Oracle PSR (Patch Set Release) など Oracle パッチの適用を行う場合、データベースをマウントする必要性の有無に応じて、手順が異なります。
パッチ適用前後にデータベースをマウントする必要がない場合は、RMS を完全に停止した状態で、適用を行ってください。パッチ適用前後にデータベースをマウントする必要がある場合は、以降の手順のようにuserApplication を保守モードにした状態で、適用を行ってください。
参考
Oracle Database 11g R2 より Oracle PSR (Patch Set Release) の適用方法は以下が提供されています。
In-place アップグレード
既存の ORACLE_HOME に対して PSR を上書きインストールする従来の方法です。この方法で PSR を適用する場合、“3.2.2.1 In-place アップグレードによるパッチ適用”を参照してください。
Out-of-place アップグレード
既存の ORACLE_HOME とは異なる新規の ORACLE_HOME にインストールする Oracle Database 11g R2 より提供される方法です。この方法で PSR を適用する場合、“3.2.2.2 Out-of-place アップグレードによるパッチ適用(スタンバイ運用、シングルノードクラスタ運用)”を参照してください。
Oracle Database 11g R1 以前の場合や、Oracle Database 11g R2以降で In-place アップグレードによる PSR 適用を行う場合は、以下の手順を実施してください。
userApplication の起動(運用ノード)
Oracle インスタンスリソース、リスナーリソースが含まれている userApplication が停止している場合は、起動してください。
保守モード移行(運用ノード)
運用ノード上で、userApplication を保守モードに移行してください。
例
全ての userApplication を保守モードに移行する場合
# /opt/SMAW/SMAWRrms/bin/hvutil -M on
全てのノード上で userApplication の状態が "Maintenance" になったことを確認してください。
Oracle リソース監視の中断(全てのノード)
全てのノード上で hvoradisable コマンドを実行し、Oracle インスタンスリソース、リスナーリソースの監視を中断してください。
例
ローカルノード上の全ての Oracle リソースの監視を中断する場合
# /opt/FJSVclora/sbin/hvoradisable -a
全てのノード上で Oracle インスタンスリソース、リスナーリソースの状態が"Warning" になったことを確認してください。
参考
スタンバイ運用の場合、待機ノードでも監視を行っているため、パッチ適用時に問題が発生する可能性があります。そのため、待機ノードでも監視を停止してください。
Oracle データベースの停止 (必要に応じて)
# su - <Oracle ユーザー> $ sqlplus /nolog SQL> CONNECT / AS SYSDBA SQL> SHUTDOWN IMMEDIATE
パッチの適用
Oracle Database ソフトウェアの配置先に応じて、パッチを適用してください。
参照
詳細は、Oracle Database のマニュアルを参照してください。
Oracle データベースの起動 (4.で停止していた場合)
# su - <Oracle ユーザー> $ sqlplus /nolog SQL> CONNECT / AS SYSDBA SQL> STARTUP
PDBの起動(マルチテナント機能を使用したデータベースで、4.でOracle データベースを停止していた場合)
# su - <Oracle ユーザー> $ sqlplus /nolog SQL> CONNECT / AS SYSDBA SQL> ALTER PLUGGABLE DATABASE ALL OPEN;
Oracle リソース監視の再開(全てのノード)
全てのノード上で hvoraenable コマンドを実行し、Oracle インスタンスリソース、リスナーリソースの監視を再開してください。
例
ローカルノード上の全ての Oracle リソースの監視を再開する場合
# /opt/FJSVclora/sbin/hvoraenable -a
全てのノード上で Oracle インスタンスリソース、リスナーリソースの状態が"Warning" から元の状態("Online"、"Offline")になったことを確認してください。
保守モードの解除(運用ノード)
運用ノード上で、userApplication の保守モードを解除してください。
例
全ての userApplication を保守モードに解除する場合
# /opt/SMAW/SMAWRrms/bin/hvutil -M off
全てのノード上で userApplication の状態が "Maintenance" から元の状態("Online"、"Standby"、"Offline")になったことを確認してください。
