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PRIMECLUSTER Global Disk Services  説明書 4.3
FUJITSU Software

1.5.1 等価性方式によるスナップショット

あらかじめマスタボリュームとプロキシボリュームを結合して等価性維持状態にしておき、ある時点でプロキシボリュームをマスタボリュームから分離することによって、マスタボリュームのスナップショットを作成することができます。

等価性方式によるスナップショットは、主業務への影響を最小限に抑えた、定常的なスケジューリング運用のバックアップに適しています。

等価性維持状態になっていれば、マスタボリュームからプロキシボリュームを分離するだけでスナップショットを作成することができるため、大規模なデータでも数秒程度の時間で完了します。

また、次のスナップショットの作成に備えてプロキシをマスタに再度結合する際には、プロキシ用の高速等価性回復機構 (JRM) を使って、分離されていた間にマスタおよびプロキシが更新された箇所だけを、高速にコピーします。

図1.30 等価性方式によるスナップショット

このようにして、スナップショットの作成においても、その準備のための等価性回復においても、性能を含む主業務への影響を最小限に抑えることができます。

例えば、夜間よりも日中の方がディスクへの負荷が高く、テープへの退避に要する時間を 5 時間以内、等価性回復コピー時間を 1 時間以内として、毎日定常的にバックアップする運用を想定すると、次のようになります。

図1.31 1 日間隔のバックアップスケジュール例

注意

プロキシ用の高速等価性回復機構

プロキシ用の JRM は、マスタから分離されていたプロキシを再びマスタに結合する際、およびマスタのデータをプロキシから復元する際の等価性回復処理を高速化する仕組みです。GDS は、プロキシが分離されている間、マスタおよびプロキシの更新箇所をメモリに記録しています。再結合または復元の際に行われる等価性回復コピーでは、更新箇所のみをコピーすることによって、高速に等価性を回復します。

プロキシ用の JRM は、プロキシボリュームの pjrm 属性をオンに設定してプロキシボリュームを分離した場合に有効になります。しかし、プロキシを分離している状態で、クラスのスコープに含まれている任意の 1 ノードが停止した場合、再結合および復元の際には、高速等価性回復コピーは行われません。つまり、更新箇所のみでなく、ボリューム全体のコピーが行われます。

したがって、計画的なシステムシャットダウンを行う前には、プロキシをマスタにいったん再結合することを推奨します。

ディスク装置のコピー機能を利用している場合は、このような考慮は不要です。

参考

3 種類の JRM

高速等価性回復機構 (JRM) には、ボリューム用、スライス用、プロキシ用の 3 種類があります。
詳しくは、「A.4 高速等価性回復機構 (JRM)」を参照してください。

注意

スナップショットデータの整合性

アプリケーションがボリュームにアクセスしている最中にスナップショットを作成すると、ボリュームに中途半端なデータが書き込まれた時点でのスナップショットとなる場合があり、スナップショットデータの整合性が保証できません。

一般的に、正しくデータの整合性のとれたスナップショットを作成するためには、ボリュームにアクセスしているアプリケーションを事前に停止しておく必要があります。スナップショットの作成が完了した後、アプリケーションを再度動作させてください。

例えば、ボリュームを GFS や ext3 といったファイルシステムとして利用している場合であれば、スナップショットを作成する前後に、umount(8) コマンドによってマウントを解除して、mount(8) コマンドによって再度マウントしなおすことによって、確実にスナップショットデータの整合性を確保することができます。

アプリケーションを停止することなく、スナップショットを作成するためには、データを管理しているファイルシステムやデータベースシステムといったソフトウェア固有の方法で、整合性を確保する必要があります。

例として、「3.15 プロキシボリュームを使用したオンラインバックアップとリストア」を参照してください。

注意

ミラーリング中のスライスと等価性維持状態のプロキシボリュームとの違い

ミラーリング中のスライスどうしと、等価性維持状態にあるマスタボリュームとプロキシボリュームは、データが一致しているという点では同じですが、使用目的は異なります。

ミラーリングされているスライスどうしは、対等な関係にあり、いずれかのスライスで異常が発生したとしても、正常なスライスが残っている限り、ボリュームへのアクセスは継続できるような冗長性の維持を目的としています。

一方、マスタボリュームとプロキシボリュームは、たとえ等価性維持状態にあったとしても、そもそもこれらは別のボリュームであり、対等な関係ではありません。プロキシボリュームはマスタボリュームを主とする副ボリュームと言えます。マスタボリュームを構成するすべてのスライスが異常になった場合、たとえプロキシボリュームが正常であったとしても、マスタボリュームへのアクセスは継続できません。プロキシボリュームは、主業務で使用しているデータの冗長性を向上させるものではなく、主業務と並行して動作する別の業務で使用するためのスナップショット (マスタボリュームのある時点における複製) を作成すること目的としています。

スライス切離しによるスナップショット機能が、主目的であるミラーリングの副産物であるのに対して、プロキシボリュームを利用したスナップショットの機能は、スナップショット機能自体を主目的としています。
したがって、プロキシボリュームを利用すると、より柔軟なディスク構成や業務形態でのスナップショット運用が可能になります。

図1.32 ミラースライスとプロキシボリュームとの違い