サーバが故障した場合や保守のために停止させる場合、事前に予備サーバを指定しておくことで、サーバを切り替えて起動する機能です。
また、サーバ異常検出時に自動的に予備サーバに切り替える自動リカバリも行えます。
予備サーバへの切替え方式には以下の4つがあります。
ただし、サーバの構成(ハードウェア環境やブート形式など)によって、利用できる方式は異なります。詳細は、「9.2 構成」を参照してください。
方式 | 概要 |
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ローカルブート環境のサーバで、事前にバックアップしたシステムイメージを予備サーバにリストアして起動する方式です | |
SANブート環境のサーバで、HBAに設定したWWNを予備サーバに引き継ぎ、ブートディスクを予備サーバに接続して起動する方式です。 | |
サーバがストレージ装置上にあるブートディスクから起動する環境の場合、事前にVIOMによるI/O仮想化によってサーバプロファイルに設定したWWN、MACアドレス、ブート設定およびネットワーク設定を予備サーバに引き継ぎ、ブートディスクを予備サーバに接続して起動する方式です。 | |
サーバがSPARC M10/Enterpriseの場合の方式です。ETERNUS SF Storage Cruiserのストレージ管理機能と連携し、ブートディスクの接続先を予備サーバに切り替えて起動する方式です。 |
参考
HBA address rename方式とVIOMサーバプロファイル切替え方式を合わせて、I/O仮想化方式とも表現します。
ローカルブート環境のサーバで、事前にバックアップしたシステムイメージを予備サーバにリストアして起動します。
以下の場合に選択されます。バックアップ・リストアについては、「操作ガイド VE」の「16.1 概要」を参照してください。
サーバに対してHBA address renameまたはVIOMのサーバプロファイルで、仮想WWNまたはブート設定が設定されていない場合
予備サーバ情報設定時に[内蔵ディスクブート+SANデータ(バックアップリストア方式)]チェックボックスにチェックを入れた場合
サーバに対してHBA address renameまたはVIOMでサーバプロファイルが設定されている場合、サーバ切替え時に、WWNやサーバプロファイルも切り替えられます。
サーバを切り替えた場合、OSやアプリケーションは最後にバックアップしたときの状態で、予備サーバで動作します。
システムイメージのバックアップ・リストアでは、管理対象サーバのBIOSで認識された1台目のローカルディスク(起動ディスク)の内容だけが、バックアップ・リストアの対象になります。
2台目以降のローカルディスク(データディスク)の内容はバックアップ・リストアすることができないため、サーバを切り替えた際に、自動的に予備サーバに引き継ぐことができません。
2台目以降のローカルディスクを利用する場合、ほかのバックアップソフトウェアを利用して、データのバックアップ・リストアを行う必要があります。
なお、1台目のディスクに複数の区画(Windowsのドライブ、Linuxのパーティション)を設定している場合、すべての区画がバックアップ・リストアの対象になります。
SANブート環境のサーバで、HBAに設定したWWNを予備サーバに引き継ぎ、ブートディスクを予備サーバに接続して起動します。サーバに対してHBA address renameが設定されている場合に選択されます。
停止した管理対象サーバが使用していた起動ディスクをそのまま使用して予備サーバを起動するため、利用者はハードウェアが交換されたことを意識しなくても、運用を継続できます。
サーバがストレージ装置上にあるブートディスクから起動する環境の場合、事前にVIOMによるI/O仮想化によってサーバプロファイルに設定したWWN、MACアドレス、ブート設定およびネットワーク設定を予備サーバに引き継ぎ、ブートディスクを予備サーバに接続して起動します。サーバに対してVIOMのサーバプロファイルで仮想WWNが設定されている場合に選択されます。
停止した管理対象サーバが使用していた起動ディスクをそのまま使用して予備サーバを起動するため、利用者はハードウェアが交換されたことを意識しなくても、運用を継続できます。
SANブート環境のサーバで、ストレージ管理ソフトウェアと連携して、以下の設定を変更することで、ブートディスクの接続先を予備サーバに切り替えて起動します。HBAのWWNが固定値の環境の場合、ストレージ構成の設定を変更することで、運用を継続できます。
サーバに接続されたファイバーチャネルスイッチのゾーニング設定
ストレージ装置のCAのホストアフィニティ設定
PRIMERGY BXシリーズのサーバでは、バックアップ・リストア方式、HBA address rename方式、VIOMサーバプロファイル切替え方式の場合、サーバ切替え時にネットワークの設定(LANスイッチの内部ポートのVLAN IDまたはポートグループ)を予備サーバに引き継げます。
VIOMサーバプロファイル切替え方式や、バックアップ・リストア方式の場合、サーバに対してVIOMのサーバプロファイルで仮想MACアドレス、ブート設定およびネットワーク設定が設定されているときは、これらの設定も予備サーバに引き継ぎます。これにより、MACアドレスを意識するソフトウェアやネットワーク機器の設定変更は必要ありません。
用語 | 説明 |
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切替え | 設定したサーバ切替え方式に従い、動作中の運用サーバを停止し、予備サーバに切り替える処理。 |
切戻し | 切替え実行後、運用サーバを復旧させた場合などに、運用中の予備サーバを停止させて元の運用サーバに切り替える処理。 |
継続 | 切替え実行後、切戻しを行わず、運用中の予備サーバをそのまま運用サーバとして変更する処理。 |
注意
管理LAN上でServerView Deployment Managerを使用する場合、バックアップ・リストア方式とHBA address rename方式は無効です。詳細は、「B.2 ServerView Deployment Managerとの共存」を参照してください。
