ストレージ自動階層制御は、ディスクドライブをプール管理し、ストレージ装置内のデータをアクセス状況に応じてボリューム容量より小さいブロック単位で適切なディスクに自動再配置することで、性能とコストを最適化するストレージ装置の機能です。
管理するプールを、“Tierプール”または“FTRP(Flexible Tier Pool)”と呼びます。
Tierプールに割り当てられる仮想論理ボリュームを“FTV(Flexible Tier Volume)”と呼びます。
Tierプールは、アクセス性能に差を設けたサブプールから構成します。サブプールは、“FTSP(Flexible Tier Sub Pool)”と呼ぶことがあります。
サブプールは“FTRPE(Flexible Tier Pool Element)”と呼ぶ割当て単位で構成し、ストレージ自動階層制御を行うためのアクセス状況の評価はFTRPEごとに行います。
ポイント
ストレージ自動階層制御が管理できるTierプールの、個数および総容量には、上限があります。詳細は、『ETERNUS SF 導入ガイド』の「ストレージ自動階層制御の上限」を参照してください。
ストレージ自動階層制御のアクセス状況データを同一時間帯に評価できるTierプールの使用容量の合計値には上限があります。この上限値は、2PBに初期設定されていますが、カスタマイズ可能です。カスタマイズ方法は、『ETERNUS SF 導入ガイド』の「ストレージ自動階層制御設定ファイルのカスタマイズ」を参照してください。
FTV、Tierプール、サブプール、FTRPEの関係は以下のとおりです。
図1.1 FTV/Tierプール/サブプール/FTRPEの関係図
ストレージ自動階層制御におけるボリューム内のデータ再配置には、以下の方式があります。
No | データ再配置の方式 | 階層化ポリシーの IOPSの指定 | FTV 容量割当て比率の指定 | 動作 | 特長 |
---|---|---|---|---|---|
1 | ストレージ自動階層制御を簡単に利用する場合の方式 | なし(省略値) | 容量割当て比率の指定なし | IOPSが多い順に、上位のサブプールから詰めて再配置 | 設計が容易。上位のサブプールを最大限利用可能。 |
2 | なし(省略値) | 容量割当て比率の指定あり | IOPSが多い順に、サブプールごとに指定した容量割当て比率に従って再配置 | 設計が容易。容量割当て比率の高いサブプールを最大限利用可能。1つのTierプール内でボリュームごとに性能を設定可能。 | |
3 | ストレージ自動階層制御を詳細に制御する場合の方式 | IOPS指定 | 容量割当て比率の指定なし | 階層間のIOPSの閾値の範囲に従って再配置 | 運用に沿ったIOPSによる再配置が可能。IOPSの設計が必要。 |
アクセス状況に応じた再配置は、以下の流れで行われます。
Tierプール(自動階層化プール)に対するストレージ自動階層制御が開始されると、一定時間ごとにFTRPEごとのアクセス状況を収集します。
収集は、評価時間になるまで、評価期間ごとに、FTRPEごとの評価基準(ピーク値または平均値)の値を蓄積することで行います。
評価時間に、蓄積されたデータを使って評価を実施します。
FTRPEごとの値とサブプールに設定した範囲を比較して、移動の有無、移動する場合の移動先サブプールを決定して、再配置を実行します。
評価と評価結果による再配置は、実行モードに従って、自動的にまたは手動で行います。
図1.2 再配置の実行例
本製品では、“階層化ポリシー”として、評価時間、評価期間、評価基準、および実行モードを指定できます。
階層化ポリシーの設計は「2.1 階層化ポリシー」を、階層化ポリシーの項目は「3.4.1 階層化ポリシーの作成」を参照してください。
本製品は、階層化ポリシーを基に、サーバからのアクセス状況データを収集・評価して、適切なサブプールにボリュームの構成単位(FTRPE)を自動的に再配置することで、ストレージ資源の最適な利用を実現します。
評価・再配置を自動的に行う実行モードを指定した場合は、それらが自動的に行われます。業務運用中もデータ配置を動的に変更することで、業務運用中の性能状況変化に対応できます。このため、事前の性能見積りや配置設計が不要となり、業務管理者やストレージ管理者の作業負荷を軽減できます。
手動で行う実行モードを指定した場合は、アクセス状況を確認して、評価・再配置を実行してください。ストレージ自動階層制御の運用を開始する前に、評価と再配置を試行して、評価時間、評価期間、評価基準、実行モード、およびサブプールの範囲の値を決定することをお勧めします。
ETERNUS SF Webコンソール(以降、“Webコンソール”と略します)から、ストレージ自動階層制御のすべての操作を実施できます。
図1.3 システム構成
ポイント
ストレージ自動階層制御の操作は、同一の運用管理サーバで行ってください。
複数の運用管理サーバで操作した場合、正しく動作しないときがあります。
ストレージ自動階層制御を利用するまでの手順概要は、以下のとおりです。
利用環境のセットアップ
ストレージ装置のストレージ自動階層制御を有効化
階層化ポリシー、Tierプール、仮想論理ボリューム(FTV)を作成
ストレージ自動階層制御を開始
利用対象のTierプールに対して、ストレージ自動階層制御の開始を指示
(この操作により、設定した期間内のアクセス状況データが自動的に収集されます)
収集したアクセス状況データを評価して、階層化ポリシーに従ってデータを再配置
(評価・再配置を自動的に行う実行モードでは、システムが自動で実施します)