富士通メインフレームとANSERセンタとのパススルー通信の制御について説明します。
セション制御は、FNAセションとTCPグループ間の論理的な通信経路を開設・閉塞することによりANSERセンタとのTCPコネクションの接続・切断を制御します。
通信経路の開設は、ANSERセンタからのTCPコネクション接続を可能にして、TCPコネクションの接続を行います。
通信経路の閉塞は、ANSERセンタとのTCPコネクションを切断します。
セション制御の方式は、通信経路の開設・閉塞する契機の違いにより、以下の2つの方式があります。
連動方式
FNAセションの確立・解放と連動して、通信経路の開設・閉塞を行います。連動方式は、FNAセション確立時に通信経路を開設するため、TCPコネクションが接続されるまで一定時間(最大60秒)を要します。
非連動方式
FNAセションの確立・解放とは連動せず、TCPグループの活性化・非活性化を契機に、通信経路の開設・閉塞を行います。非連動方式は、常にTCPコネクションを接続しておくことができるため、FNAセション確立直後に通信可能となります。
セション制御の方式は、sys定義文のpathcntlオペランドで指定します。連動方式と非連動方式の処理について、以下に説明します。
連動方式には、通信経路の開設・閉塞契機に応じて、以下の方式があります。
完全連動方式
業務連動方式
セション連動方式
連動方式の通信経路の開設・閉塞契機を表1.1に示します。
通信経路 | 通信経路の開設・閉塞契機 | ||
---|---|---|---|
完全連動方式 | 業務連動方式 | セション連動方式 | |
通信経路の開設 | TCPグループ配下のすべてのFNAセション確立時 | TCPグループ配下のすべてのFNAセション確立時 | TCPグループ配下の最初のFNAセション確立時 |
通信経路の閉塞 | TCPグループ配下の最初のFNAセション解放時 | ・経路種別を区別する場合 | TCPグループ配下のすべてのFNAセション解放時 |
ANSERセンタからのTCPコネクション切断時 | ANSERセンタからのTCPグループ配下のすべてのTCPコネクション切断時 | ANSERセンタからのTCPグループ配下のすべてのTCPコネクション切断時 |
※1 : sys定義のpathwttmオペランドに指定した時間が経過後、経路種別ごとの送信用および受信用のFNAセションがそれぞれ1つ確立された場合、通信経路を開設します。
TCPグループ配下のすべてのFNAセションの確立を契機として、通信経路を開設し、ANSERセンタからのTCPコネクション接続要求を受信することによりTCPコネクションを接続します。
完全連動方式のFNAセション確立による通信経路の開設を図1.14に示します。
図1.14 完全連動方式のFNAセション確立による通信経路の開設
TCPグループ配下の最初のFNAセションの解放時に、通信経路を閉塞し、TCPコネクションを切断します。
完全連動方式のFNAセション解放による通信経路の閉塞を図1.15に示します。
図1.15 完全連動方式のFNAセション解放による通信経路の閉塞
通信経路を閉塞時、sys定義文のpathwttmオペランドに指定した時間が経過後、TCPグループ配下のすべてのFNAセションを強制解放します。
ANSERセンタよりTCPコネクションを切断された場合、確立状態のFNAセションにFNAセション強制解放を通知および通信経路を閉塞します。
なお、sys定義文のrlswattmオペランド値に指定した時間が経過するまで、確立状態のFNAセションへの強制解放の通知および通信経路の閉塞を保留し、富士通メインフレーム上の業務アプリケーションからの業務終了によるFNAセション解放要求を受け入れて肯定応答を通知します。
完全連動方式のTCPコネクション切断による通信経路の閉塞を図1.16に示します。
図1.16 完全連動方式のTCPコネクション切断による通信経路の閉塞
TCPグループ配下のすべてのFNAセションの確立を契機として、通信経路を開設し、ANSERセンタからのTCPコネクション接続要求を受信することによりTCPコネクションを接続します。
業務連動方式のFNAセション確立による通信経路の開設を図1.17に示します。
図1.17 業務連動方式のFNAセション確立による通信経路の開設
なお、TCPグループ配下の最初のFNAセションが確立後、sys定義文のpathwttmオペランドに指定した時間が経過した場合、TCPグループ配下のFNAセションが以下の状況になった時点で業務通信可能と判断して、通信経路を開設します。
経路種別を区別しない場合
送信用および受信用のFNAセションがそれぞれ1つ以上確立。
経路種別を区別する場合
