IPv4でNIC切替方式を使用する場合は、以下に示す3つのIP引継ぎ機能が使用できるため、それぞれの運用条件によって使用する機能を選択してください。
論理IPアドレス引継ぎ
NIC切替方式のLANを業務用と管理用の両方で使いたい場合(業務LAN上にWeb-Based Admin Viewのクライアントを接続する場合等)は本機能を利用します。この場合、業務用には論理IPアドレスを使用し、管理用には物理IPアドレスを使用して通信を行います。
通信相手ホストから接続する場合は、物理IPアドレスを接続先アドレスに指定することで、クラスタアプリケーションの状態遷移に関係なく、運用ノード、待機ノードに直接接続してそれぞれのノードを管理することができます。
なお、本機能では1つの物理インタフェースに2つのIPアドレスが設定されるため、1つのIPアドレスのみ設定されていることが動作条件となっているTCP/IPアプリケーションを使用する場合には、物理アドレス引継ぎ I または II を使用してください。
物理IPアドレス引継ぎI
NIC切替方式のLANを業務用と管理用の両方に使う場合で、かつ1つの物理インタフェース上に1つのIPアドレスのみ設定したい場合、本機能を利用します。
本機能では、論理アドレス引継機能の場合と同様に、運用ノード、待機ノードそれぞれに独立して接続することができます。但し、クラスタアプリケーションの状態遷移に伴って待機ノードのIPアドレスが変更されます。従って、クラスタ切替え時は、待機ノードのTCPコネクションは切断され、通信相手装置から再接続する場合は、接続先IPアドレスを変更する必要があります。
物理IPアドレス引継ぎII
NIC切替方式のLANを、業務用のみに使う場合に本機能を利用します。この場合、待機ノードのLANは非活性化されるため、待機ノードに接続することはできません。接続したい場合には、別のLANを用意する必要があります。
論理IP引継ぎの場合は、伝送路二重化機能の起動時に運用ノードと待機ノードの物理インタフェース(eth1)を活性化し、クラスタアプリケーションの起動により、運用ノード上で引継ぎ仮想インタフェースを活性化します。
図5.7 NIC切替方式(論理IP引継ぎ)の起動時の動作に、論理IP引継ぎの起動時の動作を示します。
図5.7 NIC切替方式(論理IP引継ぎ)の起動時の動作
物理IP引継ぎIの場合は、伝送路二重化機能の起動時に運用ノードと待機ノードの物理インタフェース(eth1)を活性化し、クラスタアプリケーションの起動により、運用ノード上で物理インタフェース(eth1)に引継ぎIPアドレスを割当て、活性化します。この時、待機ノード上の物理インタフェース(eth1)は活性化の状態を維持します。
図5.8 NIC切替方式(物理IP引継ぎI)の起動時の動作に、物理IP引継ぎIの起動時の動作を示します。
図5.8 NIC切替方式(物理IP引継ぎI)の起動時の動作
物理IP引継ぎIIの場合は、伝送路二重化機能の起動時に運用ノードと待機ノードの物理インタフェース(eth1)を活性化せず、クラスタアプリケーションの起動により、運用ノード上で物理インタフェース(eth1)に引継ぎIPアドレスを割当て、活性化します。この時、待機ノードの物理インタフェース(eth1)は活性化しません。
図5.9 NIC切替方式(物理IP引継ぎII)の起動時の動作に、物理IP引継ぎIIの起動時の動作を示します。
図5.9 NIC切替方式(物理IP引継ぎII)の起動時の動作
通常運用時は、運用ノード上の引継ぎ仮想インタフェースを使用して相手システムとの通信を行います。運用ノードにおける異常発生時(パニック、ハングアップまたは伝送路異常検出時)は、伝送路二重化機能が待機ノードに切り替えます。アプリケーションで再接続を行うことによって運用ノードの通信を引き継ぎます。
図5.10 NIC切替方式(論理IP引継ぎ)の切替え動作に、NIC切替方式(論理IPアドレス引継機能)による切替え動作図を示します。
以下の図では、運用ノードAで引継ぎ仮想IPアドレス(IPa)がセカンダリインタフェース(eth2)の論理インタフェースに割当てられて活性化された状態になっています。
伝送路異常等の発生によるノード切替え時に、運用ノードAにおいて、引継ぎIPアドレス(IPa)が割当てられていた引継ぎ仮想インタフェースを非活性化し、待機ノードBで既に活性化されているプライマリインタフェース(eth1)に引継ぎIPアドレス(IPa)を割当てて論理インタフェースを活性化します。
図5.10 NIC切替方式(論理IP引継ぎ)の切替え動作
図5.11 NIC切替方式(物理IP引継ぎI)の切替え動作(続く)と図5.12 NIC切替方式(物理IP引継ぎI)の切替え動作(続き)に、NIC切替方式(物理IPアドレス引継ぎI)による切替え動作を示します。
以下の図では、運用ノードAで引継ぎ仮想IPアドレス(IPa)がセカンダリインタフェース(eth2)に割当てられて活性化された状態になっています。
伝送路異常等の発生によるノード切替え時に、待機ノードBで既に活性化されているプライマリインタフェース(eth1)を一度、非活性化し、引継ぎIPアドレス(IPa)を割当て、活性化します。待機ノードに引継いだ後のノードAでは、引継ぎIPアドレス(IPa)が割当てられていたセカンダリインタフェース(eth2)に別のIPアドレス(IP1)を割当て、活性化します。
図5.11 NIC切替方式(物理IP引継ぎI)の切替え動作(続く)
図5.12 NIC切替方式(物理IP引継ぎI)の切替え動作(続き)
図5.13 NIC切替方式(物理IP引継ぎII)の切替え動作に、NIC切替方式(物理IPアドレス引継ぎII)による切替え動作を示します。
以下の図では、運用ノードAで引継ぎIPアドレス(IPa)がセカンダリインタフェース(eth2)に割当てられて活性化された状態になっています。
伝送路異常等の発生によるノード切替え時に、待機ノードBでプライマリインタフェース(eth1)に引継ぎIPアドレス(IPa)を割当て、活性化します。待機ノードに引継いだ後のノードAでは、引継ぎIPアドレス(IPa)が割当てられていたセカンダリインタフェース(eth2)を非活性化します。
図5.13 NIC切替方式(物理IP引継ぎII)の切替え動作
切戻しの手順は高速切替方式の場合と同様です。詳細は“5.4.1.3 切戻し”を参照してください。
図5.14 NIC切替方式(論理IP引継ぎ)の停止動作に、論理IP引継ぎの場合のクラスタアプリケーション停止動作を示します。
図5.14 NIC切替方式(論理IP引継ぎ)の停止動作
図5.15 NIC切替方式(物理IP引継ぎI)の停止動作に、物理IP引継ぎIの場合のクラスタアプリケーション停止動作を示します。
図5.15 NIC切替方式(物理IP引継ぎI)の停止動作
図5.16 NIC切替方式(物理IP引継ぎII)の停止動作に、物理IP引継ぎIIの場合のクラスタアプリケーション停止動作を示します。
図5.16 NIC切替方式(物理IP引継ぎII)の停止動作