PRIMECLUSTERに関連するソフトウェアを運用する際には、環境に応じて、OSのカーネルパラメタを調整する必要があります。
PRIMECLUSTERをインストールするすべてのノード
使用する製品/コンポーネントによって、必要とするカーネルパラメタが異なります。
PRIMECLUSTERデザインシートの“セットアップ(初期構成)”を確認し、カーネルパラメタの変更が必要な場合は設定し直してください。
下記の表の特性に従って以下のようにカーネルパラメタを設定してください。
加算
システムのデフォルト値と各ソフトウェアごとの推奨値や指定値を合計した値を指定します。
最大値
各ソフトウェアの推奨値や指定値の中の最大値を指定します。
ただし、システムのデフォルト値よりも小さい場合は、デフォルト値を使用してください。
なお、カーネルパラメタ値は以下の場合により異なります。
CF 構成の場合
RMS 構成の場合
GFS を使用する場合
参照
カーネルパラメタの意味、および変更方法は、“Solaris X System Administrator Collection Vol.1”の“Solarisのシステム管理”を参照してください。
Solaris のデフォルト値については、“Solaris Tunable Parameters Reference Manual”を参照してください。
注意
PRIMECLUSTERシステム上で動作させる製品や利用者アプリケーションで使用する値についても、カーネルパラメタの値に反映させる必要があります。
変更した値を有効にするには、設定後にシステムを再起動する必要があります。
I/Oフェンシング機能を設定する場合は、後述の“3.2.4 GDSのI/Oフェンシング機能の設定”を実施した後に、システムを再起動してください。
カーネルパラメタの値がすでに満たされている場合は、システムに変更は加えられません。
■リソースデータベースを使用する場合
リソースデータベースを使用する場合に必要なカーネルパラメタの値を以下に示します。
インストール時にカーネルパラメタの設定値(デフォルト値、または/etc/systemの設定値)が不足している場合、インストーラによって/etc/system が自動で変更されます。なお、アンインストール時は、/etc/system の設定を元に戻してください。
注意
設備増設のためにノード数と論理ディスク数を増やす場合は、カーネルパラメタの再見積りを行い、クラスタを構成する各ノードを再起動する必要があります。このために、導入後のクラスタシステムにノードまたはディスクを増設する場合は、増設後のノード数と論理ディスク数を考慮してカーネルパラメタを予め設定しておく必要があります。
カーネルパラメタ | 特性 | 値 | パラメタの意味 |
---|---|---|---|
semsys:seminfo_semmni | 加算 | 20 | セマフォ識別子の最大数 |
shmsys:shminfo_shmmax | 最大値 | 4194304 (注1) | 作成できる System V 共有メモリセグメントの最大サイズ |
shmsys:shminfo_shmmni | 加算 | 30 | システム全体で作成できる共有メモリセグメントの最大数 |
(注1)
4194304はリソースデータベースを使用する際に必要な最低値です。
shmsys:shminfo_shmmaxにデフォルト値(8388608)よりも小さな値を設定する場合、この最低値よりも小さな値を設定しないでください。
また、クラスタシステムのリソース数により、shmsys:shminfo_shmmaxの値に変更が必要となる場合があります。
以下の方法でクラスタシステムのリソース数を見積もり、変更を行ってください。
リソース数 = (a) + (b)
(a) 共用ディスクデバイスのディスク数 × (共用ノード数 + 1) × 2
(b) ローカルディスクの総数 (全てのクラスタ構成ノード内のローカルディスク数)
リソースデータベースで必要な値 = 1048576 + 2776 × リソース数
上記の計算の値がデフォルト値
(8388608) より大きい場合:
shmsys:shminfo_shmmax = リソースデータベースで必要な値
上記の計算の値がデフォルト値
(8388608) より小さい場合:
shmsys:shminfo_shmmax を編集しない
(デフォルト値を使用します)
■RCI非同期監視を行う場合
RCI非同期監視を行う場合、SCF/RCI経由での監視タイムアウト時間(カーネルパラメタ)を/etc/system に設定する必要があります。サーバ機種によりカーネルパラメタが異なるため、サーバ機種を確認して適切な監視タイムアウト時間を設定してください。
注意
本設定は、以下の場合は不要です。
日本で他社が提供したSPARC Enterprise M3000、M4000、M5000、M8000、M9000の場合
日本以外で富士通・Oracle両社のロゴを配した筐体のSPARC Enterprise M3000、M4000、M5000、M8000、M9000の場合
以下に監視タイムアウト時間の設定が必要なサーバ機種を示します。
サーバ機種 | モデル | カーネルパラメタ |
---|---|---|
SPARC Enterprise | M3000 | scfd:scf_rdctrl_sense_wait |
M4000 | ||
M5000 | ||
M8000 | ||
M9000 |
監視タイムアウト時間の算出方法
以下の方法で監視タイムアウト時間を算出します。
2ドメイン以下: 2秒
3ドメイン以上: 1秒+(0.5×ドメイン数)
例) - 3ドメイン: 2.5秒 - 4ドメイン: 3.0秒
注意
RCIネットワーク内で最もドメイン数が多いサーバのドメイン数で算出してください。
/etc/system への設定方法
クラスタの初期構成設定を行う前に、以下の手順で、全ノードの/etc/system を変更します。
/etc/systemをバックアップします。
例)
/etc/systemを/etc/system.orgという名前でコピーします。
# cp /etc/system /etc/system.org |
/etc/system に監視タイムアウト時間を設定します。
監視タイムアウト時間はμs単位で設定するため、a.で算出した値(秒)×1,000,000を設定します。
set ドライバ名: scf_rdctrl_sense_wait = 監視タイムアウト時間(μs) |
例)
SPARC Enterpriseサーバ、2ドメイン構成、監視タイムアウト時間が2.0秒の場合
set scfd:scf_rdctrl_sense_wait = 2000000 |
ノードを再起動します。
例)
# /usr/sbin/shutdown -y -g0 -i6 |
RMSが確実に動作するにはカーネルパラメタの設定が必要です。そのため、RMS のインストール時に、これらのカーネルパラメタが /etc/system に定義されていない場合、または、定義されている場合でも、設定値が以下に示す値を満たしていない場合は、以下に示す値を設定するよう /etc/system の定義が自動で更新されます。
カーネルパラメタ | 特性 | 値 | パラメタの意味 |
---|---|---|---|
msgsys:msginfo_msgmnb | 最大値 | 4194304 | 1つのメッセージキューに保有できるメッセージの最大サイズ |
msgsys:msginfo_msgmni | 加算 | 8192 | システム全体で利用可能なメッセージキュー識別子の最大数 |
msgsys:msginfo_msgtql | 最大値 | 65535 | メッセージヘッダ数の最大数 |
注意
PRIMECLUSTERでは、プロセス間通信でメッセージキューを使用します。
RMS起動時、0x4d2から2076個を予約します。
アプリケーションでメッセージキューを使用する場合は、上記の範囲(0x4d2~0xcee)以外を使用してください。
RMS のインストール時に/etc/system のパラメタ定義が自動で追加/更新された場合であっても、他のソフトウェア製品や利用者アプリケーションで使用する値について確認し、必要に応じて定義値を修正してください。
GFS共用ファイルシステムを使用する場合に必要なカーネルパラメタを以下に示します。
カーネルパラメタ | 特性 | 値 | パラメタの意味 |
---|---|---|---|
semsys:seminfo_semmni | 加算 | 2 | セマフォ識別子の最大数 |