自動リカバリによるサーバ切替えは、ハードウェア故障を検出した場合に動作します。ソフトウェアの異常によるOS停止や、OSの自動再起動では動作しません。
詳細は、「9.4 自動リカバリの発生条件」を参照してください。
また、自動リカバリは、ハードウェア故障を契機に動作するため、OSの異常を調査するメモリダンプを採取することよりも、サーバを強制停止して高速に切り替えることを優先します。
そのため、サーバ切替えでは、OS異常時のメモリダンプ採取が設定されていても、メモリダンプは採取されません。
予備サーバへの切替え方式は、以下のどれか1つを利用できます。
バックアップ・リストア方式
HBA address rename方式
VIOMサーバプロファイル切替え方式
ストレージアフィニティ切替え方式
HBA address renameによる切替えを利用する場合、HBA address renameの設定が完了したことを確認してから、サーバ切替えの設定を行ってください。
Hyper-VのVMホストについてサーバ切替えを利用する場合、物理NICを2つ以上用意してください。
VMホストの管理LAN用などの、VMホストが外部のサーバと通信するためのネットワークは、物理サーバ専用にし、仮想ネットワークを構成しないでください。
また、外部仮想ネットワーク環境を構成したネットワーク上では、VMホスト用の仮想ネットワークをすべて無効にしてください。詳細は、「設計ガイド VE」の「9.2.1 利用する製品別の設定」を参照してください。
VMゲストに対しては、個別に予備サーバを設定できません。VMゲストをSANまたはNAS上の共有ディスクに配置したうえで、VMホストに対して予備サーバを設定するか、サーバ仮想化ソフトウェアの高可用性機能を利用してください。
サーバ仮想化ソフトウェアごとの高可用性機能については、「設計ガイド VE」の「9.2.2 利用する製品別の機能」を参照してください。
なお、本製品による切替えとサーバ仮想化ソフトウェアの高可用性機能は併用できます。
ただし、サーバ仮想化ソフトウェアの高可用性機能利用時は、構成するVMホストに本製品による予備サーバを含まないでください。
【VMware】
サーバ仮想化ソフトウェアの高可用性機能(VMware HA)利用時に、本製品のサーバ切替えまたは切戻しを行った場合、高可用性機能の再構成を行ってください。
運用サーバと予備サーバが別のシャーシに存在し、それぞれのサーバに接続されたLANスイッチブレードがIBPモードの場合にサーバ切替えを行うには、以下のすべての条件を満たしている必要があります。
LANスイッチブレードがPRIMERGY BX900/BX400シリーズである
両方のLANスイッチブレードに同じ名前のポートグループが設定されている
Intel PROSetでLANを冗長化している場合、Intel PROSetがMACアドレスを内部で保持しているため、サーバ切替え後、切替え元のMACアドレスが引き継がれます。このため、切替え元サーバ動作時にMACアドレスが競合し通信に影響を与えることがあります。サーバ切替え後、Intel PROSetの再設定を行ってください。
ブレードサーバ以外の場合、運用サーバと異なるサブネットに属する管理対象サーバは予備サーバに設定できません。
管理LANのNICの設定が運用サーバと異なる管理対象サーバは、予備サーバに設定できません。
HBA address rename設定サービスに使用するNICの設定が運用サーバと予備サーバで異なっても、サーバ切替えは行えます。ただし、ネットワークの構成によっては、サーバ切替え後にHBA address rename設定サービスが動作しない場合があります。このため、HBA address rename設定サービスに使用するNICの設定は、運用サーバと予備サーバで同じにしてください。
管理対象サーバがLinuxで、by-id名を使用してディスクを認識している場合、バックアップ・リストア方式のサーバ切替えはできません。
内蔵ディスクブート+SANデータ構成のサーバにおいてバックアップ・リストア方式のサーバ切替えを行う場合、運用サーバ・予備サーバ双方へイメージ操作対象ディスクを設定してください。
イメージ操作対象ディスクを設定せずに切替えが行われた場合、意図しないディスクに対してデータが上書きされる可能性があります。
詳細は、「操作ガイド VE」の「9.1.13 イメージ操作対象ディスクの変更」を参照してください。
物理OSが動作しているサーバと、VMホストとVMゲストが動作しているサーバがある環境で、両方がHBA address renameまたはVIOMを利用してSANブート構成にしている場合、以下の設定を組み合わせることで、物理OSとVMゲストで予備サーバを共有できます。
詳細は、「9.2 構成」の「図9.3 物理OSとVMゲスト(サーバ仮想化ソフトウェアの高可用性機能)で予備サーバを共有する構成」を参照してください。
VMゲストに対するサーバ仮想化ソフトウェアの高可用性機能(VMware HAなど)の予備サーバとして、VMホストを指定する。
物理OSのサーバ切替えの設定で、予備サーバとしてa.で指定したVMホストが動作している物理サーバを指定する。
この設定を行うことで、物理OSの動作しているサーバが故障した場合、予備サーバ上のVMホストが停止されたあとに切り替わります。VMゲストが動作している物理サーバが故障した場合、サーバ仮想化ソフトウェアの高可用性機能により、VMゲストが予備サーバに切り替わります。どちらか一方の切替えを行った状態では、もう一方の切替えは行えません。
参考
バックアップ・リストアによるサーバの切替え時間は、約3分 + システムイメージのリストアにかかる時間です。システムイメージのリストアにかかる時間は、ディスク容量やネットワークの状態などに応じて異なりますが、目安として、ディスク容量が73GBの場合でおよそ30~40分(システムイメージの転送に10~20分、システム再起動(複数回)と設定変更などの処理に20分)かかります。
HBA address renameによるサーバの切替え時間は、約5分 + サーバの起動時間です。サーバの起動時間は、OSの起動時間と、OS起動時に自動起動するサービスの起動時間に応じて異なります。また、予備サーバでサーバOSが動作している場合、予備サーバの停止時間も加算されます。