
slice  System  Proxy1  Proot2  Proot   STOP
slice  System  Proxy1  Proot1  Pusr    STOP
slice  System  Proxy1  Proot2  Pusr    STOP
slice  System  Proxy1  Proot1  Phome   COPY
slice  System  Proxy1  Proot2  Phome   COPY
slice  System  Proxy2  Pvar1   Pswap   STOP
slice  System  Proxy2  Pvar2   Pswap   STOP
slice  System  Proxy2  Pvar1   Pvar    COPY
slice  System  Proxy2  Pvar2   Pvar    COPY
slice  System  Proxy2  Pvar1   Popt    COPY
slice  System  Proxy2  Pvar2   Popt    COPY

等価性コピー中は、コピー先プロキシグループのスライスのSTATUSフィールドにCOPYと表示されます。プロキシグループのスライスのSTATUSがすべてSTOPになっていれば、等価性コピーは完了しています。

7-3) 手順4)〜6)に従って、プロキシグループの分離、代替ブート環境の設定、代替ブート環境の確認を行います。

 


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