ETERNUS SF Storage Cruiser ユーザーズガイド 仮想ストレージ管理編 13.2 - Solaris (TM) Operating System / Linux / Microsoft(R) Windows(R) -
目次 前ページ次ページ

第1章 Virtual Storage Conductorの概略

1.5 VSCが提供する機能の概要

VSCは、SAN環境における柔軟なストレージ運用と総合的なデータサービスを実現するために、以下の機能を提供します。

1.5.1 仮想ディスク機能 

現在、業務サーバが認識して利用するボリュームは、業務サーバが利用するデータ量を設計した上でディスク装置から論理ユニット(LUN)を割り当てる方法が一般的です。VSCが提供する仮想ディスク機能は、論理ユニット(LUN)の容量に依存しないサイズのボリュームが作成できます。つまり、業務サーバとディスク装置間の物理的な関係を疎遠にすることで、業務サーバが欲しい時に欲しい容量のボリュームを提供することが可能になります。

また、仮想ディスク自身の容量を拡張することが可能です。

利用者が使用している既存のデータを保持した状態のまま、一括で仮想ディスクを作成することができます。詳しくは「5.1.8 一括変換」を参照してください。

1.5.2 サーバフリーなデータサービス機能 

VSCが提供するサーバフリーなデータサービス機能とは、業務サーバの資源(CPU/メモリ)を利用することなく、仮想化スイッチ自身の資源でデータコピーを行う機能です。本来、業務サーバの資源はデータを処理するアプリケーションが消費するものであり、バックアップや保全などの副次的な作業で費やすものではありません。本機能を利用することで業務サーバが持つ能力をより有効的に活用することが可能になります。
本サービスでは、以下の機能を提供します。

1.5.2.1 マイグレーション機能 

マイグレーションは、仮想ディスク内のデータを、別の実ディスクに移行するための機能です。この機能は、新しいディスク装置に対するデータ移行や、性能ボトルネックとなっている実ディスクを排除するなどの作業に利用することができます。

利用者は、業務サーバが認識しているディスク情報(WWN、ディスク番号)を変更する必要はなく、VSCが自動的に仮想ディスクを構成している実ディスク情報を変更します。

マイグレーション先の実ディスクに対してデータコピーが完了した際、自動的に実ディスクを切替える方法と利用者が切替える2つの方法があります。バックアップディスクを保持しないモードでマイグレーションを起動した場合、VSCが自動的に実ディスクを切替えます(自動切替え機能)。バックアップディスクを保持するモードでマイグレーションを起動した場合は、利用者が実ディスクの切替えを実施します。

自動切替え機能を利用しない場合、データのコピーが完了したら、利用者は実ディスクの切替え指示を実行する必要があります。実ディスクの切替え指示を、マイグレーションの完了指示と呼びます。VSCは、利用者からマイグレーション完了が指示されるまでの間、マイグレーション元と先の実ディスク間の等価性を保つため、アプリケーションから書かれたデータを両方の実ディスクに書き込んでいます。仮想化スイッチの能力を劣化させないためにも、マイグレーション完了指示は、適切な時期に確実に実行してください。

[マイグレーションにおける仮想ディスクのアクセス可否]

対象

状態

アクセス可否

備考

コピー元実ディスク

コピー中

等価性維持中

切り替え後

コピー先実ディスク

コピー中

等価性維持中

等価性維持を行うため、仮想化スイッチ内でwrite要求を実行します。

切り替え後

VSCのマイグレーションには、以下の特徴があります。

  1. サーバ無停止のマイグレーション

    一般的に、マイグレーション先のディスクを業務サーバが利用する場合、アプリケーションあるいはシステムの再起動が必要になります。しかし、仮想ディスクの場合、業務サーバが認識している情報は仮想的なものであり、仮想ディスクを構成している物理的な情報(実ディスク情報など)は、VSCが全て把握しているため、業務サーバからすると接続ディスクに変更が生じたことを意識する必要がありません。そのため、マイグレーション先の実ディスクが変更されても、システムやアプリケーションを停止することなく、継続して利用することができます。

