VMware vSphere Virtual Volumesは、これまでVMFS上で行われていたVMDKファイルの操作を、ストレージ装置のボリューム操作にオフロードする技術です。
VMFSでは、フォーマットされた1つのボリュームをデータストアとし、そのVMFSデータストア上に作成された複数のVMDKファイルで1つの仮想マシンを構成していました。そのため、仮想マシンの操作はVMFS上のファイル操作で実現され、ストレージ装置が持つ高度な機能を十分に活用できませんでした。
図4.5 VMFSによる環境
VMware vSphere Virtual Volumesでは、ストレージ装置に構成された論理的な領域をデータストアとして、その領域に作成される個々のボリュームをVMDKとして仮想マシンを構成します。このため、ストレージ装置の様々な機能を仮想マシン単位で活用できます。Virtual Volume用のデータストアを“VVOLデータストア”と呼びます。
VMware vSphere Virtual Volumesにより、ストレージ装置に対する性能設計や性能分析を簡素化できます。また、仮想マシン単位のバックアップを採取できます。同一装置内であれば、ストレージ装置のアドバンスト・コピー機能により、VMware標準のスナップショットやクローンの作成、およびStorage vMotionの処理の高速化を実現できます。
図4.6 VMware vSphere Virtual Volumesによる環境
参考
VMware vSphere Virtual Volumes機能では、ストレージ装置側に構成されるデータストアを“バッキングストレージコンテナ”と表現します。
VMware vSphere Virtual Volumesに対する、Storage Cruiserの主な機能概要は以下のとおりです。
VVOLアクセスパス管理
VMFSによるVMware環境において、VMFSデータストアを構成するためのボリュームをVMホストに認識させるには、ストレージ装置とVMホスト間にアクセスパス(FCスイッチのゾーニングおよびストレージ装置のホストアフィニティ)を設定する必要がありました。
VMware vSphere Virtual Volumes環境でも同様にアクセスパスの設定が必要です。ただし、VVOLデータストアはボリュームではないため、従来のホストアフィニティ設定とは異なり、VVOLデータストアを認識できるようにするためのホストアフィニティの設定が必要です。
Storage Cruiserは、ストレージ装置とVMホスト間のアクセスパスを管理する機能と同様に、VMホストとVVOLデータストア間のアクセスパスを管理する機能を提供します。
なお、Storage Cruiserのマニュアルでは、VVOLアクセスパス以外のアクセスパスを“アクセスパス”と表現します。
VVOLデータストア構成管理
VVOLデータストアは、仮想マシンの制御において生成されるVirtual Volumeを配置するための論理的な領域です。Storage Cruiserでは、1つのTierプールで、または複数のTierプールを組み合わせて、1つのVVOLデータストアを構成します。VVOLデータストア内のどのTierプールにVirtual Volumeを配置するかは、仮想マシンの制御において指定するポリシーにより自動的に決定されます。
関係管理
End to Endビュー(VMware)において、仮想マシンからVirtual Volumeまでの関係性を表示し、関係する各装置の構成要素の詳細情報を表示できます。
性能管理
ストレージ装置からVirtual Volume単位の性能情報を取得してグラフ表示し、各仮想マシンの負荷状況や性能分析を支援します。
仮想マシンストレージポリシー
仮想マシンストレージポリシーの仕組みは、VMware vSphere Virtual Volumesの標準機能です。仮想マシンやストレージ装置に関する要件をあらかじめポリシーとして用意しておくことで、仮想マシンの各種制御(仮想マシンの新規作成、スナップショット、クローン、Storage vMotion)において、ポリシーを満たすVVOLデータストアを選択できます。
Storage Cruiserでは、ストレージ自動階層制御、QoS自動化機能、仮想マシンバックアップ機能の各種設定をポリシーとして定義し、ポリシーを満たすVVOLデータストアとTierプールの選択、生成されたVirtual Volumeや仮想マシンに対する一括制御を実施できます。
参照
本機能の利用に必要な条件は、『Storage Cruiser / AdvancedCopy Manager 運用ガイド VMware vSphere Virtual Volumes編』の「動作環境」を参照してください。
注意
以下の機能は、VMware vSphere Virtual Volumesをサポートしていません。
レポーティング機能
Storage Cluster機能
ポイント
ETERNUS SF AdvancedCopy Manager Standard Editionライセンスを追加することで、仮想マシンバックアップ機能を使って、VMゲスト単位のバックアップを採取できます。同一ストレージ装置内であれば、ストレージ装置のアドバンスト・コピー機能によって、VMware標準のスナップショットやクローンの作成、およびStorage vMotionの処理の高速化を実現できます。
仮想マシンバックアップ機能の概要は、「6.6.1 VMware vSphere Virtual Volumes環境での仮想マシンのバックアップ運用」を参照してください。