ページの先頭行へ戻る
Symfoware Server V10.1.0 RDB運用ガイド(データベース定義編)

4.4 データベーススペースの所要量の見積り

格納構造ごとに、必要となるデータベーススペース量の見積りを示します。計算式で使用する使用率などの値は目安値を後述しますが、更新による競合など使用方法に依存して必要な領域が増加する場合があるため、余裕をもって(使用率を計算した上で安全率を乗算する)見積りを行ってください。

将来的なレコード数の増加に対して、余裕を持った領域を確保したい場合には、総レコード数にあらかじめ増加件数分の値を含めてください。

SEQUENTIAL造(PRECEDENCE(1)が指定されていない場合)

SEQUENTIAL構造(PRECEDENCE(1)が指定されている場合)

RANDOM構造(クラスタキーに一意性制約が設定されている場合)

RANDOM構造(クラスタキーに一意性制約が設定されていない場合)

OBJECT構造

BTREE構造のデータ部

BTREE構造のインデックス部

安全率の乗算

スペース量の見積りにおいては、安全率(1.3以上)を用いた見積りを行ってください。安全率は、計算上の誤差の吸収や、複雑な計算の簡易化を目的としています。

たとえば、行単位の排他を使用する場合、DELETE文、UPDATE文またはロールバックを実行することによって発生する削除領域はトランザクション完了後に再利用されます。このため、同時に実行されているINSERT文では、削除領域の再利用はできず、使用ページ数が増加する場合があります。このようなケースにおいても安全率を考慮する必要があります。更新処理の多重実行により同時に発生する更新レコードの合計が、総レコード数の3割程度であることを想定した場合、安全率は1.3を基準としてください。

将来的なレコード数の増加に対して、余裕を持った領域を確保したい場合には、総レコード数にあらかじめ増加件数分の値を含めてください。

使用率の目安値

RANDOM構造のプライム部やオーバフロー部、BTREE構造のデータ部やインデックス部における使用率(各ページの平均使用率)やRANDOM構造のオーバフロー率(総レコード数に対するオーバフロー部へのあふれ率)は、データのキー値およびデータの追加、削除の順番に依存して変動します。スペース量を見積もる場合は、それぞれの値に対して、以下のような目安値を使用して見積りを行います。

なお、ページ内レコード数が少ない場合、各使用率は低い値となり、オーバフロー率については高い値となります。

プライム部の使用率          : 0.4 ~ 0.8
オーバフロー部の使用率      : 0.2 ~ 0.5
オーバフロー率              : 0.2 ~ 0.6(クラスタキーに一意性制約が
                                         設定されている場合)
                            : 0.9 ~ 1.0(クラスタキーに一意性制約が
                                         設定されていない場合)
BTREEデータ部の使用率       : 0.5
BTREEインデックス部の使用率 : 0.5

キー圧縮率の目安値

BTREE構造のデータ部やインデックス部ではキーを圧縮して格納します。この場合のキー圧縮率は以下のような目安値を使用して見積りを行います。

BTREEデータ部のキー圧縮率        : 0.3
BTREEインデックス部のキー圧縮率  : 0.5

格納構造のスペース量の見積り

1

SEQUENTIAL構造のスペース量の見積り

次のような構造の発注表(総レコード数:30000件)の所要スペース量を計算します。

CREATE TABLE STOCKS.発注表 (
                              取引先     SMALLINT   NOT NULL,
                              取引製品   SMALLINT   NOT NULL,
                              仕入価格   INTEGER,
                              発注数量   SMALLINT
                            )

格納構造:SEQUENTIAL構造

ページ長:32 Kバイト

CPU数:2

安全率:1.3

レコード長         = ( 取引先 + 取引製品 + 仕入価格 + 発注数量 )
                     + ( 可変長列の数 × 4 + 2 ) + 可変長列の長さ + NULLタグ数 + 26
                   ≒ ( 2 + 2 + 4 + 2 ) + 0 + 0 + 2 + 26                   (注1)
                   = 38

ページ内レコード数 = ( ページ長 - 94 ) / レコード長
                   = ( 32768 - 94 ) / 38
                   = 859.8421053… 
                   ≒ 859                                                         (注2)

スペース量         = ( 総レコード数 / ページ内レコード数 + CPU数 + 1 ) × ページ長 × 安全率
                   = ( 30000 / 859 + 2 + 1 ) × 32768 × 1.3
                   = ( 35 + 2 + 1 ) × 32768 × 1.3                             (注3)
                   = 1618739.2 (バイト)
                   ≒ 1581 (K バイト)
                   → 1600 (K バイト)                                             (注4)

