ここでは、被災した際のDisaster Recovery機能による切替え運用について説明します。
被災した運用サイトが復旧して、バックアップサイトから切り替える場合も、同じ運用手順で切り替えます。
被災時の切替え運用は、以下の2つの運用に大別されます。
すべてのリソースを一括して切り替える運用
すべてのリソースを一括して切り替える運用です。
詳細は、「被災時の切替え運用手順の詳細」を参照してください。
図18.1 すべてのリソースを一括して切り替える運用
テナント単位にリソースを切り替える運用
グローバルリソースを復旧したあと、各テナントの復旧を行います。
グローバルリソースの復旧
図18.2 グローバルリソースの復旧
各テナントリソースの復旧
図18.3 各テナントリソースの復旧
詳細は、「被災時の切替え運用手順の詳細」を参照してください。
被災時の切替え運用手順の詳細
以下に手順の詳細を説明します。
バックアップサイトの業務停止
バックアップサイトで実施していた業務を停止し、運用サイトからの切替えに備えます。
ストレージの切離し
ストレージのレプリケーション機能を停止し、バックアップサイトを運用サイトから切り離します。
切替え情報が入ったボリュームのマウント
バックアップサイトのマネージャーに対して、「18.1 導入」の「2.Disaster Recovery機能を使用するための設定
」において、運用サイトからレプリケーションしていたボリュームをマウントしてください。
物理L-Serverのイメージコピー
物理L-Serverのイメージは、バックアップサイトにレプリケーションしています。しかし、本製品のイメージ格納フォルダーにはバックアップサイトで使用している物理L-Serverが格納されています。以下の操作で、運用サイトで使用していた物理L-Serverのイメージに切り替えてください。
イメージ格納フォルダーに格納されているバックアップサイトのイメージを退避します。
イメージ格納フォルダーについては、rcxadm imagemgrコマンドのinfoオプションで確認いただけます。
rcxadm imagemgrコマンドについては、「リファレンスガイド (コマンド/XML編) CE」の「5.9 rcxadm imagemgr」を参照してください。
イメージ格納フォルダーをクリアします。
運用サイトで使用されていたイメージをイメージ格納フォルダーにコピーします。
運用サイトで使用されていたイメージは、上記「3. 切換え情報が入ったボリュームのマウント」でマウントされたボリューム内のImageフォルダーに格納されています。
マネージャーを再起動します。
ファイアーウォールのコンフィグコピー
ネットワーク機器の自動設定機能を使用してファイアーウォールの自動設定をしている場合、運用サイトの最新のコンフィグをバックアップサイトのファイアーウォールにコピーしてください。
運用サイトのカスタマイズ設定の復元
運用サイトにおいて、以下のフォルダー配下のファイルを編集していた場合には、「18.2 通常運用」の「2.運用サイトの各種設定のバックアップ」で採取したバックアップ情報の内容を確認し、必要に応じてマネージャーを手動で再設定してください。
【Windowsマネージャー】
インストールフォルダー\SVROR\Manager\etc\customize_data配下の以下のファイル
l_server.rcxprop
logctl_env.rcxprop
storage_rcxprop
vnetwork_vmware.rcxprop
vnetwork_hyperv.rcxprop
vnetwork_excluded_vmware.rcxprop
rcx_base.rcxprof
server_spec.rcxprop
library_share_deny.conf
image_admin_hyperv.rcxprop
library_share_ユーザグループ名_deny.conf
kb978336_scvmm.rcxprop
image_admin_hyperv_ユーザーグループ名.rcxprop
server_control.rcxprop
vm.rcxprop
vm_console.rcxprop
scvmm_mac_pool.rcxprop
scvmm_mac_pool_テナント名.rcxprop
vm_VMware.rcxprop
vm_Hyper-V.rcxprop
create_image_previous_folder_name_scvmm.rcxprop
auto_replace.rcxprop
Physical.rcxprop
spare_server_config.rcxprop
インストールフォルダー\SVROR\Manager\etc\trapop.bat
インストールフォルダー\SVROR\Manager\etc\event_handler配下の全ファイル
