スナップショット型レプリケーションは、ETERNUS ディスクアレイの機能を用いて、複写元ボリュームから複写先ボリュームに複製を作成します。
OPCを利用した通常のスナップショット型レプリケーションは、以下のように処理が行われます。
swsrpmakeコマンドで複写元ボリュームから複写先ボリュームへのスナップショット処理(OPC)を起動して複製を作成します。
このコマンドは、複写元ボリュームのファイルシステムバッファーをフラッシュします。
これにより複写元データを確定させます。詳細は、「付録C レプリケーションの前後処理」で説明します。(図(1)~(2))
複製を再作成する場合は、再度、swsrpmakeコマンドを起動するだけです。以前のスナップショット処理中の場合は、動作中のスナップショット処理を停止して、新規のスナップショット処理を起動します。
図7.1 通常のスナップショット型レプリケーションの処理方法
スナップショット型レプリケーションは複製作成実行指示を行った時点で完了します。
ETERNUS ディスクアレイの内部では、スナップショット処理中に複製先のコピーが完了していない領域にアクセスしようとした時は、アクセスされた領域を優先的にコピーしたうえでアクセスを許可します(図(a))。
また、複製元のデータを更新しようとした時は、複製元の更新前データを先に複製先にコピーしてから複製元のデータが更新されます(図(b))。
これらの動作により、論理的に瞬時に複製作成が完了したように見えます。
スナップショット型レプリケーションには、使用するアドバンスト・コピー機能により、以下の種類があります。
通常のスナップショット型レプリケーション
ある時点(論理コピー)のデータをすべてコピー先ディスク領域にコピーします。
図7.2 通常のスナップショット型レプリケーション
ポイント
コピー先ディスク領域は、コピー元のディスク領域と同容量以上が必要です。
コピー時間は、全データのコピー時間です。
QuickOPC型レプリケーション
初回は、ある時点(論理コピー)のデータをすべてコピー先ディスク領域にコピーします。
2回目以降は、前回以降の更新分だけをコピーします。
図7.3 QuickOPC型レプリケーション
ポイント
コピー先ディスク領域は、コピー元のディスク領域と同容量以上が必要です。
2回目以降のコピー時間は、差分データのコピー時間です。
QuickOPC機能では、OPC論理コピーの完了後にコピー元/コピー先に発生した更新をハードウェアが記録しています。ハードウェアが更新箇所を記録している状態を「トラッキング状態」と言います。
注意
SDXオブジェクトを論理ボリューム単位にレプリケーションする場合は、QuickOPC機能を利用できません。
SnapOPC型レプリケーション
SnapOPC機能は、コピー元となるディスク領域に対し、ある時点(論理コピー)以降に更新されるデータだけをコピー先ディスク領域にコピーする機能です。
図7.4 SnapOPC型レプリケーション
ポイント
コピー先ディスク領域は、コピー元のディスク領域より少ない容量になります。
コピー時間は、更新されるデータのコピー時間です。
図7.5 SnapOPCの仕組み
SnapOPCは、複製先ボリューム容量の縮小、コピー時間の短縮という点で従来のOPCより優れている反面、アクセス性能、コピーデータの信頼性の点で問題があります。
SnapOPC中はコピー元からコピー先へのデータコピーが発生するため、コピー先のアクセス性能だけでなく、コピー元のアクセス性能も劣化する場合があります。
コピーデータは、「コピー元」+「コピー元の更新部分」で成り立つため、コピー元がハードウェア障害に陥った場合は、コピーデータが失われます。
また、リストアを行った場合、「コピー元」のデータが失われることと等価であることから、複数の「コピー元の更新部分」があったとしてもリストアを行った時点で無効となります。
上記の点から、SnapOPCは、アクセス性能を重視しないシステム向けのテープバックアップ用一時領域として使用されることを想定しています。
SnapOPC+型レプリケーション
SnapOPC+機能は、データの更新時に、更新されたデータの更新前データだけをコピーし、スナップ世代単位でデータを保存する機能です。
SnapOPC+機能の処理の流れを以下に示します。
図7.6 SnapOPC+機能の流れ
複製元から複製先へ論理コピーが行われます。
論理コピー後、SnapOPC+セッションが、複製元と複製先の間に設定されます。
SnapOPC+セッションの設定後、複製元で更新されたデータの更新前データだけを複製先へコピーします(コピー・オン・ライト処理)。