Oracle Database 11g R2以降のスタンバイ運用およびシングルノードクラスタ運用において Out-of-place アップグレードによる PSR 適用を行う場合は、以下の手順を実施してください。
注意
Oracle Database ソフトウェアがローカルディスク上に配置されている場合、ローカルディスク上にアップグレードしてください。
Oracle Database ソフトウェアが共用ディスク上に配置されている場合、共用ディスク上にアップグレードしてください。
アップグレード前後で Oracle Database ソフトウェアの配置先(ローカルディスク、共用ディスク)を変更することはサポート対象外です。
userApplication の起動(運用ノード)
Oracle インスタンスリソース、リスナーリソースが含まれている userApplication が停止している場合は、起動してください。
保守モード移行(運用ノード)
運用ノード上で、userApplication を保守モードに移行してください。
例
全ての userApplication を保守モードに移行する場合
# /opt/SMAW/SMAWRrms/bin/hvutil -M on
全てのノード上で userApplication の状態が "Maintenance" になったことを確認してください。
Oracle リソース監視の中断(全てのノード)
全てのノード上で hvoradisable コマンドを実行し、Oracle インスタンスリソース、リスナーリソースの監視を中断してください。
例
ローカルノード上の全ての Oracle リソースの監視を中断する場合
# /opt/FJSVclora/sbin/hvoradisable -a
全てのノード上で Oracle インスタンスリソース、リスナーリソースの状態が"Warning" になったことを確認してください。
参考
スタンバイ運用の場合、待機ノードでも監視を行っているため、パッチ適用時に問題が発生する可能性があります。そのため、待機ノードでも監視を停止してください。
Oracle データベースに依存するリソースの停止(運用ノード)
Oracle データベースに依存するリソースがある場合は、手動停止してください。
PSR の適用、データベースのアップグレード
PSR の適用
Oracle Database ソフトウェアをローカルディスクに配置する場合
Oracle Database のマニュアルに従い、全てのノードで Out-of-place アップグレードを実施してください。
Oracle Database ソフトウェアを共用ディスクに配置する場合
Oracle Database のマニュアルに従い、運用ノードで Out-of-place アップグレードを実施してください。
注意
「インストール・オプションの選択」画面では、"データベース・ソフトウェアのみインストール" を選択してください。
詳細は、Oracle Database のマニュアルを参照してください。
データベースのアップグレード(運用ノード)
運用ノードで dbua(Database Upgrade Assistant) を実行し、データベースをアップグレードしてください。
注意
"<新ORACLE_HOME>/bin/dbua" を実行してください。
詳細は、Oracle Database のマニュアルを参照してください。
SPFILE の共用ディスク上への移動と参照設定(運用ノード)
データベースのアップグレード実施後、SPFILE(サーバー・パラメータ・ファイル)がローカルディスク上に新たに生成された場合は、共用ディスク上へ移動してください。移動後、PFILE(初期化パラメータ・ファイル "<新ORACLE_HOME>/dbs/init<SID>.ora")に SPFILE のパスを指定するか、または SPFILE へのシンボリックリンクを作成して、SPFILE の参照設定を行ってください。
注意
Oracle Database ソフトウェアを共用ディスクに配置する場合、本手順は不要です。
参照
詳細は、“2.2.6 データベースの作成・設定”を参照してください。
PRIMECLUSTER Wizard for Oracle の設定
ログインプロファイルの設定変更(全てのノード)
Oracle ユーザーのログインプロファイルを vi などで開き、ORACLE_BASE および ORACLE_HOME 環境変数の設定を、アップグレード後のパスに変更してください。本手順は、全てのノードで実施してください。
例
変更前
ORACLE_HOME=/u01/app/oracle/product/11.2.0/dbhome_1
変更後
ORACLE_HOME=/u01/app/oracle/product/11.2.0/dbhome_2
参照
詳細は、“2.2.2 Oracle Database ソフトウェアのインストール・設定”を参照してください。
PFILE の待機ノードへの転送(運用ノード、待機ノード)