  2. マイグレーション元のデータを保存

    一般的にマイグレーションの目的は、ディスク装置の移行(データを格納している器を新しくする)にあるため、マイグレーション前に使用していた実ディスクは不要となります。しかし、マイグレーションを利用する際のシステム環境は、新しいディスク装置を導入するなど、大きな変化が生じているため、不測の事態が発生する要因を多く含んでいます。そのため、マイグレーションを実行する以前の情報を破棄することなく保存しておき、再利用可能な状態にしておくことにより素早いリカバリに備えます。

    バックアップディスクは、利用者から削除指示があるまで、VSCは保存し続けますので、マイグレーション完了指示後、速やかに削除してください。

マイグレーションバックアップディスク(以後、バックアップディスク)を保持するマイグレーションにおいて、バックアップディスクのデータの整合性を保障したい場合は、マイグレーションの切替え前に業務サーバ内にキャッシュされているデータをバックアップディスクに書き込み、整合性を保障する必要があります。
利用者がマイグレーション先の実ディスクを直接指定しない場合、VSCが自動的に実ディスクを決定するので、移行先となる実ディスクだけで仮想ストレージプールを作成する運用操作が必要になることに注意してください。
また、コピー処理を実行する仮想化スイッチは、マイグレーション元と先の両方の実ディスクに対するアクセスパスを保持していなければなりません。
VSCは、マイグレーション指示を受け付けると、利用者にセションIDを返答します。セションIDは、マイグレーションの完了指示やマイグレーションの中止を指示する際に利用します。

1.5.2.2 レプリケーション機能 

レプリケーションは、仮想ディスクの複製を作成する機能です。この機能は、新規業務の構築や仮想ディスクのバックアップ運用として利用することができます。

レプリケーションを行うには、利用者がレプリケーションの開始と終了を指示しなければなりません。VSCは、仮想ディスク間の等価性を保つため、アプリケーションから書かれたデータを両方の仮想ディスクに同時に書き込んでいます。

[レプリケーションにおける仮想ディスクのアクセス可否]

対象

状態

アクセス可否

備考

コピー元仮想ディスク

コピー中

等価性維持中

切り替え後

コピー先仮想ディスク

コピー中

×

アクセスエラーが発生します。

等価性維持中

×

アクセスエラーが発生します。
等価性維持を行うため、仮想化スイッチ内でwrite要求を実行します。

切り替え後

レプリケーションは、運用管理サーバのstartrepコマンドまたはETERNUS SF AdvancedCopy Managerを使用して実施することができます。

ETERNUS SF AdvancedCopy Managerで実施したレプリケーションは、コピーを一時中断(Suspend)/再開(Resume)する機能があります。

しかし、運用管理サーバのコマンドで実施したレプリケーションは、コピーを一時中断(Suspend)/再開(Resume)する機能は存在しませんので、ご注意ください。

以下に、運用管理サーバのコマンドを使用したレプリケーションの開始から終了までのフローを記述します。

ETERNUS SF AdvancedCopy Managerを使用したレプリケーションに関しては、「ETERNUS SF AdvancedCopy Manager使用手引書」を参照ください。

運用管理サーバのコマンドの詳細は、「付録B 運用管理サーバのコマンド」を参照ください。

1)レプリケーション開始指示(startrepコマンド)

 運用管理サーバのstartrepコマンドを使用して、レプリケーションを開始します。

2)コピー中

 コピー元の仮想ディスクのデータが、コピー先の仮想ディスクにコピーされている状態です。レプリケーションを中断したい場合は、運用管理サーバのcancelrepコマンドを使用します。

3)等価性維持中

 コピー元の仮想ディスクとコピー先の仮想ディスクに同じデータが書き込まれている状態です。レプリケーションを中断したい場合は、運用管理サーバのcancelrepコマンドを使用します。

4)レプリケーション終了指示(finishrepコマンド)

 運用管理サーバのfinishrepコマンドを使用して、コピー元の仮想ディスクとコピー先の仮想ディスクの等価性維持中を解除し、レプリケーションを完了させます。

レプリケーション指示をする際に必要な情報は、複製元の仮想ディスク名、複製先の仮想ディスク名です。

レプリケーション実行中に、複写先の仮想ディスクに対してアクセスした場合、アクセスエラーが発生するので、レプリケーション機能を利用する際は、業務サーバから仮想ディスクに対してアクセスされないようにしてください。


目次 前ページ次ページ

All Rights Reserved, Copyright(C) 富士通株式会社 2008