ETERNUS SF Storage Cruiser ユーザーズガイド 仮想ストレージ管理編 13.2 - Solaris (TM) Operating System / Linux / Microsoft(R) Windows(R) -
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第2章 運用設計

2.1 仮想ディスクの構成資源

仮想ディスクを作成して利用するために必要な、仮想ストレージ機能の資源について説明します。

[仮想ディスクの資源関係]

2.1.1 仮想ストレージプール 

仮想ストレージプールは、仮想ディスクを作成するために必要な資源(実ディスク)を集める器の役目をします。また、仮想ストレージプールを設けることにより、仮想化の世界に配置する実ディスクと仮想化しないで従来どおりの運用を行う実ディスクを明確に分離することができます。

仮想ストレージプールは、仮想ストレージ運用における最も重要な構成要素になります。

VSCでは、仮想ストレージプールの制御範囲を、仮想化スイッチ単位で決定しています。そのため、仮想ストレージプールを作成する際は、仮想ストレージプールと、それを管理する仮想化スイッチの関係を明確にする必要があります。

また、仮想ストレージプールを制御する仮想化スイッチは、必ず冗長構成でなければなりません。

[仮想ストレージプールの制御範囲]

仮想ディスクは、仮想ストレージプールに登録された実ディスクから作成します。そのため、仮想ストレージプールを作成する場合は、任意の目的単位で作成することを推奨いたします。任意の目的単位とは、以下のような例が挙げられます。

不要になった仮想ストレージプールは、削除することができますが、仮想ストレージプール内に実ディスクが登録されている場合は、削除することができません。仮想ストレージプールから全ての実ディスクを解放してから削除してください。

2.1.2 実ディスク 

実ディスクとは、ディスク装置から割当てられた論理ユニット(LUN)のことです。実ディスクは、実際にデータを格納する記憶媒体であり、仮想ディスクを構成する要素です。

実ディスクは、任意の仮想ストレージプールに登録する必要があります。

仮想ストレージプールに実ディスクを登録する際は、業務サーバが他の目的で利用していないか確認した上で行ってください。いったん、仮想ストレージプールに登録した実ディスクは、仮想ディスク以外の目的で利用することはできません。

登録対象の実ディスクが、複数のチャネルアダプタ(CA)からアクセスできる場合は、アクセスできる全てのチャネルアダプタ(CA)に付けられているWWPNと、業務サーバが認識できる論理ユニット番号(ホストLUN)の情報が必要になります。

[実ディスクの登録情報]

上の図にあるディスク装置の場合、2つのCAから実ディスクがアクセスできる構成となっています。そのため、1個の実ディスクを登録する際には、2つのCA(WWPN)情報と対応するホストLUNの情報が必要になります。

不要になった実ディスクは、仮想ストレージプールから解放することができますが、実ディスクが仮想ディスクの構成要素となっている場合は、仮想ストレージプールから解放することができません。仮想ストレージプールから解放された実ディスクは、従来どおり業務サーバが直接接続して利用することが可能です。

2.1.3 仮想筐体 

仮想ディスクを構成していない実ディスクは、ETERNUS6000やETERNUS3000などの物理的な筐体によって囲われています。これと同様に、仮想ディスクも論理的な集団で束ねられる枠を設けることで、仮想ディスク運用が円滑にできます。

仮想筐体とは、仮想ディスクを束ねる論理的な枠のことです。

仮想筐体には、異なる仮想ストレージプールから作成した仮想ディスクを登録することができます。

また、仮想筐体は、システムの運用目的に応じて複数作成することができます。

仮想ストレージプールを複数に分ける目的の単位は、資源(実ディスク)の性格を分類してまとめる意味が強いのに対し、仮想筐体を分ける目的の単位は、業務を分類してまとめるイメージになります。

[仮想筐体の分類イメージ]

仮想筐体を作成する際は、格納対象の仮想ディスクを制御する仮想化スイッチの情報が必要になります。仮想ディスクに対してマルチパス構成を組む必要がある場合は、パス数に応じた個数分の仮想化スイッチ名を指定してください。

不要になった仮想筐体は削除することができますが、仮想ターゲットが登録されている場合は、削除することができません。仮想ディスクおよび仮想ターゲットを削除した後に、仮想筐体を削除してください。

2.1.4 仮想ターゲット 

FCインタフェースでディスク装置と業務サーバ間を接続する場合は、WWPNを使用して相互間を連結しなければなりません。仮想ディスクは、複数のディスク装置から構成される可能性があるので、ディスク装置のCAが保持している実際のWWPNを利用することができません。

そのため、VSCでは、CAが保持しているWWPNに相当する仮想ターゲットを利用して、仮想ディスクと業務サーバを接続することになります。

仮想ターゲットは、ディスク装置のWWPNとは隔離された情報であるため、いったん仮想ターゲットで仮想ディスクと業務サーバを接続した後は、新しいディスク装置を増設した場合でも、業務サーバがその影響を受けることはありません。仮想ターゲットを削除しない限り、同じ仮想ターゲットを利用して仮想ディスク運用を続行することができます。