注1) 可変長列がないため、可変長に関する項はすべて0で計算

注2) 小数点切捨て

注3) 35は(30000/859)を小数点切上げで計算

注4) スペース量をページ長の整数倍に補正


2

RANDOM構造のスペース量の見積り

次のような構造の発注表(総レコード数:30000件)の所要スペース量を計算します。

CREATE TABLE STOCKS.発注表 (
                              取引先     SMALLINT   NOT NULL,
                              取引製品   SMALLINT   NOT NULL,
                              仕入価格   INTEGER,
                              発注数量   SMALLINT,
                              PRIMARY KEY ( 取引先, 取引製品 )
                            )

格納構造は、次のように設計します。また、クラスタキーはPRIMARY KEY(一意性制約が設定されている)であるため、計算式は、RANDOM構造(クラスタキーに一意性制約が設定されている場合)を使用します。

格納構造:取引先と取引製品をクラスタキーとしたRANDOM構造

ページ長:プライム部、オーバフロー部ともに4Kバイト

プライム部の使用率:0.5

オーバフロー部の使用率:0.2

オーバフロー率:0.2

安全率:1.3

レコード長          = ( 仕入価格 + 発注数量 ) + ( 可変長列の数 × 4 + 6 )
                      + ( 取引先 + 取引製品 + 12 ) + NULLタグ数 + 26
                    = ( 4 + 2 ) + ( 0 × 4 + 6 ) + ( 2 + 2 + 12 ) + 2 + 26
                    = 56

ページ内レコード数  = ( ページ長 - 94 ) / レコード長                           (注1)
                    = ( 4096 - 94 ) / 56
                    = 71.46428571…
                    ≒ 71                                                         (注2)

プライム部スペース量 
                  = (( 総レコード数 / ページ内レコード数 ) / プライム部の使用率 + 1 )
                    × プライム部のページ長
                  = (( 30000 / 71 ) / 0.5 + 1 ) × 4096
                  = ( 423 / 0.5 + 1 ) × 4096                                  (注3)
                  = 3469312 (バイト)
                  = 3388 (K バイト)
                     [ページ数 = 3388 / 4 = 847
                     2n ≧ 847 → n = 10 
                     目安ページ数 = 210 + 1 = 1025]                             (注4)
                  = 1025×4k
                  → 4100 (K バイト)

オーバフロー部スペース量
     = (( 総レコード数 × オーバフロー率 / ページ内レコード数 ) / オーバフロー部の使用率 + 1 )
       × オーバフロー部のページ長 × 安全率
     = (( 30000 × 0.2 / 71 ) / 0.2 + 1 ) × 4096 × 1.3 
     = ( 85 / 0.2 + 1 ) × 4096 × 1.3                                         (注5)
     = 2268364.8 (バイト)
     → 2216 (K バイト)                                                            (注6)

注1) プライム部オーバフロー部ともにページ長が等しいためページ内レコード数も同じ

注2) 小数点切捨て

注3) 423は(30000/71)を小数点切上げで計算

注4) ページ数を2の巾乗化

注5) 85は(30000×0.2/71)を小数点切上げで計算

注6) スペース量をページ長の整数倍に補正


3

OBJECT構造のスペース量の見積り

次のような構造の製品写真(総レコード数:3000件)の所要スペース量を計算します。

CREATE TABLE STOCKS.製品写真 (
            製品番号   SMALLINT     PRIMARY KEY  NOT NULL ,
            製品写真   BLOB( 500K ) NOT NULL)

格納構造:OBJECT構造

ページ長:32Kバイト

安全率:1.3

論理レコード長    =  製品番号 + 製品写真
                  =     2     +  512000
                  =  512002

格納レコード長    =  ページ長 - 144
                  =  32768 - 144
                  =  32624

1 論理レコード
    必要ページ数  =  論理レコード長 / 格納レコード長
                  =   512002 / 32624
                  =   15.7
                  ≒   16    (注)

スペース量
      = ( 1論理レコード必要ページ数 × 総レコード数 + 1 ) × ページ長 × 安全率
      = ( 16 × 3000 + 1 ) × 32768 × 1.3
      = ( 48001 ) × 32768 × 1.3
      = 1996841.6 (K バイト)
      ≒ 1950 (M バイト)

注) 小数点切上げ


4

BTREE構造のスペース量の見積り

次のような構造の発注表(SEQUENTIAL構造/総レコード数:30000件)に対して、仕入価格と発注数を2次キーとしてインデックスを付加する場合の所要スペース量を計算します。

CREATE TABLE STOCKS.発注表 (
                              取引先     SMALLINT  NOT NULL,
                              取引製品  SMALLINT  NOT NULL,
                              仕入価格  INTEGER,
                              発注数量  SMALLINT,
                              PRIMARY KEY ( 取引先, 取引製品 )
                            )

格納構造:仕入価格と発注数量を2次キーとしたBTREE構造

ページ長(データ部):16Kバイト

ページ長(インデックス部):2Kバイト

使用率(データ部):0.5

使用率(インデックス部):0.5

圧縮率(データ部):0.3

圧縮率(インデックス部):0.5

【データ部】

エントリ長            = ( 仕入価格 + 発注数量 ) × ( 1 - キー圧縮率 ) + 20
                      = ( 4 + 2 ) × ( 1 - 0.3 ) + 20
                      ≒ 25                                                    (注1)