インストールフォルダー\SVROR\Manager\etc\scripts配下の全ファイル
インストールフォルダー\SVROR\Manager\etc\vm配下の以下のファイル
vds_vc
運用サイトの設定変更の反映
運用サイトで「導入ガイドCE」の「第19章 環境のカスタマイズ」にしたがって実施した以下のカスタマイズ設定をバックアップサイトに反映してください。
「19.1 メールの設定」
「19.2.3 申請プロセスの設定の変更方法」
「19.2.4 使用する申請プロセスの変更方法」
「19.3 ダッシュボードのカスタマイズ」
「19.4 仮想サーバのホスト名設定」
「19.5 リソース名の設定方式の設定」
「19.6 オーバーコミット機能の設定」
「19.7 L-Platform APIの環境設定の変更」
「19.9 物理L-Serverのシステムディスク設定」
「19.12 許諾の編集」
「19.13 利用者登録時の規約の編集」
Disaster Recovery環境の構築以降、運用サイトで「第8章 設定変更」にしたがって設定変更を行っていた場合、以下の設定変更をバックアップサイトに反映してください。
一括インポート
Disaster Recoveryの切替え情報を使用して、以下の切替え操作を一括して行います。
ストレージのマッピング
運用サイトとバックアップサイトのストレージの対応関係を定義したファイルにしたがって、ストレージリソースのマッピングを行います。
インポート資源の分離
処理d.のインポートをコマンド内で段階的に実施するため、以下の単位でインポートリソースを分割します。
グローバルリソースと各テナントリソース
物理L-Serverリソースと仮想L-Serverリソース
バックアップサイトの環境削除
バックアップサイトの業務で使用していた以下の環境を削除します。
L-Platformテンプレート
L-Platform構成情報
各種リソース情報
課金情報
メータリングログ
各種情報のインポート
以下の情報をインポートします。
L-Platformテンプレート
L-Platform構成情報
各種リソース情報
課金情報
メータリングログ
以下の操作で実施できます。
すべてのリソースを一括して切り替える運用
Disaster Recovery機能を使用するための設定を行った場合、以下のコマンドを実行します。
【Windowsマネージャー】
>インストールフォルダー\SVROR\Manager\bin\rcxrecovery <RETURN> |
テナント単位にリソースを切り替える運用
グローバルリソースの復旧
Disaster Recovery機能を使用するための設定を行った場合、以下のコマンドを実行します。
【Windowsマネージャー】
>インストールフォルダー\SVROR\Manager\bin\rcxrecovery -global <RETURN> |
2. 各テナントリソースの復旧
テナント単位に、以下のコマンドを実行します。
Disaster Recovery機能を使用するための設定を行った場合、以下のコマンドを実行します。
【Windowsマネージャー】
>インストールフォルダー\SVROR\Manager\bin\rcxrecovery -tenant tenant1 <RETURN> |
rcxrecoveryコマンドについては、「リファレンスガイド (コマンド/XML編) CE」の「5.20 rcxrecovery」を参照してください。
rcxrecoveryコマンドの切替え処理状況は、出力されるメッセージで確認してください。また、お客様の手動操作や判断が必要な以下の操作は、問い合わせがあります。問い合わせに答えて、コマンドを継続してください。
-nocleanupオプションを指定せずにバックアップサイトをクリーンアップする運用の場合、本当にクリーンアップして良いか問い合わせがあります。クリーンアップを承諾("y"を入力)して、rcxrecoveryコマンドを継続してください。バックアップサイトをクリーンアップできない場合、"n"の入力でコマンドの実行は中断されます。
VM管理製品が物理L-Server上に構築されていない場合、切替え時にVM管理製品のリストアを手動で実施する必要があります。VM管理製品のリストアが完了するまで待ち合わせますので、VM管理製品のリストアが完了したあと"y"を入力して、中断したrecoveryコマンドを継続させてください。
切替え対象サーバにVMware ESXiがある場合、VMホストをSVOMに登録する必要があります。VMホストをSVOMに登録するまで待ち合わせますので、VMホストのSVOMへの登録が完了したら、コマンドを継続させてください。
注意
構築済みの物理サーバと関連付けたL-Serverは、Disaster Recoveryの復旧の対象外です。