次の複製先ボリュームが作成されると、コピー・オン・ライト処理は停止されます。
そのあと、複製元ボリュームと新しい複製先ボリュームとの間にSnapOPC+セッションが設定され、コピー・オン・ライト処理が行われます。
複製先ボリュームが作成されるごとに、そのボリュームに対して、スナップ世代番号が割り当てられます。
(スナップ世代番号は、古いものから順に1から割り当てられます)
このように、SnapOPC+では、コピー・オン・ライト処理が、複製元ボリュームと最新の複製先ボリュームの間だけで行われるため、複製先ボリュームが複数に増えた場合でも、複製元ボリュームのアクセス性能に影響はありません。
複製先ボリュームに必要な容量は、直前に更新されたデータの更新前データ分とハードウェアの管理領域だけでよいため、SnapOPC+を利用すると、保存データ領域を必要最小限に抑えることができます。
このSnapOPC+を利用したスナップショット型レプリケーションを、SnapOPC+型レプリケーションと呼びます。
SnapOPC+による、複製元ボリューム(1)と複数のスナップ世代(N)の間で行われる、1対Nのレプリケーション運用について以下に示します。
図7.7 SnapOPC+による1対3のレプリケーション運用
SnapOPC+は、その仕組みや特性上、オペレーションミスやソフトウェアエラーといった、ソフト障害からの回復に備えたバックアップとして利用されることを想定しています。ハードウェア障害にも備える場合は、SnapOPC+と併用して、OPC/QuickOPC/EC/RECを利用して全データをコピーすることを推奨します。
SnapOPCとSnapOPC+の機能差一覧を以下に示します。
機能内容 | SnapOPC | SnapOPC+ |
---|---|---|
コピー方式 | コピー・オン・ライト方式 | コピー・オン・ライト方式 |
コピー時間 | 瞬時 | 瞬時 |
コピー先のボリュームの種類 | SDV(Snap Data Volume)、 | SDV(Snap Data Volume)、 |
1対Nの運用 | ○ | ◎ |
スナップ世代番号 | なし | あり |
レプリケーション機能を | ○ | ○(注) |
使用用途 |
|
|
注: レプリケーション機能を利用したリストアをサポートしているディスクアレイ装置に限ります。
参考
以下のETERNUS ディスクアレイでは、コピー先に利用できるボリュームの種類はSDVだけです。
ETERNUS DX S3 series (ファームウェア版数がV10L60より前の場合)
ETERNUS DX S2 series
ETERNUS DX60
ETERNUS DX400 series
ETERNUS DX8000 series
SnapOPC/SnapOPC+のコピー先ボリュームにおいて、ホストに見える容量を“論理容量”、物理的に構成された容量を“物理容量”と呼びます。
論理容量は、コピー元と等しい容量またはコピー元より大きい容量に設定してください。
物理容量は、バックアップデータを格納する容量と、バックアップデータを管理するための制御情報(変換テーブル)を格納する容量を合計した容量を用意してください。バックアップデータの格納に必要な容量は、swstestupdateコマンドを使用して、コピー元ボリュームへの更新量から見積もってください。制御情報の容量は、論理容量の0.1%としてください。
コピー先ボリュームの物理容量が不足すると、コピー先ボリュームへアクセスできなくなります。このため、運用時はコピー先ボリュームの物理容量が不足しないように、コピー先ボリュームの使用量を監視してください。
SnapOPC+のコピー先ボリュームにSDVを利用する場合は、SDP(Snap Data Pool)を設定することを推奨します。
参照
コピー先ボリュームの使用量の監視方法は、「7.2.3.3 コピー先ボリュームの使用量の監視」を参照してください。
コピー先ボリュームの物理容量が不足した場合は、「13.4.2.3 複製先ボリュームに物理容量不足が発生した場合の対処方法」を参照して、対処してください。
SDVをコピー先ボリュームとし、かつ、SDPを設定すると、SDVの物理容量が不足したときにSDPから自動的に領域が追加されます。なお、SDPの容量が不足すると、SDVの物理容量不足時と同様、コピー先ボリュームへアクセスできなくなります。
SDPの容量が不足した場合は、「13.4.2.3 複製先ボリュームに物理容量不足が発生した場合の対処方法」を参照して、対処してください。SDVとSDPの詳細は、ストレージ装置のマニュアルを参照してください。