制御、照会、通知の送信用および受信用のFNAセションがそれぞれ1つ以上確立。
TCPグループ配下のFNAセションが以下の状況になった時点で通信経路を閉塞し、TCPコネクションを切断します。
経路種別を区別しない場合
送信用および受信用のいずれかのFNAセションがすべて解放。
経路種別を区別する場合
制御、照会、通知の送信用および受信用のいずれかのFNAセションがすべて解放。
業務連動方式のFNAセション解放による通信経路の閉塞を図1.18に示します。
図1.18 業務連動方式のFNAセション解放による通信経路の閉塞
通信経路を閉塞時、sys定義文のpathwttmオペランドに指定した時間が経過後、TCPグループ配下のすべてのFNAセションを強制解放します。
ANSERセンタよりTCPコネクションを切断された場合、確立状態のFNAセションにFNAセション強制解放を通知します。
なお、sys定義文のrlswattmオペランド値に指定した時間が経過するまで、確立状態のFNAセションへの強制解放の通知を保留し、富士通メインフレーム上の業務アプリケーションからの業務終了によるFNAセション解放要求を受け入れて肯定応答を通知します。
TCPグループ配下のすべてのTCPコネクションが切断された時点で、通信経路を閉塞します。
業務連動方式のTCPコネクション切断を図1.19に示します。
図1.19 業務連動方式のTCPコネクション切断
TCPグループ配下の最初のFNAセションの確立を契機として、通信経路を開設し、ANSERセンタからのTCPコネクション接続要求を受信することによりTCPコネクションを接続します。
セション連動方式のFNAセション確立による通信経路の開設を図1.20に示します。
図1.20 セション連動方式のFNAセション確立による通信経路の開設
TCPグループ配下のすべてのFNAセションが解放された時点で、通信経路を閉塞し、TCPコネクションを切断します。
セション連動方式のFNAセション解放による通信経路の閉塞を図1.21に示します。
図1.21 セション連動方式のFNAセション解放による通信経路の閉塞
ANSERセンタよりTCPコネクションを切断された場合、確立状態のFNAセションにFNAセション強制解放を通知します。
なお、sys定義文のrlswattmオペランド値に指定した時間が経過するまで、確立状態のFNAセションへの強制解放の通知を保留し、富士通メインフレーム上の業務アプリケーションからの業務終了によるFNAセション解放要求を受け入れて肯定応答を通知します。
TCPグループ配下のすべてのTCPコネクションが切断された時点で、通信経路を閉塞します。
TCPグループ資源が活性になった時点で、通信経路を開設し、ANSERセンタからのTCPコネクション接続要求を受信することによりTCPコネクションが接続されます。その後、FNAセションが確立した時点で、富士通メインフレームとの通信が可能となります。
なお、TCPグループ資源が活性となるのは、以下の場合です。
tcpg定義文のautoactオペランドに“yes”を指定し、NETSTAGE/FIC ANSER接続オプションを起動する。
状態操作コマンド(nficcntl)でTCPグループ資源を活性化する。
TCPグループの強制非活性を実施することで、TCPグループ配下のすべてのTCPコネクションを切断、およびFNAセションを強制解放し、通信経路を閉塞します。
非連動方式には、TCPコネクション未接続時、FNAセションの確立を受け付けるかどうか、TCPコネクション切断時にFNAセションを解放するかどうかを選択する以下の方式があります。
非連動(セション解放)方式
非連動(セション未解放)方式
完全非連動方式
非連動方式のTCPコネクションとFNAセションの確立・解放の制御を表1.2に示します。
FNAセションを制御する契機 | 非連動 | 非連動 | 完全非連動方式 |
---|---|---|---|
TCPコネクション未接続時のFNAセション確立要求に対する制御 | FNAセション確立要求を拒否します。 | FNAセション確立要求を拒否します。 | FNAセション確立要求を受け付けます。 |
TCPコネクション切断時のFNAセションに対する制御 | FNAセションを強制解放します。 | FNAセションの確立状態を維持します。 | FNAセションの確立状態を維持します。 |
TCPコネクションが接続されていない場合、富士通メインフレーム上の業務アプリケーションからのFNAセションの確立要求を拒否します。
非連動(セション解放)方式のFNAセション確立要求を図1.22に示します。
図1.22 非連動(セション解放)方式のFNAセション確立要求
