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PRIMECLUSTER  コンセプトガイド 4.4
FUJITSU Software

4.1.2 アプリケーションの切替え

RMSはオブジェクト指向に基づいて設計されています。仮想ディスク、ファイルシステムのマウントポイント、プロセスなどのあらゆるシステムコンポーネントが「オブジェクト」として認識されます。これらの「オブジェクト」は「RMSリソース」と呼ばれます。「RMSリソース」はオブジェクトタイプ (Object Type) と呼ばれる単位グループに分類され、オブジェクトタイプにはプロパティと呼ばれる属性 (Attribute) があり、この属性によりRMSリソースに対して実行/監視または異常発生時のリカバリ処理を限定または定義します。RMSリソースはディテクタと呼ばれるプログラムにより監視されます。このようにきわめて汎用化されたオブジェクト指向設計により、監視の種類やレベルに高度な柔軟性をもたらすことができます。

また、互いに依存関係にあるリソースをグループ化して論理的なグループを設定することができます。グループ内のRMSリソースに障害が発生すると、ユーザ業務全体が障害に対応することができます。

4.1.2.1 自動切替え

RMSリソースの障害が検出されると、ユーザが定義した処理が実行されます。多くの場合、障害に対する最大の対処法は切替処理です。

切替処理はフェイルオーバとも呼ばれ、最初にユーザ業務をOffline状態にしてから、RMSの制御により他のノード上でユーザ業務を再起動します。RMSでは、対称的な切替えの定義が可能です。たとえば、全てのRMSノードが他の任意のRMSノードからリソースを引継ぐことができるように設定することが可能です。これにより、ユーザ業務を実行中のノードに障害が発生すると、RMSは自動的にそのノードを停止して、ユーザ業務を稼動中の他のノードに切替えます。

自動切替えの詳細は、障害の発生時にRMSが起動するユーザ定義スクリプトおよび構成定義ファイル (usファイル) に定義されます。このファイルの作成には、RMSウィザードが使われます。

4.1.2.2 手動切替え

RMSで監視しているユーザ業務を手動切替えすることで、ハードウェアのメンテナンスなどを行うことができます。たとえば、2ノードのRMS構成では、1台のノードのメンテナンスを行う場合は、全てのユーザ業務を一時的にもう1台のノードに切替え、ノードのメンテナンスを行います。メンテナンス完了後、もう1台のノードに対するメンテナンスを行うために、ユーザ業務の切戻しを行います。なお、RMSの切替えを実行している間、ユーザ業務が提供するサービスが瞬間的に中断する可能性があります。また、全てのアプリケーションが1台のノード上で動作している間は、負荷が集中することにより、応答時間が低下する可能性があります。

4.1.2.3 IPエイリアス

RMSではIPエイリアスを使うことにより、IPアドレス切替えを可能としています。これにより、1つの物理ネットワークインタフェースに対して、複数のIPアドレス (IPエイリアス) を割当てることができます。このIPエイリアスを行うことで、RMSの切替えの結果、他のノードでユーザ業務を実行する場合にも、ユーザは同じIPアドレスで通信を続けることができます。この機構により、PRIMECLUSTERはIPアドレス引継ぎを可能とします。

4.1.2.4 データの整合性

RMSにより、ユーザ業務の切替えを実行する場合には、RMSは現在のノード上のユーザ業務に関連する全てのRMSリソースをOfflineにしてから、次にこれらのRMSリソースを新しく稼動させるノード上でOnlineにします。この手順を踏むことにより、複数ノードが同じ共有資源に対するアクセスの競合により、データが破損する危険を回避することができます。

複数の障害が同時に発生 (二重故障または三重故障) した場合には、RMSは切替え自体を禁止して競合によるデータの破損を防ぎます。そのため、特定の状況では切替えが全くできなくなるケースもありえます。

RMSでは高可用性を目標にしていますが、データが破損する恐れがある場合は高可用性よりもデータの整合性を優先します。