運用ノードの "<新ORACLE_HOME>/dbs" ディレクトリを tar アーカイブにまとめてください。
例
# su - oracle $ tar cfpvP /tmp/dbs.tar <新ORACLE_HOME>/dbs
その後、待機ノードへFTP転送し、展開してください。
例
# su - oracle $ tar xfpvP /tmp/dbs.tar
注意
Oracle Database ソフトウェアを共用ディスクに配置する場合、本手順は不要です。
シングルノードクラスタ運用の場合、本手順は不要です。
ここでは、PRIMECLUSTER Wizard for Oracle の cloracpy コマンドを使用しないでください。
待機ノード側で展開したファイルのアクセス権限が、運用ノード側と一致していることを確認してください。
参照
詳細は、“2.2.6 データベースの作成・設定”を参照してください。
Oracle Net Services 構成ファイルの配置
Oracle Net Services 構成ファイルを <旧ORACLE_HOME> 配下から<新ORACLE_HOME> 配下へコピーしてください。
Oracle Database ソフトウェアをローカルディスクに配置する場合
本手順を、全てのノードで実施してください。
Oracle Database ソフトウェアを共用ディスクに配置する場合
本手順を、運用ノードで実施してください。
例
$ cp -p <旧ORACLE_HOME>/network/admin/*.ora <新ORACLE_HOME>/network/admin/
注意
Oracle Net Services 構成ファイル内のパラメーターに、ORACLE_BASE や ORACLE_HOME に依存する設定がある場合、コピー後、必要に応じて "<新ORACLE_HOME>/network/admin/*.ora" ファイルを編集してください。
ここでは、PRIMECLUSTER Wizard for Oracle の cloracpy コマンドを使用しないでください。
Oracle データベースの起動確認(運用ノード)
Oracle インスタンス、リスナーが起動していることを確認してください。停止している場合は、手動起動してください。マルチテナント機能を使用したデータベースの場合はPDBも手動起動してください。
注意
Oracle インスタンスは OPEN 状態で起動している必要があります。
リスナープロセスが "<新ORACLE_HOME>/bin/tnslsnr" で起動していることを確認してください。
"<旧ORACLE_HOME>/bin/tnslsnr" となっている場合、それを停止して "<新ORACLE_HOME>/bin/tnslsnr" として起動してください。
Oracle データベースに依存するリソースの起動(運用ノード)
手順 4) で Oracle データベースに依存するリソースを停止した場合は、手動起動してください。
Oracle リソース監視の再開(全てのノード)
全てのノード上で hvoraenable コマンドを実行し、Oracle インスタンスリソース、リスナーリソースの監視を再開してください。
例
ローカルノード上の全ての Oracle リソースの監視を再開する場合
# /opt/FJSVclora/sbin/hvoraenable -a
全てのノード上で Oracle インスタンスリソース、リスナーリソースの状態が"Warning" から元の状態("Online"、"Offline")になったことを確認してください。
保守モードの解除(運用ノード)
運用ノード上で、userApplication の保守モードを解除してください。
例
全ての userApplication を保守モードに解除する場合
# /opt/SMAW/SMAWRrms/bin/hvutil -M off
全てのノード上で userApplication の状態が "Maintenance" から元の状態("Online"、"Standby"、"Offline")になったことを確認してください。
待機ノードへの切替確認
userApplication を待機ノードへ切替えて、正しく起動することを確認してください。
注意
シングルノードクラスタ運用の場合、本手順は不要です。
待機ノード上で userApplication が正しく起動できない場合、手順 6) を確認してください。
業務の再開
必要に応じて userApplication を運用ノードへ切戻し、問題がない場合は業務を再開してください。
Oracle Database 11g R2以降の Oracle RACスケーラブル運用において Out-of-place アップグレードによる PSR 適用を行う場合は、以下の手順を実施してください。
userApplication の停止(全てのノード)
全てのノードで userApplication を停止し、Offline 状態にしてください。
注意
Oracle Clusterware リソースと Oracle RAC インスタンスリソースが異なるuserApplication に登録されている場合、次の順序で停止してください。