富士通メインフレーム上の業務アプリケーションよりFNAセションを解放した場合でも、NETSTAGE/FIC ANSER接続オプションからはTCPコネクションを切断しません。
ANSERセンタよりTCPコネクションが切断された場合、確立状態のFNAセションにFNAセション強制解放を通知します。
なお、sys定義文のrlswattmオペランド値に指定した時間が経過するまで、確立状態のFNAセションへの強制解放の通知を保留し、富士通メインフレーム上の業務アプリケーションからの業務終了によるFNAセション解放要求を受け入れて肯定応答を通知します。
TCPコネクションが接続されていない場合、富士通メインフレーム上の業務アプリケーションからのFNAセションの確立要求を拒否します。
富士通メインフレーム上の業務アプリケーションよりFNAセションを解放した場合でも、NETSTAGE/FIC ANSER接続オプションからはTCPコネクションを切断しません。
ANSERセンタからTCPコネクションが切断された場合でも、FNAセションを解放しません。
TCPコネクションが接続されていない場合でも、富士通メインフレーム上の業務アプリケーションからのFNAセションの確立要求を受け付けます。ただし、FNAセションの確立要求を受け付け後、TCPコネクションが接続する前の電文送信は異常となります。
完全非連動方式のFNAセション確立要求を図1.23に示します。
図1.23 完全非連動方式のFNAセション確立要求
富士通メインフレーム上の業務アプリケーションよりFNAセションを解放した場合でも、NETSTAGE/FIC ANSER接続オプションからはTCPコネクションを切断しません。
ANSERセンタからTCPコネクションが切断された場合でも、FNAセションを解放しません。
FNAセションまたはTCPコネクションの一方が使用できない場合でも、同じTCPグループ配下の別のFNAセションまたはTCPコネクションを使用して通信を継続します。この機能を代行通知機能といいます。
代行通知機能は、TCPグループ定義文(tcpg)のagentオペランドで定義します。
ANSERセンタへの電文送信、ANSERセンタからの電文受信およびANSERセンタからのTCPコネクション切断について以下に説明します。
ANSERセンタへの電文送信
代行通知機能を使用する場合、FNAセションと対応づけられたTCPコネクションが未接続のとき、TCPグループ配下の接続済のTCPコネクションを使用して電文を送信します。ただし、TCPグループ配下のTCPコネクションがすべて未接続の場合は、電文送信は異常となります。
なお、代行通知機能を使用しない場合、FNAセションと対応づけられたTCPコネクションが未接続のときは、電文送信は異常となります。
代行通知機能を使用する場合のANSERセンタへの電文送信を図1.24に示します。
図1.24 代行通知機能を使用する場合のANSERセンタへの電文送信
ANSERセンタからの電文受信
代行通知機能を使用する場合、TCPコネクションと対応づけられたFNAセションが未確立のとき、TCPグループ配下の同じ属性である確立済のFNAセションで電文を受信します。
代行通知機能を使用しない場合、TCPコネクションと対応づけられたFNAセションが未確立の場合、受信電文は破棄します。
なお、同じ属性のFNAセションとは、以下のFNAセションのことをいいます。
経路種別を区別する方法を選択した場合
制御経路受信用、制御経路送信用、照会経路受信用、照会経路送信用、通知経路受信用、通知経路送信用の6種類のFNAセション
経路種別を区別しない方法を選択した場合
送信用、受信用の2種類のFNAセション
代行通知機能を使用する場合のANSERセンタからの電文受信を図1.25に示します。
図1.25 代行通知機能を使用する場合のANSERセンタからの電文受信
ANSERセンタからのTCPコネクション切断
代行通知機能を使用する場合、ANSERセンタからTCPコネクションが切断されたとき、当該TCPコネクションに対応づけられたFNAセションを解放しません。
ただし、TCPグループ配下のすべてのTCPコネクションが切断された場合は、sys定義文のrlswattmオペランドに指定した時間が経過後、TCPグループ配下のすべてのFNAセションを強制解放します。
代行通知機能を使用する場合のANSERセンタからのTCPコネクション切断を図1.26に、代行通知機能を使用する場合のANSERセンタからの最後のTCPコネクション切断を図1.27に示します。
図1.26 代行通知機能を使用する場合のANSERセンタからのTCPコネクション切断
図1.27 代行通知機能を使用する場合のANSERセンタからの最後のTCPコネクション切断