本方式では、複数のNICをそれぞれ異なるネットワークに接続し、これらのNICをすべて活性化して同時に使用します。送信パケットは、通信するTCPコネクション単位に伝送路へ振り分けられます。
通信のコネクション単位で使用する伝送路が異なる為、1つの伝送路に異常があった場合には、他の伝送路を使用して通信を継続させる事により、伝送路の信頼性を向上する機能を提供します。
また、高速切替方式と同様に、仮想インタフェースを生成し、仮想ネットワークを割り当てます。TCP/IPアプリケーションは、この仮想インタフェースに設定された仮想IPアドレスを自システムのIPアドレスとして使用することにより、物理的なネットワークの冗長構成を意識することなく相手システムと通信を行うことが可能となります。
図2.16 GS連携方式による二重化運用例
図2.17 GS連携方式(リモートネットワーク通信)による二重化運用例
GS連携方式を使用した接続形態は、通信するシステムを同一ネットワーク上に接続します。また、通信するシステムが別ネットワーク上でも接続することができます。
通信を行うTCPコネクション単位で使用する伝送路を使い分けます。伝送路異常が発生した場合には、他の正常な経路で処理を継続させる事ができます。
GS、PRIMEQUEST、またはPRIMERGYが混在したマルチサーバ環境下での通信や、レガシー系システムのネットワークインフラをIP化により再構築する場合等に適しています。
GS連携方式のシステム構成を、図2.18 GS連携方式のシステム構成、図2.19 GS連携方式のシステム構成(リモート接続)に示します。
図2.18 GS連携方式のシステム構成
図2.19 GS連携方式のシステム構成(リモート接続)
各構成要素とその意味は以下のとおりです。
二重化したNICの物理インタフェース(eth0,eth1等)を表します。
物理インタフェースに付与するIPアドレスを表します。このIPアドレスは、常に活性化された状態となっています。クラスタ運用管理ビュー等によりノードの管理を行う場合に本IPアドレスを使用します。指定可能なアドレス形式はIPv4アドレスです。IPv6アドレスは指定できません。なお、各物理インタフェースに付与するIPアドレスは、それぞれ異なるネットワークアドレスとなります。
二重化したNICを1つに見せるための仮想インタフェース(sha0等)を表します。
相手装置と通信するため、仮想インタフェースに割り当てる自側のIPアドレスを表します。このIPアドレスは運用ノード上で活性化され、クラスタシステムの場合には、クラスタ切替え発生時に待機ノードへ引き継がれます。指定可能なアドレス形式はIPv4アドレスです。IPv6アドレスは指定できません。
GS連携方式で使用する仮想ゲートウェイを表します。指定可能なアドレス形式はIPv4アドレスです。IPv6アドレスは指定できません。
ルータ(LANC2を含む)を経由してGSと接続するクラスタ環境で、GLSの引継ぎ仮想IPアドレスに対してゲートウェイとなる物理IPアドレスを表します。クラスタ構成の場合、本IPアドレスは、仮想IPアドレス(引継ぎ仮想IPアドレス)と共にノード間で引き継がれます。これにより、仮想IPアドレスが引き継がれた場合でも、ルータに対して、GLSの仮想IPアドレスに対する経路を静的に指定することが可能になります。クラスタ構成の場合、GLSの仮想IPアドレスに対して物理GWIPがゲートウェイになるようにルータに静的経路を設定します。シングル構成の場合は、物理GWIPではなく、物理IPアドレスをゲートウェイとして設定します。このため、シングル構成では物理GWIPを設定する必要はありません。指定可能なアドレス形式はIPv4アドレスです。IPv6アドレスは指定できません。
通信相手装置のLANアダプタを表します。
相手装置のNICに設定されたIPアドレスを表します。本IPアドレスを監視します。指定可能なアドレス形式はIPv4アドレスです。IPv6アドレスは指定できません。
通信する相手装置の仮想IPアドレスを表します。指定可能なアドレス形式はIPv4アドレスです。IPv6アドレスは指定できません。
相手システムのLANアダプタに対して定期的にpingを実行し、通信状態を監視します。一定時間内に応答がない場合、その伝送路は異常であると判断します。また、相手システム側から伝送路の異常通知(専用パケットによる通知)を受信した場合も、その伝送路は異常であると判断します(“2.6.1 通信相手ホスト監視機能”を参照)。
図2.20 GS連携方式における監視方法
伝送路の切替え時間は[監視間隔(秒)×監視回数]で表されます。監視間隔は1~300秒、監視回数は1~300回の範囲で設定が可能で、デフォルト値はそれぞれ5秒、5回です。
以下の障害を検出する事ができます。
図2.21 GS連携方式での検出可能障害
(a)~(c)は同一の障害として見えるため、これらのうちのいずれであるかを特定することはできません。障害箇所を特定するには、それぞれの機器の調査が更に必要となります。
仮想インタフェースの活性化時に自動的に監視を開始します。また、仮想インタフェース非活性化時に自動的に監視を停止します。クラスタ構成の場合は、Glsリソースが1つでもOnline、またはStandbyになった時点で自動的に監視を開始します。また、すべてのGlsリソースがOfflineになった時点で自動的に監視を停止します。
障害を検出した伝送路を自動的に回避し、正常な伝送路のみを使用して通信を継続します。
障害が発生した物理インタフェースの経路が復旧した場合には、その物理インタフェースの伝送路は自動的に通信に利用されるようになります。なお、手動で切戻しを行う事はできません。
以下のようなシステムとの通信が可能です。
グローバルサーバ(GS)
PRIMEQUEST
PRIMERGY
本方式にて動作可能なユーザアプリケーションの条件は以下のとおりです。
TCP、UDPを利用したTCP/IPアプリケーションである必要があります。
使用する物理インタフェースには、必ずIPv4アドレスを設定してください。
GS連携方式を使用時は、システムをルータとしてではなく、マルチホームホストとして設定する必要があります。ルータ機能およびIPフォワーディング機能を無効化してください。
本方式は、LinuxサーバとSolarisサーバ間の通信には利用できません。
GSがホットスタンバイ構成の場合、GSからTNOTIFYコマンドによるダウン通知を受信したノードを通信相手先として認識します。
GSがホットスタンバイ構成の場合、GSでは仮想IPアドレス所在通知をサポートしている必要があります。
ルータを経由してGLSとGS間を接続する場合、GS連携方式を導入しているサーバに対して、RIPv1でGSの仮想IPの経路を送信するように設定してください。