VSCが提供するサーバフリーなデータサービス機能とは、業務サーバの資源(CPU/メモリ)を利用せずに、仮想化スイッチ自身の資源でデータコピーを行う機能です。本来、業務サーバの資源はデータを処理するアプリケーションが消費するものであり、バックアップや保全などの副次的な作業で費やすものではありません。本機能を利用することで業務サーバが持つ能力をより有効的に活用できます。
本サービスでは、以下の機能を提供します。
マイグレーション機能
レプリケーション機能
マイグレーションは、仮想ディスク内のデータを、別の実ディスクに移行するための機能です。この機能は、新しいディスク装置に対するデータ移行や、性能ボトルネックとなっている実ディスクを排除するなどの作業に利用できます。
利用者は、業務サーバが認識しているディスク情報(WWN、ディスク番号)を変更する必要はなく、VSCが自動的に仮想ディスクを構成している実ディスク情報を変更します。
マイグレーション先の実ディスクに対してデータコピーが完了した際、自動的に実ディスクを切替える方法と利用者が切替える2つの方法があります。バックアップディスクを保持しないモードでマイグレーションを起動した場合、VSCが自動的に実ディスクを切替えます(自動切替え機能)。バックアップディスクを保持するモードでマイグレーションを起動した場合は、利用者が実ディスクの切替えを実施します。
自動切替え機能を利用しない場合、データのコピーが完了したら、利用者は実ディスクの切替え指示を実行する必要があります。実ディスクの切替え指示を、マイグレーションの完了指示と呼びます。VSCは、利用者からマイグレーション完了が指示されるまでの間、マイグレーション元と先の実ディスク間の等価性を保つため、アプリケーションから書かれたデータを両方の実ディスクに書き込んでいます。仮想化スイッチの能力を劣化させないためにも、マイグレーション完了指示は、適切な時期に確実に実行してください。
対象 | 状態 | アクセス可否 | 備考 |
---|---|---|---|
コピー元実ディスク | コピー中 | ○ | - |
等価性維持中 | ○ | - | |
切り替え後 | - | - | |
コピー先実ディスク | コピー中 | - | - |
等価性維持中 | - | 等価性維持を行うため、仮想化スイッチ内でwrite要求を実行します。 | |
切り替え後 | ○ | - |
VSCのマイグレーションには、以下の特長があります。
サーバ無停止のマイグレーション
一般的に、マイグレーション先のディスクを業務サーバが利用する場合、アプリケーションまたはシステムの再起動が必要になります。しかし、仮想ディスクの場合、業務サーバが認識している情報は仮想的なものであり、仮想ディスクを構成している物理的な情報(実ディスク情報など)は、VSCがすべて把握しているため、業務サーバからすると接続ディスクに変更が生じたことを意識する必要がありません。そのため、マイグレーション先の実ディスクが変更されても、システムやアプリケーションを停止することなく、継続して利用できます。
マイグレーション元のデータを保存
一般的に、マイグレーションの目的は、ディスク装置の移行(データを格納している器を新しくする)であるため、マイグレーション前に使用していた実ディスクは不要となります。しかし、マイグレーションを利用する際のシステム環境は、新しいディスク装置を導入するなど、大きな変化が生じているため、不測の事態が発生する要因を多く含んでいます。そのため、マイグレーション前の情報を破棄せずに保存しておく(再利用可能な状態にしておく)ことで素早いリカバリーに備えます。
バックアップディスクは、利用者から削除指示があるまで、VSCは保存し続けますので、マイグレーション完了指示後、速やかに削除してください。
注意
マイグレーションバックアップディスク(以後、バックアップディスク)を保持するマイグレーションにおいて、バックアップディスクのデータの整合性を保障したい場合は、マイグレーションの切替え前に業務サーバ内にキャッシュされているデータをバックアップディスクに書き込み、整合性を保障する必要があります。
利用者がマイグレーション先の実ディスクを直接指定しない場合、VSCが自動的に実ディスクを決定するので、移行先となる実ディスクだけで仮想ストレージプールを作成する運用操作が必要になることに注意してください。
また、コピー処理を実行する仮想化スイッチは、マイグレーション元と先の両方の実ディスクに対するアクセスパスを保持していなければなりません。
VSCは、マイグレーション指示を受け付けると、利用者にセションIDを返答します。セションIDは、マイグレーションの完了指示やマイグレーションの中止を指示する際に利用します。
レプリケーションは、仮想ディスクの複製を作成する機能です。この機能は、新規業務の構築や仮想ディスクのバックアップ運用として利用できます。
レプリケーションを行うには、利用者がレプリケーションの開始と終了を指示しなければなりません。VSCは、仮想ディスク間の等価性を保つため、アプリケーションから書かれたデータを両方の仮想ディスクに同時に書き込んでいます。
対象 | 状態 | アクセス可否 | 備考 |
---|---|---|---|
コピー元仮想ディスク | コピー中 | ○ | - |
等価性維持中 | ○ | - | |
切り替え後 | ○ | - | |
コピー先仮想ディスク | コピー中 | × | アクセスエラーが発生します。 |
等価性維持中 | × | アクセスエラーが発生します。 | |
切り替え後 | ○ | - |
レプリケーションは、運用管理サーバのstartrepコマンドまたはETERNUS SF AdvancedCopy Managerを使用して実施できます。
運用管理サーバのstartrepコマンドで実施したレプリケーションの場合
a.コピーを一時中断(Suspend)/再開(Resume)する機能はありません。
b.コピーセキュリティ機能は使用できません。
ETERNUS SF AdvancedCopy Managerで実施したレプリケーションの場合
a.コピーを一時中断(Suspend)/再開(Resume)する機能があります。
b.コピーセキュリティ機能が使用できます。
コピーセキュリティの詳細は、「3.4.3 コピーセキュリティ機能」を参照ください。
参照
ETERNUS SF AdvancedCopy Managerを使用したレプリケーションに関しては、『ETERNUS SF AdvancedCopy Manager運用手引書』を参照ください。
運用管理サーバのコマンドの詳細は、「付録B 運用管理サーバのコマンド」を参照ください。
以下に、運用管理サーバのコマンドを使用したレプリケーションの開始から終了までのフローを記述します。
レプリケーション開始指示(startrepコマンド)
運用管理サーバのstartrepコマンドで、レプリケーションを開始します。
参考
レプリケーションの指示に必要な情報は、複製元の仮想ディスク名、複製先の仮想ディスク名です。
コピー中
コピー元の仮想ディスクのデータを、コピー先の仮想ディスクにコピーしている状態です。レプリケーションを中断したい場合は、運用管理サーバのcancelrepコマンドを使用します。
等価性維持中
コピー元の仮想ディスクとコピー先の仮想ディスクに同じデータが書き込まれている状態です。レプリケーションを中断したい場合は、運用管理サーバのcancelrepコマンドを使用します。
レプリケーション終了指示(finishrepコマンド)
運用管理サーバのfinishrepコマンドで、コピー元の仮想ディスクとコピー先の仮想ディスクの等価性維持中を解除し、レプリケーションを完了させます。
注意
レプリケーション実行中に複写先の仮想ディスクにアクセスした場合、アクセスエラーが発生します。レプリケーション機能を利用する際は、業務サーバから仮想ディスクにアクセスしないでください。