ファイアウォール機能 管理者ガイド
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第2章 機能> 2.3 暗号通信機能(Solaris版/Windows版)

2.3.2 IP セキュリティ通信

IP セキュリティ通信とは、IP セキュリティプロトコルをサポートしているサーバがそのプロトコルに従ってパケットを暗号化して通信する機能です。

以下に、IP セキュリティ通信の概要を示します。

[図:IP セキュリティ通信の概要]

備考

暗号化するしないの判断基準となる条件は、IP フィルタ機能のパケットフィルタリング条件で設定します。

IP セキュリティ通信では、以下の通信機能を提供しています。

以下に、それぞれの機能について説明します。

◆暗号化機

IP セキュリティ通信の暗号化機能は、IP セキュリティプロトコルに従って条件に一致したパケットを暗号化する機能です。IPセキュリティプロトコルに従い、暗号化および復号を制御するゲートウェイを "IP セキュリティゲートウェイ"といいます。

IP セキュリティゲートウェイでは、設定した条件に従って暗号化するパケットを判断します。内部ネットワークのホストが送信したインターネットなどの外部ネットワークに転送するパケットが暗号化する条件に一致している場合、IP セキュリティドライバを利用してパケットを暗号化し、ESP ヘッダ付きのパケットとして外部ネットワークに送信します。送信されたパケットは、送信先の IP セキュリティゲートウェイで復号されます。送信先の IP セキュリティゲートウェイで復号されるまでの間は、暗号化されたパケットがネットワーク上を流れます。

◆復号機

復号機能は、IP セキュリティゲートウェイで暗号通信条件を元に暗号化されたパケットを復号して、内部ネットワークに送出する機能です。

暗号化する条件に従って、IP セキュリティゲートウェイでインターネットなどの外部ネットワークから送られてくるパケットを復号します。復号が終了すると、送信先の内部ネットワークのホストへ転送します。

◆メッセージ認証機

IP セキュリティ通信では、送信するデータがネットワーク上で変更(改ざん)されていないかどうかをチェックします。 データが変更されている場合は、ロギング情報を採取し、受信データを破棄します。

◆鍵管理機

暗号化および復号を行うそれぞれの暗号ゲートウェイで暗号鍵を共有して管理する機能です。暗号鍵は、暗号化および復号のどちらの場合にも利用します(暗号鍵がないと暗号化/復号できません)。

暗号鍵は、暗号鍵を共有する相手ゲートウェイごとに定義することができます。

■IP セキュリティプロトコ

IP セキュリティプロトコルとは、Internet Engineering Task Force( IETF )の IP Security Working Group ( IPsec WG )で仕様が検討されているインターネット標準プロトコルです。

IP セキュリティプロトコルでは、IP 上の暗号化、メッセージ認証機能が提供されます。送信されたパケットは、IP セキュリティプロトコルによって、ESP、AH ヘッダを付加されて転送されます。

◆オプションヘッダ( ESP / AH

IP セキュリティプロトコルがサポートするオプションヘッダには、ESP (Encapsulating Security Payload )とAH( Authentication Header )があります。ESP では、暗号化およびメッセージ認証機能を提供しています。AH ヘッダでは、メッセージ認証のみを提供しています。したがって、暗号化が必要な場合は、ESP ヘッダを利用します。

◆セキュリティ・アソシエーション ( SA

SA ( Security Association )により、暗号鍵などのセキュリティ情報を管理します。

◆セキュリティ・パラメタ・インデックス( SPI

SPI( Security Parameter Index )により、送信先 IPアドレス、およびプロトコル( AH または ESP )によってSAを一意に識別できます。

■IP セキュリティゲートウェイと IKE ゲートウェ

IP セキュリティプロトコルには、手動鍵設定と自動鍵交換があります。IP セキュリティゲートウェイでは、この2種類の認証方法のうち、あらかじめ環境設定で指定されたどちらかの認証方法を利用して暗号通信を行います。

本製品 では、IPセキュリティゲートウェイのうち、手動鍵設定機能を制御するゲートウェイを "IP セキュリティゲートウェイ"、自動鍵交換機能を制御するゲートウェイを "IKE ゲートウェイ"といいます。

