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PRIMECLUSTER Global Link Services 説明書 4.2 (伝送路二重化機能編)

2.3.6 Solarisコンテナの伝送路制御

Solarisコンテナとは

Solarisコンテナとは、1台のサーバを論理的に複数台のサーバとして動作しているように見せる技術であり、仮想化されたサーバごとに別のシステムとして、それぞれアプリケーションを動作させることができます。(ソフトウェアパーティション機能)

仮想化されたサーバをノングローバルゾーン(以降、ゾーンと表記)と呼び、仮想化を実現しているシステム全体をグローバルゾーンと呼びます。伝送路二重化機能では、仮想化されたサーバ(ゾーン)上においてもネットワークの高信頼化を実現します。

Solarisコンテナのネットワークインタフェース

Solarisコンテナには、以下の2種類のネットワーク形態があります。

共有IPゾーンのネットワーク構成

Solarisコンテナの共有IP構成の各ゾーンには、それぞれ1つ以上の通信用IPアドレスが割り当てられます。各ゾーンに割り当てられたIPアドレスは、物理インタフェース上に生成された論理インタフェースに付加されます。ただし、ゾーンが使用する論理インタフェースは他のゾーンに対して隠蔽されているため、ゾーン上で動作するアプリケーションは、そのゾーン上に割り当てられたIPアドレス(論理インタフェース)のみ利用可能となります。

以下に、Solarisコンテナのネットワークインタフェース構成例を示します。

図2.51 Solarisコンテナのネットワークインタフェース構成例

各ゾーンは、グローバルゾーンから個々に起動することで利用可能になります。

注意

各ゾーンに割り当てられるIPアドレス(論理インタフェース)の生成/削除については、ゾーンの起動/停止と連動してSolaris OSから行われます。ゾーン起動時に対象となる物理インタフェース、または仮想インタフェースが存在しない場合は、そのゾーンを起動することができません。伝送路二重化機能によりゾーンのネットワークを高信頼化する場合は、ゾーンが起動されるより前に仮想インタフェースの活性化を行う必要がありますが、システム起動時は伝送路二重化機能が先に起動されるため、ゾーンとの起動順序をユーザが意識する必要はありません。

排他的IPゾーンのネットワーク構成

Solarisコンテナの排他的IP構成のゾーンでは、物理インタフェースを占有して、グローバルゾーンと同様にIPレベルの機能を利用することができます。また、割り当てられた物理インタフェースは、他のゾーンから利用することはできません。排他的IP構成のネットワークを高信頼化する場合は、ノングローバルゾーンに伝送路二重化機能をインストールし、ノングローバルゾーンに割り当てられた物理インタフェースを二重化します。

以下に、Solarisコンテナの排他的IPのネットワークインタフェース構成例を示します。

図2.52 排他的IPゾーンのインタフェース構成例

ノングローバルゾーン Zone0 は ip-type=exclusive を指定して構成され、物理インタフェース fjgi0、fjgi1が割り当てられます。伝送路二重化機能はZone0で動作し、通常のシステムと同様に fjgi0、fjgi1 を二重化します。Zone1およびZone2に関しても、Zone0と同様に、伝送路二重化機能は各Zoneで動作し、通常システムと同様に物理インタフェースを二重化します。

Solarisコンテナにおける伝送路二重化機能

Solarisコンテナのゾーンについて、伝送路二重化機能は以下の通り対応します。

表2.4 Solarisコンテナにおける伝送路二重化機能

Solarisコンテナ

グローバルゾーン

ノングローバルゾーン
(共有IPゾーン構成)

ノングローバルゾーン
(排他的IPゾーン構成)

GLSの導入先

グローバルゾーン

グローバルゾーン

ノングローバルゾーン

二重化方式

高速切替方式

×

RIP方式

×

×

高速切替/RIP方式

×

×

NIC切替方式
(論理IP引継ぎ)

NIC切替方式
(物理IP引継ぎ)

GS/SURE連携方式

×

[表の見方]  ○:可能、×:不可

参考

  • 共有IPゾーンのネットワークをNIC切替方式により高信頼化する場合は、物理IP引継ぎ(運用モード”e”)を使用してください。論理IP引継ぎ(運用モード”d”)を使用した場合は、ゾーン起動時、Solaris OSにより活性化される論理IPアドレスとは別に、伝送路二重化機能が論理IPアドレスを引継ぎIPアドレスとして活性化します。このため、ゾーンからは使用されない不要なIPアドレスが活性化されることになります。なお、既に論理IP引継ぎ(運用モード”d”)を使用している状態で、後からゾーンの設定を追加する場合には、物理IP引継ぎ(運用モード”e”)に変更する必要はありません。

