QoS自動化機能は、QoS自動化優先度が設定されると、ストレージ装置が搭載しているディスクの最高性能を基準として、現在のI/O性能と設定されたQoS自動化優先度から算出したレスポンスタイムの目標値(ミリ秒)を性能調整の目標値とします。また、目標レスポンスタイムが設定されると、設定された値(ミリ秒)を性能調整の目標値とします。
QoS自動化機能の自動チューニングは、目標を設定したボリュームの性能が目標に達するように帯域幅を調整します。目標を設定したボリュームの帯域幅を調整するために、目標を設定していないボリュームの帯域幅も調整します。
帯域幅の調整は、リード+ライトのボリュームの実測レスポンスタイムを基に行います。ただし、調整はストレージ装置の性能の範囲内で行います。したがって、自動チューニングは、設定した目標値を必ず保証するものではありません。
自動チューニングの仕組み
ETERNUS ディスクストレージシステムのQoS機能は、帯域制限幅を60IOPS、5MB/sから無制限までの16段階で設定します。QoS自動化機能は、この機能を利用して帯域幅を変更することにより、I/O性能を調整します。
対象ボリュームに目標値を初めて設定した直後は、初期値から段階的に調整するため、すぐに効果が現れないことがあります。
QoS自動化優先度および目標レスポンスタイムの設定による自動チューニングは、評価間隔(1分)ごとに性能情報を採取し、以下の判定・調整を繰り返します。
Busy率が最大の共有リソース(CM、Port、スイッチPort、Tierプール)を見つけます。
Busy率が最大のリソースを共有するボリューム間で帯域幅を調整します。
実測性能が目標性能を上回るボリュームの帯域幅を1段階狭めます。
実測性能が目標性能を下回り、かつETERNUS ディスクストレージシステムのQoSの設定で帯域を狭められているボリュームの帯域幅を1段階広げます。
上記の結果により生じる帯域幅の不足分は、目標性能を設定していないボリュームの帯域幅を狭めることで調整します。
ポイント
Busy率が低いときは、自動チューニングが行われません。詳細は、「システムが低負荷状態のときの考慮」を参照してください。
QoS自動化優先度の設定による自動チューニングでは、以下の例のように調整されます。
3つのボリューム(Vol#1~Vol#3)を使用する業務をそれぞれ高優先、中優先、低優先とする場合、それぞれのボリュームにQoS自動化優先度を設定してください。
ここでは、Vol#1に"High"、Vol#2に"Middle"、Vol#3に"Low"を設定したものとします。
QoS自動化機能が、Vol#1の実測性能を基に、Vol#2およびVol#3の目標レスポンスタイムを内部的に算出します。
QoS自動化機能が、Vol#2およびVol#3に対して、算出した目標レスポンスタイムと実測性能を比較します。その結果、実測性能が目標性能を上回っていれば帯域幅を1段階狭めます。実測性能が目標性能を下回り、かつETERNUS ディスクストレージシステムのQoSの設定で帯域を狭められているときは、帯域幅を1段階広げます。
上記の処理により、3つのボリュームは、設定されているQoS自動化優先度に従った帯域幅に調整されます。
図5.1 QoS自動化優先度を設定したときの帯域幅調整例
目標レスポンスタイムの設定による自動チューニングでは、以下の例のように調整されます。
Webコンソールの性能グラフ画面で、業務アプリケーションのI/O性能を確認します。
使用するVol#1のレスポンスタイムの実測値が50ミリ秒であることからI/O性能が低いと判断した場合、レスポンスタイムが50ミリ秒より短くなるように、目標レスポンスタイムを設定(例えば、30ミリ秒)してください。
このとき、ほかのボリューム(Vol#2、Vol#3)には目標レスポンスタイムを設定不要です。
目標レスポンスタイムが設定されたことで、QoS自動化機能は、Vol#1の帯域幅を広げ、Vol#2およびVol#3の帯域幅を狭めて、レスポンスタイムが目標値に近づくように調整します。
上記の処理により、Vol#1は、設定されている目標レスポンスタイムに従った帯域幅に調整されます。
図5.2 目標レスポンスタイムを設定したときの帯域幅調整例
ストレージ自動階層制御との連携
ストレージ自動階層制御と連携するように設定されている場合は、QoS自動化機能だけで性能目標を達成できなかったときに、ストレージ自動階層制御を利用して容量割当て比率に応じたデータ再配置を行います。これにより、性能目標の達成を図ります。
注意
QoS自動化機能は、性能調整対象のFTVが属するストレージの性能情報と、スイッチの性能情報を参照します。
スイッチに対する性能管理機能が無効となっている場合でもQoS自動化機能を利用できますが、その場合、CMとTierプールに関する共有リソースだけが性能調整の対象となります。
システムが低負荷状態のときの考慮
一般的に、システムの負荷状態は、時間帯によって異なります。
システムが低負荷の状態では、業務アプリケーションのI/O性能はほかの業務アプリケーションの動作による影響を受けず、実測レスポンスタイムが目標レスポンスタイムよりも短くなる場合があります。この場合、自動チューニングにより帯域幅を狭める調整を行うと、ストレージへのI/Oアクセスが急増してシステムが高負荷状態になったときに、レスポンスタイムが極端に長くなる可能性があります。QoS自動化機能は、このようなI/O性能の低下を防ぐため、以下のすべての条件を満たすときだけ、帯域幅を狭めます。
目標レスポンスタイムが設定されているボリュームにおいて、実測レスポンスタイムが目標レスポンスタイムより短い
Busy率が高い共有リソース配下の、目標レスポンスタイムが設定されているほかのボリュームにおいて、実測レスポンスタイムが目標レスポンスタイムより長いボリュームが存在する
したがって、以下の場合は、自動チューニングを行いません。
共有リソース配下のすべてのボリュームにおいて、実測レスポンスタイムが目標レスポンスタイムより短い場合
ボリュームに対して、業務アプリケーションからの負荷がない場合
また、業務負荷がなく帯域に余裕がある場合は、帯域が不足しているほかのボリュームに、余っている帯域を一時的に融通して、帯域不足を解消します。これにより、ほかのボリュームの帯域に余裕があるときは、目標レスポンスタイム以上のI/O性能を得られることがあります。