ノングローバルゾーンはグローバルゾーンに設定したCmdlineリソースによって監視、制御されます。このため、グローバルゾーンのRMSが動作している間に、ノングローバルゾーン上のRMSやアプリケーションを操作すると、グローバルゾーン側でそれが異常として検知されることがあります。さらにそれを契機としてノングローバルゾーンの強制停止や切替えなどが発生することがあります。
このため、以下の操作を含む保守作業を実施する場合、以降で説明する保守作業手順にしたがってください。
ノングローバルゾーンの起動/停止
ノングローバルゾーンのRMSの起動/停止
ノングローバルゾーンのRMSによって制御されているクラスタアプリケーションの起動/停止
基本的な考え方としては、ノングローバルゾーン上の保守のためには、グローバルゾーン上で保守モードを使用します。
以下の手順は、グローバルゾーンの保守対象のクラスタアプリケーションがOnline状態であることを前提としています。ノングローバルゾーン上で何らかの異常が発生し、Online状態にすることができない場合の対処方法については、“16.5.4 ノングローバルゾーン異常発生時の復旧作業”を参照してください。
注意
共有IPゾーンの環境で、高速切替方式、GS/SURE連携方式の仮想IPアドレスを共有している場合、ノングローバルゾーンを停止する前に、以下の手順で共有状態を解除してください。
ノングローバルゾーン停止時に、共有されている論理インタフェースは削除されます。このため、GLSが制御する論理仮想インタフェースを消されないよう、事前に解除する必要があります。
本手順は、グローバルゾーンで実施します。
ifconifgコマンドで、高速切替方式、GS/SURE連携方式の論理仮想インタフェース(shaで 始まるインタフェース) に、停止対象のノングローバルゾーン名 のzone設定(共有状態の設定)が表示されていることを確認します。
# ifconfig -a
sha10:65: flags=1000863<UP,BROADCAST,NOTRAILERS,RUNNING,... zone zone-a inet 192.168.100.101 netmask ffffff00 broadcast 192.168.110.255
設定されている場合、共有状態を解除します。
# ifconfig sha10:65 -zone
# ifconfig -a
sha10:65: flags=1000863<UP,BROADCAST,NOTRAILERS,RUNNING,...
inet 192.168.100.101 netmask ffffff00 broadcast 192.168.110.255
なお、誤って手順を実行する前に停止したことで、GLSの論理仮想インタフェースが削除されてしまった場合、必要に応じて、“PRIMECLUSTER Global Link Services 説明書(伝送路二重化機能編)”の“トラブルシューティング”の“仮想インタフェースをifconfigコマンドで誤って削除した”を参考に復旧させてください。
OSLC環境のノングローバルゾーンでは、以下の最新の緊急修正を適用する必要があります。
Solaris 8の場合
移行元でPRIMECLUSTER 4.1A30を使用していた場合
901167-07以降 |
901172-34以降 |
901173-24以降 |
913855-05以降 |
914111-03以降 |
914112-10以降 |
914120-01以降 |
914346-01以降 |
914351-01 |
914530-01 |
915102-01以降 |
移行元でPRIMECLUSTER 4.1A40を使用していた場合、および新規にPRIMECLUSTERを使用する場合
901167-07以降 |
901172-34以降 |
901173-24以降 |
913855-05以降 |
914111-03以降 |
914112-10以降 |
914346-01以降 |
914351-02以降 |
914530-01 |
915102-01以降 |
Solaris 9の場合
移行元でPRIMECLUSTER 4.1A30を使用していた場合
901167-07以降 |
901172-34以降 |
901173-24以降 |
913855-05以降 |
914111-03以降 |
914112-10以降 |
914120-01以降 |
914346-01以降 |
914351-01 |
914530-01 |
915102-01以降 |
移行元でPRIMECLUSTER 4.1A40を使用していた場合
901167-07以降 |
901172-34以降 |
901173-24以降 |
913855-05以降 |
914111-03以降 |
914112-10以降 |
914346-01以降 |
914351-02以降 |
914530-01 |
915102-01以降 |
移行元でPRIMECLUSTER 4.2系を使用していた場合、および新規にPRIMECLUSTERを使用する場合
901196-35以降 |
901215-04以降 |