  • グローバルゾーンの伝送路二重化機能により割り当てられた仮想IPアドレス、論理IPアドレス、および物理IPアドレスは、グローバルゾーンでのみ使用可能です。ノングローバルゾーンが使用するIPアドレスは、ゾーン起動時にOSがノングローバルゾーンに対して割り当てます。

  • 排他的IPのノングローバルゾーンでは、伝送路二重化機能の仮想ドライバを使用することはできません。このため、サポートする二重化方式はNIC切替方式のみとなります。

  • 排他的IPのノングローバルゾーンが、Solaris 10かつGLSのパッチ914233-05以降を適用している場合は、待機パトロール機能が設定できます。待機パトロール機能を設定せず、二重化したNICがすべて異常となった場合は、NICの復旧後、hanetpoll off/onによる監視の再起動が必要です。詳細については、“7.7 hanetpollコマンド”を参照してください。

  • ノングローバルゾーンにパッチ914233-06以降を適用している場合、ノングローバルゾーン(共有IPゾーン構成)でGS/SURE連携方式が使用できます。

以下に、高速切替方式を使用した場合の共有IPのインタフェース構成例を示します。

高速切替方式を使用した構成では、各ゾーンのアプリケーションは仮想インタフェースに割り当てられた論理仮想インタフェース(sha0:1等)を使用して通信を行います。高速切替方式で二重化した物理インタフェース(hme0またはhme1)の伝送路に異常が発生した場合でも、ゾーン上のアプリケーションは通信を継続することができます。

図2.53 高速切替方式を使用したゾーンのインタフェース構成例

以下に、NIC切替方式を使用した場合の共有IPのインタフェース構成例を示します。

NIC切替方式を使用した構成では、各ゾーンのアプリケーションはNIC切替方式で二重化した物理インタフェース(hme0)に割り当てられた論理インタフェース(hme0:1等)を使用して通信を行います。NIC切替方式で二重化した物理インタフェース(hme0)の伝送路に異常が発生した場合、ゾーンで使用するIPアドレスを運用インタフェース(hme0)から待機インタフェース(hme1)へ引継ぐため、ゾーン上のアプリケーションは通信を継続することができます。

図2.54 NIC切替方式を使用したゾーンのインタフェース構成例

参照

Solarisコンテナの詳細については、Solaris 10 OSのマニュアルを参照してください。

2.3.6.1 伝送路二重化機能によるSolarisコンテナの共有IPネットワーク高信頼化

Solarisコンテナの共有IPゾーンは通常、物理インタフェースに対して割り当てられたゾーン用の論理インタフェースを使用して、他システムまたは各ゾーン間との通信を行います。このため、物理インタフェースが故障したり、伝送路に異常が発生してしまうと、対象となるゾーンはすべて通信を継続することができなくなります。

図2.55 伝送路二重化機能を使用しない場合

上記の構成では、伝送路異常が発生した場合にアプリケーションAとアプリケーションBは共に通信を継続することができなくなります。

伝送路二重化機能を使用することにより、伝送路異常が発生した場合でもゾーン上のアプリケーションは通信を継続することができます。

高速切替方式による共有IPゾーンのネットワーク高信頼化

以下に、高速切替方式を使用した場合の例を示します。

図2.56 高速切替方式を使用した場合

仮想インタフェースが束ねている物理インタフェースのどちらか一方で伝送路異常が発生した場合でも、伝送路二重化機能により経路の切替えが行われるため、ゾーン上のアプリケーションは通信を継続することができます。

NIC切替方式による共有IPゾーンのネットワーク高信頼化

以下に、NIC切替方式を使用した場合の例を示します。

図2.57 NIC切替方式を使用した場合

仮想インタフェースが束ねているプライマリ側の物理インタフェースで伝送路異常が発生した場合でも、伝送路二重化機能によりセカンダリ側の物理インタフェースへ切替えが行われるため、ゾーン上のアプリケーションは通信を継続することができます。