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PRIMECLUSTER  コンセプトガイド 4.4
FUJITSU Software

3.2.3 プロパティ

クラスタインタコネクトをどのように冗長化して使用するか、どのデバイスを使用するかといった設計では、以下の事項を検討する必要があります。

3.2.3.1 帯域幅

PRIMECLUSTER自体は多くの帯域幅を必要とはしていません。PRIMECLUSTERの各クラスタインタコネクトに必要な帯域幅は0.002Mbps未満です。
このため、以下の場合は、帯域に関する考慮は必要ありません。

帯域幅の使用例については、以下の表を参照してください。“図3.2 一般的な4ノードクラスタシステム”の構成では、クラスタインタコネクトに100Mbpsイーサネットが2つ構成されています。各クラスタインタコネクトが使用できる帯域幅は80Mbps、各ノード上のエンドユーザアプリケーションがクラスタファイルシステムおよびその他のアクティビティに使用する帯域幅は36Mbpsであるとします (これはあくまで使用例です。実際に使用する帯域幅はアプリケーションによって異なります)。

表3.1 2つの100Mbpsイーサネットボードによるクラスタインタコネクトの例

項目

帯域幅

合計帯域幅

100Mbps
イーサネット×2

80Mbps

160Mbps
(=2インタコネクト×80Mbps)

PRIMECLUSTER要件

0.002Mbps

0.016Mbps
(=4ノード×2インタコネクト×0.002Mbps)

ユーザ業務要件

36Mbps

144Mbps
(=36Mbps×4ノード)

     合計使用率 = (PRIMECLUSTER要件 + ユーザ業務要件) / 100Mbpsイーサネットの合計帯域幅 × 100
                = (0.016 + 144) / 160 × 100 = 90%

この例では、2つの高速イーサネットインタコネクトが帯域幅の90パーセント以上を使用していることになります。

注意

合計使用率が100パーセントに近いとクラスタインタコネクトの応答待ち時間が増加し、ハートビート切れを誤検出する可能性があるため、初期設定時には、30パーセント以上の余裕を残しておくような設計をすることを推奨します。

この例の構成と、それにかかる負荷状況から、1つの高速イーサネットインタコネクトを増設して余分な容量を確保することが推奨されます。以下の表は増設後の計算結果を示しています。

表3.2 3つの100Mbpsイーサネットボードによるクラスタインタコネクトの例

項目

帯域幅

合計帯域幅

100Mbps
イーサネット×3

80Mbps

240Mbps
(=3インタコネクト×80Mbps)

PRIMECLUSTER要件

0.002Mbps

0.024Mbps
(=4ノード×3インタコネクト×0.002Mbps)

ユーザ業務要件

36Mbps

144Mbps
(=36Mbps×4ノード)

     合計使用率 = (PRIMECLUSTER要件 + ユーザ業務要件) / 100Mbpsイーサネットの合計帯域幅 × 100
                = (0.024 + 144) / 240 × 100 = 60%

増設後の新しい構成では、帯域幅に40パーセントの余裕があり、30パーセント以上の余裕を確保するべきという推奨例を満たすことになります。本例では3重に冗長化されたクラスタインタコネクトを使用していますが、PRIMECLUSTERは最大4重のクラスタインタコネクトをサポートしています。

3.2.3.2 応答待ち時間 (レイテンシ)

前述してきたように、PRIMECLUSTERはハートビートの要求および応答により、ノードおよびその他のリソースが正常に動作しているかどうかを判断します。一定時間内にハートビートの応答がなければ、PRIMECLUSTERはリカバリ処理を開始します。各ノードのCluster Foundation (CF) は、各クラスタインタコネクト上で、クラスタシステムを構成する自分以外の全てのノードに、200 msごとにハートビートを送信します。タイムアウト(デフォルト 10秒)までに、ハートビートの要求を200 msに一度×50回試行しても、相手ノードからすべて応答がなければ、CFはそのノードをLEFTCLUSTER状態になったと判断します。

200 msはクラスタインタコネクトの応答待ち時間の上限として、サイズの小さいメッセージや応答を長距離伝送するのには十分な間隔として設計されています。この間隔は固定値であり変更することはできません。

3.2.3.3 信頼性

イーサネットをPRIMECLUSTERのクラスタインタコネクトとして使用する場合は何の問題もありません。PRIMECLUSTERの通信プロトコルはICFであり、ICFは送信先に正確かつ順序正しくメッセージ送信を行うことを保証します。ただし、ICFは信頼性の高い通信を重点において動作します。そのため、クラスタインタコネクトの信頼性が高い場合は、ICFのオーバーヘッドはほとんどありませんが、インタコネクトの信頼性が低い場合、ICFのオーバーヘッドが増加します。TCP/IPなどのプロトコルの場合と同様、インタコネクトにエラーが発生すると、メッセージの再送が行われます。

注意

  • メッセージの再送には帯域幅が浪費され、かつ、応答待ち時間の劣化も引き起こすため、再送が発生しないように信頼性の高いクラスタインタコネクトを使用することが重要になります。

  • イーサネットのエラー率が1/1,000,000バイトより多い場合、イーサネット層にて調査する必要があります (エラー率を調べるには、netstat(1)またはip(1) コマンドを使用します)。

3.2.3.4 デバイスインタフェース (Solaris)

PRIMECLUSTERはDLPI (Data Link Provider Interface) を使用します。デバイスがDLPIをサポートしていない場合は、PRIMECLUSTERはそのデバイスをクラスタインタコネクト対応のデバイスとして認識することができません。さらに付け加えると、インタコネクト対応デバイスとして認識されるためには、イーサネットデバイスとしてOSに認識されている必要があります。TCP/IPをサポートしていてもイーサネットでないデバイスもありますが、PRIMECLUSTERのクラスタインタコネクトに使用されるプロトコルはTCP/IPではなくイーサネットであることを認識しておいてください。

参照

詳細については、“PRIMECLUSTER ソフトウェア説明書 / インストールガイド”を参照してください。

3.2.3.5 セキュリティ

PRIMECLUSTER製品は、クラスタインタコネクトを専用のネットワークにすることを想定していますが、ICFは物理媒体上で動作する他のプロトコルと干渉しないため、業務LANを使用することは技術的には不可能ではありません。しかし、PRIMECLUSTERのセキュリティモデルはクラスタインタコネクトを構成するネットワークを、物理的に業務LAN他から切り離すことによって実現します。

注意

セキュリティ上の理由も含め、クラスタインタコネクトに業務LANを使用しないでください。

クラスタインタコネクトに業務LANを使用すると、PRIMECLUSTER製品がインストールされていれば、業務LAN上のどのマシンでもクラスタに参入することができてしまいます。これにより不正なユーザが参入してクラスタサービスにフルアクセスすることも可能となってしまうからです。