Oracle Solaris ゾーン環境でPRIMECLUSTERを使用する場合、以下の各項目について、運用形態や構成を選択します。各項目の選択の基準は、以降の節を参照してください。
項目 | 選択肢 |
---|---|
運用形態 | ウォームスタンバイ運用 コールドスタンバイ運用 シングルノードクラスタ運用 |
ノングローバルゾーンイメージの配置 | 非共有 共有 |
ネットワーク形態 | 排他的IPゾーン 共有IPゾーン |
アプリケーション監視 | あり なし |
PRIMECLUSTERの運用形態には、複数ノード上と1ノード上での運用があります。
特徴は以下のとおりです。
項目 | 複数ノード | 1ノード |
---|---|---|
ウォームスタンバイ運用 コールドスタンバイ運用 | シングルノードクラスタ運用 | |
ソフト異常での業務回復 | ○ | ○ |
サーバのハード異常での業務回復 | ○ | - |
1ノードでの可用性向上 | - | ○ |
複数ノード上で運用する場合、運用サーバ故障時に、ノングローバルゾーンで動作するアプリケーションを待機サーバに引き継がせることで業務継続を実現します。以下の2つの運用形態があります。
ウォームスタンバイ運用
運用サーバ、待機サーバともノングローバルゾーンは起動したまま、ノングローバルゾーン内で動作するアプリケーションのみを切り替え、業務を引き継がせます。待機系ノングローバルゾーンのOSが起動状態となるため、より高速な切替えが可能です。
図16.1 ウォームスタンバイ運用
コールドスタンバイ運用
運用サーバのノングローバルゾーンを停止後、待機サーバでノングローバルゾーンを起動させることで、サーバ間の業務を引き継がせます。ノングローバルゾーンイメージをクラスタノード間で共有する構成が可能です。
運用時は、待機サーバではノングローバルゾーンが起動しないため、CPUやメモリ資源を使用しません。
図16.2 コールドスタンバイ運用
各運用形態の特徴は以下のとおりです。
項目 | ウォームスタンバイ運用 | コールドスタンバイ運用 |
---|---|---|
高速な切替え | ○ | - |
待機サーバのCPU、メモリ資源の節約 | - | ○ |
ノングローバルゾーンイメージ非共有 | ○ | ○ |
ノングローバルゾーンイメージ共有 | - | ○ |
1ノード上で運用する場合、以下のような運用形態があります。
シングルノードクラスタ運用
ノングローバルゾーン上のOSおよびアプリケーションの状態を監視します。異常を検出した場合、ノングローバルゾーンまたはノングローバルゾーン上のアプリケーションを自動的に再起動し、復旧を試みることで、可用性を向上させることができます。
この構成では、グローバルゾーンの PRIMECLUSTER がノングローバルゾーンの状態を監視します。また、ノングローバルゾーン内の PRIMECLUSTER がノングローバルゾーン内のクラスタアプリケーションを監視します。
図16.3 シングルノードクラスタ運用
ノングローバルゾーンイメージは、クラスタノード間で共有すること、またはそれぞれのノードに配置することが可能です。
各構成の特徴は以下のとおりです。
項目 | 非共有 | 共有 |
---|---|---|
ウォームスタンバイ運用 | ○ | - |
コールドスタンバイ運用 | ○ | ○ |
ローリングアップデート(業務運用中に待機系ノングローバルゾーンの保守) | ○ | - |
ノングローバルゾーンイメージ破壊時の切替えによる業務継続 | ○ | - |
ノングローバルゾーンイメージ引継ぎ用の共用ディスクが不要 | ○ | - |
保守作業が1ノード分のみ | - | ○ |
運用系と待機系でノングローバルゾーンが同一内容 | - | ○ |
ノングローバルゾーンイメージは、以下のディスク領域に配置します。
非共有の場合
GDSのルートクラスまたはローカルクラスのボリューム、または、GDSに登録していないディスクに配置します。
共有の場合
GDSの共用クラスのボリュームに配置します。
ノングローバルゾーンのネットワーク形態には、排他的IPゾーンと共有IPゾーンがあります。
排他的IPゾーン
ネットワークインタフェースを特定のノングローバルゾーンが占有するネットワーク形態です。グローバルゾーンとノングローバルゾーンのネットワークインタフェースを分離することで、ネットワーク設計をゾーン間で分離することができます。
共有IPゾーン
グローバルゾーンで構成されたネットワークインタフェースをノングローバルゾーンと共有するネットワーク形態です。グローバルゾーンと複数のノングローバルゾーンでネットワークインタフェースを共有できます。
図16.4 ネットワーク形態とGLSの設定
各ネットワーク形態の特徴は以下のとおりです。
項目 | 排他的IPゾーン | 共有IPゾーン |
---|---|---|
ゾーン間のネットワーク設計の分離 | ○ | - |
グローバルゾーンと複数のノングローバルゾーンでネットワークインタフェースを共有 | - | ○ |
参考
GLSの高速切替方式、GS/SURE連携方式でノングローバルゾーンの通信を実施する場合、共有IPゾーンの形態を選択してください。排他的IPゾーンで、これらの方式を使用した通信はできません。なお、NIC切替方式の場合、どちらの形態でも通信できます。
Oracle Solaris ゾーン環境では、グローバルゾーンの監視に加え、ノングローバルゾーンに以下の監視機能を提供します。
ノングローバルゾーンの状態監視
ノングローバルゾーンが停止していないことを確認します(zoneadmコマンドで表示される状態により確認します)。
ノングローバルゾーンのOS異常監視
ノングローバルゾーンへのログイン(zloginコマンド)がエラーにならないことを確認することにより、ノングローバルゾーンのハングアップを検出できます。
さらに、ノングローバルゾーン上で動作するアプリケーションを監視対象にすると、以下の監視が可能です。
ノングローバルゾーンのアプリケーション監視
ノングローバルゾーン上で動作するRMSにより、グローバルゾーンと同等のアプリケーション監視機能を提供します。
アプリケーション監視の特徴は以下のとおりです。
項目 | アプリケーション監視 | |
---|---|---|
あり | なし | |
ノングローバルゾーンの停止の検出 | ○ | ○ |
ノングローバルゾーンのハングアップの検出 | ○ | ○ |
ノングローバルゾーンのアプリケーション監視 | ○ | - |
注意
ノングローバルゾーン上で動作するアプリケーションを監視対象とする場合には、ノングローバルゾーンにPRIMECLUSTERをインストールし、シングルノードクラスタ構成を作成する必要があります。
アプリケーション監視を行う場合、ノングローバルゾーンで使用できるリソースについては、“16.1.3 リソース構成”を参照してください。
ノングローバルゾーンの監視は、Cmdlineリソースにて10秒間隔で行うため、ノングローバルゾーンの状態異常が10秒以上継続しない場合は、故障として検知しないことがあります。例えば、ノングローバルゾーンの停止と起動が10秒以内で完了した場合は、ノングローバルゾーンの停止を状態異常として検知しないことがあります。