901217-29以降 |
901254-02以降 |
913855-05以降 |
914111-03以降 |
914112-10以降 |
914346-01以降 |
914351-02以降 |
914530-02以降 |
915102-01以降 |
ノングローバルゾーンイメージを共有する場合、またはシングルノードクラスタ運用の場合
ノングローバルゾーンイメージを共有する場合で、ノングローバルゾーンにパッチ適用を行う場合は、以下の例のような手順で行ってください。ノングローバルゾーンイメージを共有する場合は、ローリングアップデートによるパッチの適用はできません。
保守モードへの移行
グローバルゾーンから、対応するクラスタアプリケーションを保守モードに移行させます。GUIおよびCLIが利用できます。手順は“PRIMECLUSTER RMS導入運用手引書”の“8.4 保守モードの使用法”を参照してください。
ノングローバルゾーンでの保守作業の実施
Online状態のノングローバルゾーン上で必要な保守作業を実施します。グローバルゾーン上で保守モードが設定されている間は、必要に応じて、ノングローバルゾーンのRMSのコマンド(hvcm, hvshut, hvswitch, hvutil, hvdispなど)を使用しても構いませんし、ノングローバルゾーンの起動/停止を行なっても構いません。
例えば、ノングローバルゾーンにパッチを適用する場合、以下のような手順を実施します。
ノングローバルゾーンを停止します。グローバルゾーンからzloginでログインし、shutdownコマンドを実行するか、以下のようにzloginコマンドでグローバルゾーンから直接shutdownコマンドを実行します。
# zlogin zone-a shutdown -y -g0 -i0 *1
*1: “zone-a”はゾーン名です(以下同様)
ノングローバルゾーンが停止したこと確認します。具体的には、zoneadm listコマンドでSTATUSが"installed "の状態になることを確認します。
# zoneadm list -vc
ID NAME STATUS PATH BRAND IP 0 global running / native shared - zone-a installed /zone-a-system native shared
ノングローバルゾーンをシングルユーザモードで起動します。
# /usr/lib/brand/solaris8/s8_p2v zone-a (Solaris 8 コンテナの場合)
# /usr/lib/brand/solaris9/s9_p2v zone-a (Solaris 9 コンテナの場合)
# zoneadm -z zone-a boot -s
ノングローバルゾーンにパッチを適用します。
ノングローバルゾーンの再起動を実施します。
# zlogin zone-a shutdown -y -g0 -i6
注意
ノングローバルゾーンイメージを共有しない場合、各グローバルゾーンに配置してあるクラスタシステムを構成するすべてのノングローバルゾーンで同じパッチを適用してください。
各グローバルゾーンに配置してあるノングローバルゾーンのクラスタアプリケーションが同時にOnlineにならないよう注意してください。
ノングローバルゾーンの状態回復
保守モード解除の前に、ノングローバルゾーンを保守モードに移行した時と同じ状態に戻します。つまり、ノングローバルゾーンが起動していて、その上のRMSとクラスタアプリケーションも起動した状態に戻します。Gds、Gls、Fsystemなどの他のリソースを手動で非活性状態にしていた場合は、それらのリソースも活性状態に戻してください。
ノングローバルゾーンが再起動したことを確認します。これはzlogin -C zone-aでコンソールを取得することでその状況が確認できます。
シングルノードクラスタ運用の場合、クラスタアプリケーションの起動までが自動で行われます。“4. 保守モードの解除”の手順に進んでください。
# zlogin -C zone-a
ノングローバルゾーンにログイン後、以下の手順でRMSを起動します。
# hvcm
Online状態だったノングローバルゾーン上のクラスタアプリケーションを元の状態に戻します。
# hvswitch userApp_0 *1
*1: “userApp_0”はノングローバルゾーン上のクラスタアプリケーション名です。
保守モードの解除
グローバルゾーンで、対応するクラスタアプリケーションを保守モードから解除します。GUIおよびCLIが利用できます。手順は“PRIMECLUSTER RMS導入運用手引書”の“8.4 保守モードの使用法”を参照してください。
ノングローバルゾーンイメージを共有しない場合
ノングローバルゾーンイメージを共有しない場合は、ローリングアップデートによるパッチ適用が可能です。ノングローバルゾーンにローリングアップデートによるパッチ適用を行う場合は、以下の例のような手順で行ってください。
例)運用系グローバルゾーンGZA、および待機系グローバルゾーンGZBにあるノングローバルゾーンに、ローリングアップデートによるパッチ適用を行う場合。
