本方式では、同一ネットワーク上に接続した複数の物理NIC(LANカード)を接続し、排他使用して伝送路の切替えを制御します。また、複数のNICを論理的に1本に見せるための仮想的なインタフェースを生成します。TCP/IPアプリケーションは、この仮想インタフェースに設定されたIPアドレス(以下、仮想IPアドレスと呼びます)を自システムのIPアドレスとして使用することにより、物理的なネットワークの冗長構成を意識することなく、相手システムと通信を行うことが可能となります。
図2.12 仮想NIC方式による二重化運用例
二重化したNICを同一ネットワーク上に接続します。通信先の相手システムは、同一ネットワーク上、またはルータを経由した別ネットワーク上のどちらに接続しても構いません。
マルチベンダ環境下で、それぞれのネットワーク機器(HUB、ルータ等)が二重化機能を持っている場合、これらと組み合わせて全体の信頼性を向上させる効果があります。この場合、二重化の分担範囲もベンダごとに明確化されます。
他社UNIXサーバ、PCサーバ等が混在したマルチベンダ環境下での通信に適しています。
仮想NIC方式のシステム構成を、図2.13 仮想NIC方式のシステム構成に示します。
図2.13 仮想NIC方式のシステム構成
各構成要素とその意味は以下のとおりです。
二重化したNICのうち、最初に活性化して使用する物理インタフェースを表します。IPアドレスは設定されません。
プライマリ物理インタフェースで伝送路異常を検出した場合の切替え先の物理インタフェースを表します。IPアドレスは設定されません。
相手装置と通信するための自側のIPアドレスを表します。指定可能なアドレス形式として、IPv4アドレス、およびIPv6アドレスの双方の使用が可能です。仮想インタフェースに設定されます。
プライマリ物理インタフェース使用時の監視先装置(HUB)のIPアドレスを表します。指定可能なアドレス形式として、IPv4アドレス、およびIPv6アドレスの双方の使用が可能です。
セカンダリ物理インタフェース使用時の監視先装置(HUB)のIPアドレスを表します。指定可能なアドレス形式として、IPv4アドレス、およびIPv6アドレスの双方の使用が可能です。
ポイント
MACアドレスは、標準でプライマリ物理インタフェースのMACアドレスを使用します。仮想インタフェース活性化中は、プライマリ物理インタフェース、セカンダリ物理インタフェース、および仮想インタフェースのMACアドレスは、同じ値になります。なお仮想インタフェースに対し、任意のMACアドレスを設定することも可能です。詳細は“3.3.3 仮想NIC方式”を参照してください。
仮想NIC方式では、LANカードのリンク状態とネットワークの通信状態の双方を監視します。
リンク状態監視機能
二重化しているすべてのLANカードに対して、イーサネットのリンク状態を監視します。運用側のLANカードでリンクダウンが発生した場合は、待機側のLANカードへ切替えを行います。
ネットワーク監視機能
仮想インタフェースが接続されているネットワークの状態を以下の2種類の方法で監視します。
種別 | 監視方法 |
---|---|
HUB監視 | 運用NICからスイッチ/HUBに対して、定期的にpingを送信しスイッチ/HUBが正常に稼動していることを確認します。 |
待機パトロール | 待機NICから運用NICに対して定期的に監視フレーム(専用のイーサフレーム)を送信します。これにより、運用NICと待機NICの異常だけでなく、NIC間の通信経路上のネットワーク機器に異常が発生していないことを確認します。 |
リンクダウンを伴わないネットワーク機器の障害が発生し、双方の監視で異常を検出した場合は、待機NICへの切替えを行います。また、ネットワークの復旧を検出した場合は、自動的に切り戻しを行うこともできます。
図2.14 仮想NIC方式における監視方法
異常となった現用NICを非活性状態にし、待機NICを活性状態にして新現用として動作させます。この時、MACアドレスとIPアドレスが引き継がれ、送信元として自ノードのMACアドレスが設定されたブロードキャストパケットが送信されます。これにより、HUBに経路の切替えを通知します。
また、異常検出時はシステムログに異常を知らせるメッセージを出力します。
図2.15 仮想NIC方式における異常発生時の切替え動作概要
監視異常によるNIC切替え発生後、該当のNICが復旧した場合には、hanetnic changeコマンドにより、手動で切戻しを行う必要があります。本コマンドにより、復旧したNICが現用NICとなり、元の運用状態に戻ります。 また、待機パトロール機能を設定することにより、hanetnic changeコマンドを使用せずに、自動的に切戻しを行うことができます。
任意のシステムとの通信が可能です。
本方式にて動作可能なユーザアプリケーションの条件は以下のとおりです。
TCP、UDPを利用したTCP/IPアプリケーションである必要があります。