◆手動鍵設定(IP セキュリティゲートウェイ

手動鍵設定は、通信暗号化で使用するセション鍵を環境設定時に直接設定する方式です。この方式は、通信する二者が同じ鍵値を環境設定で入力する必要があります。

◆自動鍵交換( IKE ゲートウェイ

自動鍵交換機能は、鍵交換プロトコルである IKE( Internet Key Exchange )プロトコルによって、セション鍵が自動生成/更新されるため、セション鍵を環境設定で入力する手動鍵設定と比較して以下の利点があります。

SA 有効期間の設定が通信相手と異なる場合は、データ送信側で設定された値が有効になります。IKE 認証方式、種別、認証アルゴリズム、暗号アルゴリズム、IKE 暗号アルゴリズム、相手局タイプの設定が通信相手と異なる場合は提案拒否あるいは通信不可になります。

IKE プロトコルでは、なりすましを防止するため、二者間の通信時に認証を行います。本製品 は認証方式として共有鍵方式と証明書方式を提供します。二つの方式のうちどちらか一方を使用して認証を行います。

共有鍵方

同じ認証鍵を通信する二者で共有する方式です。認証鍵は環境設定時に入力します。

証明書方

証明書を使用して認証を行う方式です。IKE プロトコルでは RSA 署名方式として規定されています。本製品 では、InfoCAが発行する証明書をサポートします。InfoCA は、インターネット/イントラネットにおいて証明書発行を実現するソフトウェアです。証明書方式を使用する場合は、InfoCA が必要となります。

証明書による運用の詳細は、「ファイアウォ−ル機能 リファレンスマニュアル」の「証明書の運用」を参照してください。

IPsec ゲートウェイと IKE ゲートウェイの環境設定について

IPsec ゲートウェイと IKE ゲートウェイでは、サポートする鍵設定方式が異なるため、動作環境を設定する場合は、それぞれ専用の設定画面で行います。しかし、実際の通信(IPセキュリティ通信)時に発生するログやアラートは、同一ファイルに同じ形式で出力されます。

統合環境設定では、IPsec ゲートウェイと IKE ゲートウェイは、動作で、「マニュアルIPsec」(IPsec ゲートウェイ)、又は「IKE」(IKEゲートウェイ)で指定します。

ファイアウォール独自環境設定における相違については、以下の表を参照してください。

また、IP セキュリティで使用するホスト、ネットワークの設定は、相手ゲートウェイと合わせてください。

◆IP セキュリティプロトコルの規

IPセキュリティプロトコルを規定している文書について示します.

IPsec ゲートウェイ

RFC1825 : Security Architecture for the Internet Protocol

RFC1826 : IP Authentication Header

RFC1827 : IP Encapsulating Security Payload(ESP)

RFC1828 : IP Authentication using Keyed-MD5

RFC1829 : The ESP DES-CBC Transform

RFC1852 : IP Authentication using Keyed-SHA

RFC2104 : HMAC: Keyed-Hashing for Message Authentication

IKE ゲートウェイ

RFC2401 : Security Architecture for the Internet Protocol(RFC1825に対応)

RFC2402 : IP Authentication Header(RFC1826に対応)

RFC2403 : The Use of HMAC-MD5-96 within ESP and AH

RFC2404 : The Use of HMAC-SHA-1-96 within ESP and AH

RFC2405 : The ESP DES-CBC Cipher Algorithm With Explicit IV

RFC2406 : IP Encapsulating Security Payload(ESP)(RFC1827に対応)

RFC2407 : The Internet IP security Domain of interpretation for ISAKMP

RFC2408 : Internet Security Association and Key Management Protocol (ISAKMP)

RFC2409 : The Internet Key Exchange (IKE)

RFC2410 : The NULL Encryption Algorithm and Its Use With IPsec

RFC2411 : IP Security Document Roadmap

RFC2412 : OAKLEY Key Determination Protocol

RFC2451 : The ESP CBC-Mode Cipher Algorithms

RFC3602 : The AES-CBC Cipher Algorithm and Its Use with IPsec


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