セクション長          = エントリ長 × 10 + 2
                      = 25 × 10 + 2
                      = 252

ページ内セクション数  = ( データ部のページ長 - 110 ) / セクション長
                      = ( 16384 - 110 ) / 252
                      ≒ 64                                                    (注2)

ページ内エントリ数    = ( セクション長 / エントリ長 ) × ページ内セクション数 ×
                           データ部の使用率
                      = ( 252 / 25 ) × 64 × 0.5
                      ≒ 10 × 64 × 0.5                                       (注3)
                      = 320

データ部のページ数    = 表のレコード数 / ページ内エントリ数
                      = 30000 / 320
                      = 93.75
                      ≒ 94                                                    (注1)

データ部のスペース量  = ( データ部のページ数 + 1 ) × データ部のページ長 × 安全率
                      = ( 94 + 1 ) × 16384 × 1.3
                      = 2023424 (バイト)
                      = 1976 (K バイト)
                      → 1984 (K バイト)                                       (注4)

注1) 小数点切上げ

注2) 小数点切捨て

注3) (252/25)は小数点切捨て

注4) スペース量をページ長の整数倍に補正


【インデックス部】

エントリ長               = ( 仕入価格 + 発注数量 + 12 ) × ( 1 - キー圧縮率 ) + 10
                         = ( 4 + 2 + 12 ) × ( 1 - 0.5 ) + 10
                         = 19

セクション長             = エントリ長 × 10 + 2
                         = 19 × 10 + 2
                         = 192

ページ内セクション数     = ( インデックス部のページ長 - 110 ) / セクション長
                         = ( 2048 - 110 ) / 192
                         ≒ 10                                                    (注1)

ページ内エントリ数       = ( セクション長 / エントリ長 ) × ページ内セクション数 × 
                              インデックス部の使用率
                         = ( 192 / 19 ) × 10 × 0.5
                         ≒ 10 × 10 × 0.5
                         = 50                                                    (注2)

インデックスレベル       = L → 以下の条件を満たす値
                                 ( ページ内エントリ数 ) L ≧ データ部のページ数
                                 50L ≧ 94
                         = 2

                          インデックスレベル
インデックス部のページ数 = Σ ( データ部のページ数 / (ページ内エントリ数i )) i=1
2
= Σ ( 94 /( 50i )) i=1
= ( 94 / 50 ) + ( 94 / 50 / 50 ) ≒ 2 + 1 (注3) = 3 インデックス部のスペース量 = ( インデックス部のページ数 + 1 ) × インデックス部のページ長 × 安全率 = ( 3 + 1 ) × 2048 × 1.3 = 10649.6 (バイト) ≒ 11 (K バイト) → 12 (K バイト) (注4)

注1) 小数点切上げ

注2) (192/19)は小数点切捨て

注3) 小数点切上げ

注4) スペース量をページ長の整数倍に補正


列の長さの見積り

列のデータ属性

長さ(バイト)

固定長

CHARACTER(n)

n

NATIONAL CHARACTER(n)

n × 2

NUMERIC(p,q)

j     (注1)

DECIMAL(p,q)

j     (注1)

SMALLINT

2

INTEGER

4

REAL

4

DOUBLE PRECISION

8

TIMESTAMP

7

DATE

4

TIME

3

INTERVAL YEAR(p)
[ TO MONTH ]

m     (注2)
m+1   (注2)

INTERVAL MONTH(p)

m     (注2)

INTERVAL DAY(p)
[{ TO HOUR |
    TO MINUTE |
    TO SECOND }]

m     (注2)
m+1   (注2)
m+2   (注2)
m+3   (注2)

INTERVAL HOUR(p)
[{ TO MINUTE |
    TO SECOND }]

m     (注2)
m+1   (注2)
m+2   (注2)

INTERVAL MINUTE(p)
[ TO SECOND ]

m     (注2)
m+1   (注2)

INTERVAL SECOND(p)

m     (注2)

可変長

CHARACTER VARYING(n)

a     (注3)

NATIONAL CHARACTER VARYING(n)

a × 2 (注3)

BLOB(nk)

b × 1024 + 6(注4)

注1) jはpの値に依存して以下の値になります。

pの値(精度)

j

1 ~ 2

1

3 ~ 4

2

5 ~ 6

3

7 ~ 9

4

10 ~11

5

12 ~14

6

15 ~16

7

17 ~18

8

注2) mはpの値に依存して以下の値になります。

pの値

m

1 ~2

2

3 ~4

3

5 ~9

5

注3) aは平均文字数です。最大n文字となります。

注4) bは平均データ長(バイト)です。最大nキロバイトとなります。