Oracle RAC インスタンスリソースを含む userApplication
Oracle Clusterware リソースを含む userApplication
RMS の停止(全てのノード)
全てのノードで RMS を停止してください。
PSR の適用、データベースのアップグレード(全てのノード、または任意のノード)
Oracle のマニュアルに従い、以下の手順でアップグレードを実施してください。
Grid Infrastructure ソフトウェアのアップグレード
Oracle Database(Oracle RAC)ソフトウェアのアップグレード
Oracleデータベースのアップグレード
ログインプロファイルの設定変更(全てのノード)
Gridユーザー、およびOracle ユーザーのログインプロファイルを vi などで開き、ORACLE_BASE および ORACLE_HOME 環境変数の設定を、アップグレード後のパスに変更してください。本手順は、全てのノードで実施してください
例
変更前
ORACLE_HOME=/u01/app/oracle/product/11.2.0/dbhome_1
変更後
ORACLE_HOME=/u01/app/oracle/product/11.2.0/dbhome_2
自動起動の設定
Oracle Clusterware の自動起動の設定(全てのノード)
Oracle Clusterware の自動起動を設定してください。設定については、"2.3.2 Oracle Database ソフトウェアのインストール・設定"を参照してください。
Oracle RAC インスタンスの自動起動の無効化(任意のノード)
Oracle Clusterware による Oracle RAC インスタンスの自動起動制御が無効化されているか確認します。
例
# su - oracle $ srvctl config database -d <DB_NAME> : Management policy: automatic : $
上記の結果が "automatic" の場合は無効化されていないので、次の例を参考に無効化してください。
例
$ srvctl modify database -d <DB_NAME> -y manual
リソースの設定変更
Oracle Clusterware の起動(全てのノード)
Oracle Clusterware が起動していない場合は、全てのノードで起動してください。
参照
Oracle Clusterware の起動方法については、Oracle Database のマニュアルを参照してください。
Oracle リソースの設定変更(任意のノード)
userApplication Configuration Wizard を起動し、全てのノード上の Oracleリソースの設定を変更してください。以下の項目を全て、Out-of-place アップグレード後のパスに変更してください。
Oracle Clusterware リソース
Gridホーム(GridHome)
Oracle RAC インスタンスリソース
Oracleホーム(OracleHome)
Gridホーム(GridHome)
Oracle RAC リスナーリソース
Gridホーム(GridHome)
参照
Oracleリソースの設定変更手順については、“2.3.4 Oracle Clusterware リソースを含む userApplication の作成”、“2.3.5 Oracle RAC インスタンス、リスナーリソースを含む userApplication の作成”、“B.2 リソースの設定変更”を参照してください。
変更内容の確認(全てのノード)
Oracle RAC インスタンス、リスナーリソースの場合は、clorainfo コマンドで確認してください。
例
# /opt/FJSVclora/bin/clorainfo -c
Oracle Clusterware リソースの場合は、grep コマンドで設定ファイルを検索し確認してください。
例
# grep Clusterware /usr/opt/reliant/etc/hvgdconfig | grep GridHome Oracle1_Clusterware GridHome /u01/app/11.2.0.3/grid Oracle2_Clusterware GridHome /u01/app/11.2.0.3/grid #
RMS の起動(全てのノード)
全てのノードで RMS を起動してください。
userApplication の起動(全てのノード)
全てのノードで userApplication を起動・停止し、Online および Offline 状態になることを確認してください。
また userApplication の起動・停止に合わせて、Oracle Clusterware リソース、Oracle RAC インスタンスリソース、Oracle RACリスナーリソースが Online および Offline 状態になることを確認してください。
業務の再開
RMS、および userApplication の動作に問題なければ、業務を再開してください。