切替え後に再度L-Serverと関連づける運用を容易にするために、設定情報を退避します。以下のrcxadm configコマンドを実行してください。
【Windowsマネージャー】
>インストールフォルダー\SVROR\Manager\bin\rcxadm config filter -convert -indir indir -outdir outdir <RETURN> |
outdirにconvert.txtというファイル名で以下の情報が出力されます。
復旧手順が完了したあと、以下の内容でL-Serverの関連付け、およびscopeの再設定を行ってください。
[command] |
ETERNUSのダイナミックLUNミラーリングを使用したストレージは、被災時の切替え運用を実施するとバックアップサイト側では事前に作成されたLUNとして扱われます。L-Platformを削除してもストレージが解放されないなど運用が変更になります。
rcxrecoveryコマンドを使用したインポートは、L-Serverの作成などの、リソース構成情報・ユーザー定義情報(XMLファイル)が変更される操作やrcxmgrexportコマンドを使用するエクスポート操作と同時に実行しないように運用してください。
RCコンソールに表示されるL-Platformの電源状態は、切替え直後は正常に表示されない場合があります。切替え処理が完了した後、3分程度お待ちください。
性能情報(ダッシュボード及び稼動状況表示で表示される情報)は、運用サイトの構成に依存する情報のため、バックアップサイトへの切り替えで引き継がれません。切り替えた以降のバックアップサイトでの情報が表示されます。
Disaster Recoveryでバックアップサイトに切替えを実施した際、インポートの失敗により切替えできないことがあります。このような場合、インポート失敗時の異常に対処した後、切替えを実施します。バックアップサイト構成情報をクリアする指定(-nocleanupオプションを設定しない場合)で切替えを実施した場合で、"cleanup of resources"の処理が"completed"となった場合には、-nocleanupオプションを付加して再度切替えを行ってください。
L-ServerのインポートでVMゲストが復旧できなかった場合の例を以下に説明します。
1) インポートで異常が発生
>インストールフォルダー\SVROR\Manager\bin\rcxrecovery <RETURN> FJSVrcx:ERROR:62569:/tenant1/l-platform1/l-server1:lserver:import was interrupted. Message=:67154: VM Guest not found |
2) エラーの原因を特定するため、当該リソースの状態を表示します。
>インストールフォルダー\SVROR\Manager\bin\rcxadm config show -type lserver -name /tenant1/l-platform1/l-server1 -dir dir1 -format xml<RETURN> |
-dirでは以下のフォルダーの中でエクスポート日付が最新のフォルダーを指定してください。
rcxrecovery -dirオプション、またはfa_dr.rcxpropで指定したインポートフォルダー\ManagerExport\RORエクスポート日付
3) 問題が発生したリソースをエクスポートファイルから削除します。
>インストールフォルダー\SVROR\Manager\bin\rcxadm config filter -exclude lserver -name /tenant1/l-platform1/l-server1 -indir dir1 -outdir dir2 <RETURN> |
4) 3)のコマンドで出力されたエクスポートファイルを、2)の-dirで指定したフォルダーへ上書きします。
5) 再度、インポートを実施します。
>インストールフォルダー\SVROR\Manager\bin\rcxrecovery -nocleanup<RETURN> |
ディレクトリサービス情報の復元
ディレクトリサービスの情報を復元します。復元手順は、ディレクトリサービス製品のマニュアルを参照ください。
インポートしたL-Platformの確認
L-Platformを配備中、または構成変更中などの状態でエクスポートし、rcxrecoveryコマンドでL-Platform構成情報をインポートした場合、リソースが存在していないL-Platform情報が復旧される場合があります。
その場合、リソースが存在していない可能性のあるL-Platformの情報をログに出力します。
ログに出力される内容を確認し、必要な対処を行います。