仮想ターゲットは、仮想筐体に付属し、仮想ディスクへのアクセスパスとして使用します。

仮想ターゲットの実態はWWPNですが、作成する際はWWPNが持っている複雑な数字の羅列を指定する必要はありません。管理しやすい任意の名前を指定してください。VSCが、FCプロトコルに準じたWWPNを自動的に作成し仮想ターゲット名と共に管理します。

業務サーバが仮想ディスクを接続する際に必要な情報は、仮想ターゲット名にVSCが割り振ったWWPNです。

仮想ターゲットを作成する際は、仮想ターゲットを登録する仮想筐体名と、仮想ターゲットとアクセスパスを連結させる仮想化スイッチ名の情報が必要になります。この時に指定する仮想化スイッチ名は、事前に仮想筐体に登録してある仮想化スイッチ名となります。

1つの仮想ターゲットが、複数のアクセスパスを保持することはできませんので、指定する仮想化スイッチ名も必ず1個になります。そのため、仮想ディスクにマルチパス構成を組む場合は、仮想ターゲットも複数必要になることに注意してください。

[仮想ターゲットと各資源の関係]

不要になった仮想ターゲットは削除することができますが、仮想ディスクが付属している場合は、削除することができません。仮想ディスクを仮想ターゲットから取り外した後に、仮想ターゲットを削除してください。

1つの仮想ターゲットに対するI_T_L nexus(LUNへのパス)は256であるため、複数のホストを1つの仮想ターゲットに割り当てると、I_T_L nexusの不足により一方のホストがログインに失敗することがあります。複数ホストを利用する場合、ホスト毎に仮想ターゲットを割り当てることを推奨します。

2.1.5 仮想ディスク 

仮想ディスクは、実ディスクが持つ物理的な属性や情報にとらわれない論理的なボリュームです。つまり、実ディスクの容量や装置種類を利用者が意識する必要なく、業務サーバに割当てたい容量のディスクをいつでも作成することができます。

仮想ディスクを業務サーバに接続する際には、何ら特別な作業は必要ありません。従来と変わらず、実ディスクを業務サーバに接続する際と同じ手順で接続することができます。

ディスク装置から実ディスク(論理ユニット)を作成する手順と同様に、仮想ディスクは仮想ストレージプール内に登録された実ディスクから作成します。複数の仮想ストレージプールをまたがって仮想ディスクを作成することはできません。

仮想ディスクを作成する方法には、仮想ディスクを構成する実ディスクの選択をVSCが自動的に行う方法と、利用者が実ディスクを選択する方法の2つがあります。

■実ディスクの自動選択

VSCが自動的に実ディスクを選択する方法を利用する場合、仮想ストレージプール名と仮想ディスクの容量を指定します。この時、VSCは指定された仮想ストレージプール内から要求量に見合った最適な実ディスクを選択し、仮想ディスクを作成します。

[実ディスクの自動選択]

■実ディスク指定

実ディスクを指定して作成する場合は、仮想ストレージプール名と実ディスク名および仮想ディスクの容量を指定します。

この時、VSCは指定された仮想ストレージプール内に対象の実ディスクが存在しているか確認し、さらに要求量に見合った空きスペースが存在していることを確認した後、仮想ディスクを作成します。なお、指定できる実ディスクの数は1個だけですので実ディスクの容量を超えたサイズの仮想ディスクを作成することはできません。

[実ディスクの指定]

実ディスクから仮想ディスク用の実領域を割り当てる時は、一つのエクステント範囲とするために物理的に連続した領域で作成することを目指します。要求量の連続領域が確保できない場合は、複数のエクステントに分割して仮想ディスクを作成します。

不要になった仮想ディスクは削除することができます。

仮想ディスクが使用していた物理的なスペースは未使用スペースとなり、以降に実行される仮想ディスク作成のためのスペースとして利用されます。

解放するスペースの前あるいは後ろに未使用スペースが存在していた場合、VSCはこれらをまとめて一つのエクステントとして未使用スペースを管理します。

VSCが1個の仮想ディスクに対して制御できるエクステントの最大数に制限があることに注意してください。システム運用が進み、さまざまな容量の仮想ディスクの作成/削除がくりかえされ空き容量が断片化された状況では、仮想ストレージプールの全体的なスペース量としては充分な空きスペースが存在するにも関わらず、要求量の仮想ディスクが作成できない事態が予想されます。その際は、仮想ストレージプールに対して新しい実ディスクを登録して空き容量が断片化されないようなスペース状況を作り出してください。

[仮想ディスクの許容エクステント]

仮想ディスクのアクセス中にエラーが発生した場合、業務サーバには通常の入出力エラーとして返されるので、仮想ディスクのアクセスに関して特別な考慮は必要ありません。

仮想ディスクは、複数の実ディスクやディスク装置を横断して作成することができますが、仮想ディスクの信頼性は、それらの物理的な装置の信頼性に依存しているので、同一の装置タイプやRAIDグループの実ディスクから作成することを推奨します。

非暗号、暗号の実ディスクを混在して作成した仮想ディスクの暗号化属性は「非暗号」になります。


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