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ETERNUS SF Storage Cruiser 16.2 運用ガイド
FUJITSU Storage

9.2 動作概要

本節では、Storage Cluster機能に必要な、以下の操作および概念について説明します。

TFOV

TFOVとは、フェイルオーバの対象となるボリュームです。

Primary/Secondaryストレージの両方に作成されたTFOVのうち、それぞれのHLU番号と容量が一致するTFOV同士が、データの同期対象ボリュームになります。また、データの同期と併せて、Secondaryストレージのボリューム情報が、「表9.1 データ同期前後のSecondaryストレージのボリューム情報の変化」のとおりに変更されます。

表9.1 データ同期前後のSecondaryストレージのボリューム情報の変化

変更されるボリューム情報

データ同期前

データ同期後

UID

Secondaryストレージのボリューム独自のUID

ペアとなるPrimaryストレージのボリュームのUID

Product ID

Secondaryストレージ独自のProduct ID

ペアとなるPrimaryストレージのProduct ID

注意

Secondaryストレージのボリュームは、データ同期後にTFOグループ削除などの操作により同期対象ボリュームから外れても、データ同期後のボリューム情報が引き継がれます。そのため、Secondaryストレージのボリュームを継続して利用する場合は、ETERNUS CLIを利用してボリューム情報をデータ同期前の状態に戻してください。

利用するETERNUS CLIのコマンド名や書式は、ETERNUS ディスクアレイ付属のマニュアルを参照してください。

RECパス

TFOVのデータは、RECパスを使用して同期モードで転送します。

ETERNUS ディスクアレイは、Storage Cluster機能で使用するコピーセッションとアドバンスト・コピーのセッションを別に管理しています。ETERNUS ディスクアレイが自動的にStorage Cluster機能で使用するコピーセッションを制御するため、本製品でのコピーセッションおよびコピーグループの設定は不要です。

ポイント

REC経路のテンポラリ故障(通信途絶)が発生した場合は、REC経路が復旧すると差分コピーが行われて、自動的にデータが等価状態に戻ります。REC経路が復旧するまでの間はフェイルオーバされないので、REC経路の二重化を推奨します。

Failoverモード

Failoverモードとは、PrimaryストレージからSecondaryストレージへフェイルオーバする方法に関するモードです。以下のどちらかを指定できます。

モード

説明

Auto
(デフォルト値)

Primaryストレージの障害を検知したときに、自動的にフェイルオーバするモードです。
業務を停止せず、継続して業務が行えます。
本モードで運用する場合は、Storage Clusterコントローラーが必要です。なお、本モードを設定した場合でも、Webコンソールから手動でフェイルオーバできます。

Manual

手動でフェイルオーバするモードです。
本モードで運用する場合は、Storage Clusterコントローラーが不要です。

注意

RECパスのインターフェースタイプが"iSCSI"の場合は、"Manual"を指定してください。

Failbackモード

SecondaryストレージからPrimaryストレージへフェイルバックする方法に関するモードです。以下のどちらかを指定できます。

モード

説明

Auto

Primaryストレージの障害の復旧を検知したときに、自動的にフェイルバックするモードです。

Manual
(デフォルト値)

手動でフェイルバックするモードです。
Webコンソールからの操作で、任意のタイミングにフェイルバックできます。

スプリットモード

スプリットモードは、REC経路が切断された際のPrimaryストレージのボリュームに対して、業務の継続を優先し書込みを継続するか、またはPrimaryストレージとSecondaryストレージのデータの等価状態を保証するかを指定します。
以下のどちらかを指定します。

TFOグループ

TFOグループとは、1つの装置上でのフェイルオーバの動作単位であり、フェイルオーバするための接続構成、ポリシー、状態、および保守を一元管理するグループです。TFOグループは、1つ以上のCAポートと、そのCAポートにアクセスが許可されたボリュームを含みます。TFOグループの例は、「図9.2 TFOグループ例」のとおりです。