GZA上で以下のコマンドを実行し、保守対象のノングローバルゾーンを制御するクラスタアプリケーションを待機系GZBに切替えます。
# hvswitch userApp_0 GZBRMS *1
*1: “userApp_0”はノングローバルゾーンを制御しているクラスタアプリケーション名、“GZBRMS”はSysNode名です。
保守対象のノングローバルゾーンを制御するクラスタアプリケーションを保守モードに移行させます。GUIおよびCLIが利用できます。手順は“PRIMECLUSTER RMS導入運用手引書”の“8.4 保守モードの使用法”を参照してください。
ノングローバルゾーンの状態を確認します。
# zoneadm list -vc
STATUSがconfiguredの場合、ノングローバルゾーンをアタッチします。
# zoneadm -z zone-a attach
STATUSがrunningの場合、ノングローバルゾーンを停止します。GZAからzloginでログインし、shutdownコマンドを実行するか、以下のようにzloginコマンドでグローバルゾーンから直接shutdownコマンドを実行します。
なお、設定によってはノングローバルゾーンを制御するCmdlineリソースが Faulted 状態になる場合がありますが、以降の手順を継続して実施してください。
# zlogin zone-a shutdown -y -g0 -i0 *2
*2: “zone-a”はゾーン名です(以下同様)。
ノングローバルゾーンが停止したこと確認します。具体的には、GZAでzoneadm listコマンドを実行し、STATUSが"installed"の状態になることを確認します。
# zoneadm list -cv
ID NAME STATUS PATH BRAND IP
0 global running / native shared
- zone-a installed /zone-a-system native excl
GZAから保守対象のノングローバルゾーンをシングルユーザモードで起動します。
# /usr/lib/brand/solaris8/s8_p2v zone-a (Solaris 8 コンテナの場合)
# /usr/lib/brand/solaris9/s9_p2v zone-a (Solaris 9 コンテナの場合)
# zoneadm -z zone-a boot -s
ノングローバルゾーンにパッチを適用します。
手順3.で、STATUSがconfiguredの場合、ノングローバルゾーンをデタッチします。
# zoneadm -z zone-a detach
STATUSがrunningの場合、ノングローバルゾーンを再起動し、ノングローバルゾーン上のRMSを起動します。手順5.にてノングローバルゾーンを制御するCmdlineリソースが Faulted 状態になった場合は、RMS起動後、CmdlineリソースがFaulted状態ではなくなるのを待ちます。
# zlogin zone-a shutdown -y -g0 -i6 *3
# zlogin -C zone-a
# hvcm *4 # hvutil -s userApp_0 *5
*3: その後、ノングローバルゾーンが再起動したことを確認します。これはzlogin -C zone-aでコンソールを取得することでその状況が確認できます。
*4: ノングローバルゾーンにログイン後、RMSを起動します。
*5: ウォームスタンバイ運用を行っていて、かつ、ノングローバルゾーンのクラスタアプリケーションに、スタンバイ状態になり得るリソースを登録している場合に実行します。“userApp_0”は、ノングローバルゾーン上のクラスタアプリケーションの名前です。
対応するクラスタアプリケーションの保守モードを解除します。GUIおよびCLIが利用できます。手順は“PRIMECLUSTER RMS導入運用手引書”の“8.4 保守モードの使用法”を参照してください。
GZBに配置してあるノングローバルゾーンにもパッチを適用します。 1)から 9)の手順を繰り返します。ただし、手順中のGZAはGZBに、GZBはGZAに置き換えてください。
ノングローバルゾーンのOracle, NetWorker, NAS装置のメンテナンス
ノングローバルゾーンのOracle, NetWorker, NAS装置の保守作業を行うには、PRIMECLUSTERまたはWizard製品による監視を一時的に中断する必要があります。
Wizard製品の保守の手順や留意点については各Wizard製品のマニュアルを参照してください。
ノングローバルゾーンのWizard製品への修正適用
ノングローバルゾーンのWizard製品に対して緊急修正を適用する場合は、ノングローバルゾーンをシングルユーザモードにして適用してください。このとき“16.5.1 ノングローバルゾーン上での保守作業”のようにグローバルゾーン上で保守モードを使用してください。
Wizard製品の修正適用の手順や留意点については、各Wizard製品のマニュアルを参照してください。