ログに出力される内容と対処方法については、「リファレンスガイド (コマンド/XML編) CE」の「1.2.3 Disaster Recoveryによる切替え時の出力ログ」を参照してください。
利用料金の復旧
利用料金ファイルの送付
運用サイトでの被災当月度の各テナントの利用料金ファイルは以下のディレクトリに復旧されます。利用料金ファイルのフォーマットについては「15.4.6 利用料金の送付」を参照してください。
利用料金ファイル
格納先
インストールフォルダー\RCXCTMG\Charging\importdata
ファイル名
- YYYYMM_テナント名[_削除日時].zip
- YYYYMMは締め日の年月です。
- "_削除日時"は削除済みのテナントの場合に付加されます。
本ファイルは、課金請求担当者が切換え運用を開始した月度の利用料金を請求する際に必要です。
テナント情報ファイルを元に、各テナントの課金請求担当者に送付してください。テナント情報ファイルは、テナント名や、締め日、送付先メールアドレスなどのテナント情報を記述したファイルで、利用料金ファイルと同じフォルダーに格納されています。
テナント情報ファイル
格納先
インストールフォルダー\RCXCTMG\Charging\importdata
ファイル名
tenant_info.csv
フォーマット
テナント名、テナント表示名、テナント削除日、前回締め日、次回締め日、送付先メールアドレスを以下のcsv形式で出力します。
#TenantName,TenantDisplayName,TenantDeletedDate,TenantLastCutoffDate,TenantNextCutoffDate,AccountingMailAddress tenant01,tenant001,,2012-05-31,2012-06-30,tenant1@example.com tenant02,tenant002,,2012-05-31,2012-06-30,tenant2@example.com tenant03,tenant003,2012-05-27 16:48,2012-05-31,2012-06-30,tenant3@example.com tenant04,tenant004,,2012-05-31,2012-06-30,tenant4@example.com |
利用料金ファイルを課金請求担当者に送付する方法は以下のとおりです。
すべてのリソースを一括して切り替える運用
復旧された各テナントの利用料金ファイルを課金請求担当者に送付します。各利用料金ファイルがどのテナントのものかはファイル名から判断します。テナント情報ファイルから対象のテナントの送付先メールアドレスを取得し、利用料金ファイルを送付します。
テナント単位にリソースを切り替える運用
切り替えるテナントの送付先メールアドレスをテナント情報ファイルから取得し、対象の利用料金ファイルを送付します。
利用料金ファイルを送付する際に、以下の情報も合わせて通知してください。
バックアップサイトの利用料金ファイルが締め日の次の日に別途送付されること。
被災当月度は被災サイトとバックアップサイトの利用料金ファイルから利用料金を算出すること。
ただし、被災により、締め日に運用が停止していた場合、あるいは、すでに削除されたテナントの場合は、被災当月度のバックアップサイトでの利用実績がないため、バックアップサイトの利用料金ファイルは送付されず、運用サイトの利用料金ファイルから利用料金を請求することを通知してください。なお、テナントの締め日はテナント情報ファイルから取得できます。
テナント管理者への通知
バックアップサイトでは、利用料金画面にはバックアップサイトでの利用料金だけが表示されます。インフラ管理者は、テナント管理者にその旨および、必要に応じて、運用サイトでの利用料金情報を開示する旨の通知をテナント管理者にメールなどでおこなってください。
注意
バックアップサイトでの利用料金の集計は切換えの次の日から開始されます。
FQDNの切替え
運用サイトとバックアップサイトのIPアドレスが異なるIPアドレスの管理サーバの環境で、FQDNをバックアップサイトに引き継ぐ運用を行う場合には、切替えが完了した時点でDNSサーバに登録しているFQDNの通知先IPアドレスをバックアップサイトの管理サーバに切り替えてください。
FQDNをバックアップサイトに引き継ぐ運用を行う場合、RORコンソールを使用するクライアントは、切替え完了後にWebブラウザのキャッシュ(インターネットの一時ファイル)をクリアしてください。
テスト証明書を使用する運用で、導入時にバックアップサイトの証明書をブラウザにインポートしていない場合はインポートしてください。
詳細は、「導入ガイドCE」の「第6章 ブラウザへの証明書のインポート」を参照してください。
アクセス権限のカスタマイズを行った権限の変更は、バックアップサイトには引き継がれません。被災時は切替えが完了したあとに再度変更してください。