図9.2 TFOグループ例

TFOグループは、以下のTFOステータスを持ちます。フェイルオーバまたはフェイルバックを実行することにより、TFOステータスが変わります。

ポイント

TFOグループ名の入力条件は、以下のとおりです。

  • 1~16文字の、半角英数字「A~Z、a~z、0~9」および特殊文字です。ただし、「, ? " ' \ * %」は使用できません。

表9.2 TFOステータス

TFOステータス

意味

Active

運用側を意味します。管理対象サーバからアクセス可能な状態です。

Standby

待機側を意味します。管理対象サーバからアクセス不可能な状態です。

なお、環境構築時の初期のTFOステータスがActiveのTFOグループを“Primary TFOグループ”と呼び、StandbyのTFOグループを“Secondary TFOグループ”と呼びます。

CAポートのペア化

Storage Cluster機能は、WWPN/WWNNを2台のETERNUS ディスクアレイのCAポートで共有して、各CAポートのLink状態を制御してフェイルオーバを実現します。

TFOグループに含まれるCAポートは、別のTFOグループに含まれるCAポートと、1つのWWPN/WWNNを筐体間で共有します。この共有を行う操作を“CAポートのペア化”と呼びます。また、WWPN/WWNNを共有したCAポートの1組を“CAポートペア”と呼びます。

CAポートのペア化を行うことで、SecondaryストレージのCAポートに論理WWPN/WWNNとして、PrimaryストレージのCAポートのWWPN/WWNNが設定され、SecondaryストレージのCAポートがLinkdownします。

CAポートペアのイメージは、「図9.3 CAポートペア例」のとおりです。

図9.3 CAポートペア例

自動Failover

自動Failoverとは、Primary TFOグループがあるETERNUS ディスクアレイの障害を検知したときに、Secondary TFOグループが自動的にActiveになる機能です。

自動Failoverを行うには、管理LANで接続されたStorage Clusterコントローラーが必要です。また、RECパスのインターフェースタイプは"FC"である必要があります。

StorageA(Primaryストレージ)とStorageB(Secondaryストレージ)で運用している場合に、StorageAがダウンして、StorageBにフェイルオーバする動作イメージは、「図9.4 自動Failoverの動作」のとおりです。

図9.4 自動Failoverの動作

各CAポートのLink状態の切替えに合わせて、自動的にTFOグループの状態も切り替えられ、Secondary TFOグループのボリュームへのアクセスが可能になります。

自動Failback

自動Failbackとは、Primary TFOグループがあるETERNUS ディスクアレイの障害からの復旧を検知したときに、Primary TFOグループが自動的にActiveになる機能です。

Storage Cluster環境の解体

装置交換が必要な故障が発生してETERNUS ディスクアレイを入れ替える場合などは、一旦、Storage Cluster環境を解体します。

TFOグループを削除することで、構築したStorage Clusterの環境を解体します。

また、TFOグループを削除するときは、SecondaryストレージのCAポートのWWPN/WWNNの扱いについて、以下のどちらかを選択できます。

  1. SecondaryストレージのCAポートを本来のWWPN/WWNNに戻す

  2. SecondaryストレージのCAポートを本来のWWPN/WWNNに戻さずに、論理WWPN/WWNNを継続して利用

手順aを選択した場合は、PrimaryストレージのCAポートのWWPN/WWNNとは競合しません。
手順bを選択した場合は、管理対象サーバからSecondaryストレージへのアクセスが可能なまま、Primaryストレージとして運用していた装置を交換できます。

注意

PrimaryストレージのCAポートとSecondaryストレージのCAポートの両方がActiveになると、WWPN/WWNN競合してデータ破壊などが発生する可能性があります。そのため、手順bを選択する場合は、以下を遵守してください。

  • PrimaryストレージのCAポートがSANから物理的に切断されていることを確認してから、TFOグループを削除すること

  • Primary TFOグループを削除したETERNUS ディスクアレイを、SANに接続しないこと

Primary/SecondaryストレージのCAのLink状態制御

CAポートのペア化やフェイルオーバにより、CAポートのWWPN/WWNNの値およびLink状態が推移します。Link状態がLinkupの装置に対して、管理対象サーバからアクセスが可能です。

