RIP方式におけるルータ監視機能、およびNIC切替方式におけるHUB監視機能について説明します。
ルータ監視機能とは、近隣のルータ(1仮想インタフェース当たり2台まで登録可能)に対してpingを一定間隔で実行し、伝送路に異常を検出した場合、またはpingのハングアップを検出した場合にin.routedを再起動することにより伝送路の切替えを行う機能です。本機能は、RIP方式の場合のみ使用できます。
ポイント
ルータ監視機能を使用しない運用では、障害が発生した場合の切替えに約5分程度の時間を要しますが、ルータ監視機能を使用することにより、切替え時間は約1分程度に短縮することができます。
注意
同一ネットワーク内にルーティングデーモンが起動された別ノードが存在する場合、切替え時間を短縮することができない場合があります。
伝送路上の異常発生箇所によっては、切替え時間を短縮することができない場合があります。
RIP方式におけるルータ監視機能では、仮想インタフェースごとの監視先情報の設定、およびルータ監視の起動/停止は未サポートです。
本機能は、実行したpingが30秒間無反応になった場合、pingのハングアップとして検出します。pingのハングアップ検出は、Solaris10かつGLSのパッチ914233-10以降を適用している場合に有効になります。
ルータ監視機能の概要を図2.30 ルータ監視機能に示します。
運用開始時は1次監視先(以下の図のルータA)に対してping監視を行います。1次監視先に対して異常を検出した時に、ルーティングデーモンを再起動し、1次監視先への監視を中止し、2次監視先(以下の図のルータB)に対して監視を開始します。接続形態は、別ネットワーク間の接続のみが可能です。
トラフィック制御は、RIP情報に従い、単一の伝送路を使用します。
図2.30 ルータ監視機能
HUB監視機能とは、近隣のHUBに対してpingを一定間隔で実行し、伝送路に異常を検出した場合、またはpingのハングアップを検出した場合に使用するインタフェースを切替える機能です。1つの仮想インタフェースにつき2台まで登録が可能です。本機能は、NIC切替方式の場合のみ使用できます。
ポイント
NIC切替方式におけるHUB監視機能は、仮想インタフェースごとに監視先情報の設定、および監視の起動/停止が可能です。
また、HUB-HUB間の伝送路監視を行うことも可能です。(HUB-HUB間監視機能)
HUB-HUB間監視を行うことにより、HUB-HUB間の伝送路異常を検出することができます。
インタフェースの切替え事象が発生した場合、HUB-HUB間の伝送路が異常な状態では通信不可能となりますが、これを未然に防ぐことができます。
注意
本機能は、実行したpingが30秒間無反応になった場合、pingのハングアップとして検出します。pingのハングアップ検出は、Solaris10かつGLSのパッチ914233-10以降を適用している場合に有効になります。
参考
待機パトロール機能を使用する場合、待機パトロール機能がHUB-HUB間監視を兼ね備えているため、HUB-HUB間監視機能は未使用でも構いません。待機パトロール機能については、“2.2.9 待機パトロール機能”を参照してください。
HUB監視機能の概要を図2.31 HUB監視機能に示します。
図2.31 HUB監視機能
ポイント
接続するHUBにIPアドレスが設定できない場合には、監視先としてルータや他ホストを設定することができます。
ただし、このような場合には、監視先が停止した場合にping監視に失敗し切替えが発生する場合があるため、監視先を2つ設定し、かつ、HUB-HUB間監視を有効にしてください。
これにより、設定した監視先の一方が停止した場合でも、他の監視先が動作していれば不要な切替は発生しなくなります。
注意
HUB-HUB監視機能の設定方法については、“7.7 hanetpollコマンド”を参照してください。
使用するHUBが1台の場合、監視先の設定は1つのみで設定することができますが、監視先であるHUBが故障した場合、冗長化しているすべての伝送路が使用できなくなるため、HUBが1台での運用は推奨しません。
HUB-HUB間監視機能を使用しない運用では、はじめにプライマリHUB(図2.32 HUB-HUB間監視なしのスイッチ/HUB1)に対してping監視を行い、プライマリHUBに対して異常を検出した場合に、現運用系のNICを非活性化し、現待機系NICを活性化します。現待機系NICが活性化された後はセカンダリHUB(図2.32 HUB-HUB間監視なしのスイッチ/HUB2)に対してping監視を行います。
図2.32 HUB-HUB間監視なし
HUB-HUB間監視機能を使用する運用では、はじめにセカンダリHUB(図2.33 HUB-HUB間監視あり(セカンダリ監視異常時)のスイッチ/HUB2)に対してping監視を行います。
セカンダリHUBに対して異常を検出した場合、セカンダリHUBへの監視に加え、プライマリHUB(図2.33 HUB-HUB間監視あり(セカンダリ監視異常時)のスイッチ/HUB1)への監視を開始します。(この時、セカンダリHUBへの監視が失敗した旨のメッセージ(873番)が出力されますので、原因を調査してください。)
プライマリHUBへの監視を開始した後は、セカンダリHUBとプライマリHUBの両方に対して交互に監視を行います。セカンダリHUBへの監視は復旧監視であり、セカンダリHUBの復旧が検出された時点でプライマリHUBへの監視を停止します。
セカンダリHUBとプライマリHUBの両方に対する一定間隔(デフォルトは5秒)の監視が一定回数(デフォルトは5回)連続で失敗した場合は、伝送路異常と判断します。なお、セカンダリHUBに異常があったことはメッセージ(873番)により通知されるため、プライマリHUBでの切替え事象が発生する前にセカンダリHUBの復旧を行うことが可能です。
図2.33 HUB-HUB間監視あり(セカンダリ監視異常時)
図2.34 HUB-HUB間監視あり(プライマリ監視異常時)
NIC切替方式におけるHUB監視機能では、仮想インタフェースごとに、伝送路監視の起動/停止、監視回数、監視間隔、ネットワーク異常時のクラスタ間フェイルオーバが設定できます。これにより、以下のように設定できます。
図2.35 仮想インタフェースごとの監視
監視間隔および監視回数を変更する場合
pingの監視先を設定した後、hanetpoll onコマンドでパラメタを設定します。なお、オプションが指定されなかったパラメタは、共通の監視情報(Standard Polling Parameter)の値が設定されます。以下の例は、sha1に監視間隔(-s)と監視回数(-c)を設定しています。