CAポートのペア化やフェイルオーバ/フェイルバックの動作時の、それぞれのCAポートのLink状態の遷移を「表9.3 CAポートのLink状態の遷移」に示します。

表9.3 CAポートのLink状態の遷移

Primaryストレージ

タイミング

Secondaryストレージ

WWPN/WWNN

Link状態

Link状態

WWPN/WWNN

Primaryストレージ側のWWPN/WWNN

Linkup

CAポートのペア化前

Linkup

Secondaryストレージ側のWWPN/WWNN

CAポートのペア化後

Linkdown

Primaryストレージ側のWWPN/WWNN

Linkdown

Primaryストレージが停止

フェイルオーバ実施中

フェイルオーバ完了後

Linkup

Primaryストレージ復旧

フェイルバック起動

フェイルバック実施中

Linkdown

Linkup

フェイルバック完了後

Storage Cluster解体
(注)

Linkup

Secondaryストレージ側のWWPN/WWNN

注: SecondaryストレージのCAポートのWWPN/WWNNを元に戻す場合

Storage Clusterコントローラー

自動Failoverを行うには、管理LANで接続されたStorage Clusterコントローラーが必要です。

2台のETERNUS ディスクアレイ間では、RECパスを利用して生存確認を実施します。RECパスが断線した場合、2台のETERNUS ディスクアレイが動作中にもかかわらず、誤判断で切り替える可能性があります。この誤判断を防ぐには、Primary/Secondaryストレージの両方のETERNUS ディスクアレイのそれぞれに管理LANで通信するStorage Clusterコントローラーを設置します。

Primary/Secondaryストレージの両方のETERNUS ディスクアレイとStorage Clusterコントローラー間の構成例は、「図9.5 Storage Clusterコントローラーを介した生存確認の構成例」のとおりです。この構成例で、通信と装置の状態と、自動Failoverを実行する契機は、「表9.4 自動Failoverが動作する契機」のとおりです。

図9.5 Storage Clusterコントローラーを介した生存確認の構成例

表9.4 自動Failoverが動作する契機

No.

通信状態

装置状態

(1)

(2)

(3)

Primary
ストレージ

Secondary
ストレージ

自動Failoverが動作する契機と状態遷移

1

生存

生存

なし

2

×

3

×

4

×

5

×

×

ダウン

あり

Primaryストレージ: Active → Standby
Secondaryストレージ: Standby → Active

6

×

×

生存

ダウン

なし

7

×

×

生存

8

×

×

×

ダウン

ダウン

なし(全閉塞)

○: 通信可能状態
×: 通信不可能状態

注意

以下の場合は、自動Failoverが動作しません。

  • 「PrimaryストレージとStorage Clusterコントローラー間の経路(2)」が故障してから10秒経過したあとに、「PrimaryストレージとSecondaryストレージ間の経路(1)」が故障した

  • 「PrimaryストレージとSecondaryストレージ間の経路(1)」が故障してから3秒経過したあとに、「PrimaryストレージとStorage Clusterコントローラー間の経路(2)」が故障した

Storage Clusterコントローラーの配置

Storage Clusterコントローラーと監視対象の各ETERNUS ディスクアレイは、相互に監視を行います。そのため、Storage Clusterコントローラーと監視対象のETERNUS ディスクアレイが同じ建屋内に配置された場合、以下の問題が発生する可能性があります。

  • 建屋が被災した場合、すべての経路が閉塞し、フェイルオーバできなくなる

上記の問題の発生を防止するため、Storage Clusterコントローラーと監視対象の各ETERNUS ディスクアレイの建屋を分離して配置することを推奨します。配置例は「図9.6 Storage Clusterコントローラーと監視対象のETERNUS ディスクアレイの配置例」のとおりです。

なお、Storage Clusterコントローラーは、運用管理サーバと同じサーバ上に配置することも可能です。

図9.6 Storage Clusterコントローラーと監視対象のETERNUS ディスクアレイの配置例