/opt/FJSVhanet/usr/sbin/hanetpoll on -n sha1 -s 2 -c 3 |
個別パラメタを確認します。
# /opt/FJSVhanet/usr/sbin/hanetpoll print [ Standard Polling Parameter ] interval(idle) = 5( 60) sec times = 5 times max_retry = 5 retry repair_time = 5 sec failover mode = YES [ Polling Parameter of each interface ] Name Hostname/Polling Parameter +-------+---------------------------------------------------------------+ sha0 192.13.80.251,192.13.80.252 hub-hub poll = OFF interval(idle) = 5( 60) sec times = 5 times max_retry = 5 retry repair_time = 5 sec failover mode = YES Name Hostname/Polling Parameter +-------+---------------------------------------------------------------+ sha1 192.13.81.251,192.13.81.252 hub-hub poll = OFF interval(idle) = 2( 60) sec times = 3 times max_retry = 5 retry repair_time = 5 sec failover mode = YES |
HUB監視故障時のフェイルオーバを抑止する場合
pingの監視先を設定した後、hanetpoll onコマンドでパラメタを設定します。なお、オプションが指定されなかったパラメタは、共通の監視情報(Standard Polling Parameter)の値が設定されます。以下の例では、監視間隔(-s)、監視回数(-c)などが指定されていないため、共通の監視情報の値が設定されます。
/opt/FJSVhanet/usr/sbin/hanetpoll on -n sha0 -f no |
個別パラメタを確認します。
# /opt/FJSVhanet/usr/sbin/hanetpoll print [ Standard Polling Parameter ] interval(idle) = 5( 60) sec times = 5 times max_retry = 5 retry repair_time = 5 sec failover mode = YES [ Polling Parameter of each interface ] Name Hostname/Polling Parameter +-------+---------------------------------------------------------------+ sha0 192.13.80.251,192.13.80.252 hub-hub poll = OFF interval(idle) = 5( 60) sec times = 5 times max_retry = 5 retry repair_time = 5 sec failover mode = NO Name Hostname/Polling Parameter +-------+---------------------------------------------------------------+ sha1 192.13.81.251,192.13.81.252 hub-hub poll = OFF interval(idle) = 2( 60) sec times = 3 times max_retry = 5 retry repair_time = 5 sec failover mode = YES |
個別設定した仮想インタフェースのパラメタを元に戻す場合
個別に設定した仮想インタフェースのパラメタを元に戻す場合は、hanetpoll onコマンドを実行します。以下の例は、仮想インタフェースsha0に設定したパラメタを元に戻しています。
/opt/FJSVhanet/usr/sbin/hanetpoll on -n sha0 -d |
個別パラメタが削除されたことを確認します。
# /opt/FJSVhanet/usr/sbin/hanetpoll print [ Standard Polling Parameter ] interval(idle) = 5( 60) sec times = 5 times max_retry = 5 retry repair_time = 5 sec failover mode = YES [ Polling Parameter of each interface ] Name Hostname/Polling Parameter +-------+---------------------------------------------------------------+ sha0 192.13.80.251,192.13.80.252 hub-hub poll = OFF interval(idle) = 5( 60) sec times = 5 times max_retry = 5 retry repair_time = 5 sec failover mode = YES Name Hostname/Polling Parameter +-------+---------------------------------------------------------------+ sha1 192.13.81.251,192.13.81.252 hub-hub poll = OFF interval(idle) = 2( 60) sec times = 3 times max_retry = 5 retry repair_time = 5 sec failover mode = YES |
参照
仮想インタフェースごとの監視先設定方法については、“7.7 hanetpollコマンド”を参照してください。
NIC共有の設定をしている場合は、フェイルオーバのパラメタだけを仮想インタフェース単位で設定できます。その他のパラメタは、最初に定義した仮想インタフェースのパラメタの値で動作します。