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Interstage Information Storage V10.0.0 導入ガイド

2.4.2 ファイルシステムの設計

ここでは、DSSファイルシステムの運用設計のポイントを説明します。DSSファイルシステムの機能の詳細については、“解説書”の“3.2 共用ファイルシステム機能の説明”を参照してください。

DSSファイルシステムを作成/使用する際に考慮すべき以下の項目について説明します。


2.4.2.1 ファイルシステムオペレーションとシステム負荷の影響

DSSファイルシステムはファイルシステムの厳密な一貫性を維持するため、以下のような操作を行うと、ファイルシステム処理が顕著に遅くなることがあります。

また、ファイルシステムのメタデータを管理するDSS サーバに CPU、I/O、メモリ負荷が集中することがあります。ファイルの作成/削除/ファイルの拡張など、ファイルシステムメタデータの更新を伴う操作が頻繁に発生する場合です。このような場合には、ファイルシステムのメタデータ領域、アップデートログ領域、そしてファイルデータ領域のディスク配置を最適化することで、ファイルシステム処理性能を改善できることがあります。また、DSS サーバの CPU 処理能力を大きくしたりメモリを増設することで、ファイルシステムの処理性能を改善できることがあります。


2.4.2.2 ノードレイアウト

DSSファイルシステムでは、1つのファイルシステムを、DSSサーバを含めて最大 32ノードまで同時に共用できます。

ファイルシステムのメタデータを管理する DSS サーバがダウンしても、ファイルシステムの処理は継続できます。

このような運用を行うためには、DSSサーバを冗長化する構成を選択して、DSSサーバを 2つ選択します。プライマリ MDS を動作させたいノードをプライマリ DSS サーバ、セカンダリ MDS を動作させたいノードはセカンダリ DSS サーバとして設定します。

参照

DSS サーバの設定による影響の詳細については、“解説書”の“3.2.2 ダウンリカバリ機能”を参照してください。

上記の“2.4.2.1 ファイルシステムオペレーションとシステム負荷の影響”で説明したように、以下のことを考慮する必要があります。

注意

セカンダリ MDS が起動される場合、プライマリ MDS の起動の待ち合わせを行うため、起動に時間がかかる場合があります。


2.4.2.3 ディスクレイアウト

DSSファイルシステムでは、ファイルシステムを構成するディスク媒体上の領域を、以下の 3つに分けています。

プライマリ MDS はメタデータ領域、アップデートログ領域の 2つの領域を参照/更新します。AC はファイルデータ領域を参照/更新します。

DSSファイルシステムは、1つのパーティションで構成することも、複数のパーティションで構成することもできます。複数のパーティションで構成した場合、I/O 処理性能上の効果が得られます。

例えば、ファイルデータ領域への I/O 集中でファイルシステム処理性能ネックとなることが予想される環境では、ファイルデータ領域を複数のパーティションで構成することで、ファイルデータ領域への I/O を分散することができます。

また、ファイルデータ領域を代表パーティションから分離した場合、メタデータ領域およびアップデートログ領域への I/O と、ファイルデータ領域への I/O とを分離できるため、ファイルデータアクセスのための I/O 処理性能を改善することができます。

参照

ディスクレイアウトの詳細については、“解説書”の“付録D DSSファイルシステムの構造”を参照してください。


2.4.2.4 LAN の選択

DSSファイルシステムでは、ファイルシステムのメタデータ情報の取得、一貫性維持のための MDS への通信を LAN 経由で行っています。

以下の観点において、LAN 経路の設定を行ってください。

DSSファイルシステムでは、LAN の負荷が大きくならないように設計しています。しかし、運用によっては高負荷になることがあります。

また、他の処理により LAN の負荷が高い場合、DSS ファイルシステムへのアクセス処理のレスポンス時間が増大することがあります。LANの負荷状況は netstat(8) で調べることができます。

ファイルシステムへの負荷が大きい場合や、レスポンス時間への重要度が高い場合は、以下の構成をお勧めします。

また、DSSファイルシステムでは、MDS と他ノードの AC 間の通信ができなくなった場合、該当ノードでファイルシステムの閉塞処理を行います。これは、AC 側でファイルシステム処理の継続ができなくなったと判断することにより行われます。通信経路の故障を回避するためには以下の構成をとることをお勧めします。

参照

GLS の設定の詳細については、“PRIMECLUSTER Global Link Services 説明書 (伝送路二重化機能編) (Linux版)”を参照してください。


2.4.2.5 将来の拡張に備えて

sfcmkfs(8) による DSSファイルシステム作成時には、デフォルト設定ではある程度の拡張を考慮したファイルシステム構成を取りますが、将来、ファイルシステムを拡張することが予想される場合は、下のパラメタ値が将来の拡張で十分であるかを確認してください。

たとえばパーティション追加機能については、sfcmkfs(8) の -o maxvol パラメタを超えて追加はできません。この場合は、ファイルシステムを拡張するには、データをバックアップして一旦削除し、新規ファイルシステムを作成し、データをリストアする必要があります。

したがって、将来のファイルシステム拡張に備えて、拡張する最大サイズを予測し、ファイルシステムを作成してください。

将来の拡張に備えて確認すべきパラメタ

sfcmkfs(8)のパラメタ

省略値

意味

maxdsz

指定時のファイルデータ領域サイズ

最大ファイルデータ領域サイズ(メガバイト)

maxnode

16

最大共用ノード数

maxvol

16

最大構成パーティション数


2.4.2.6 ファイルシステムサイズ、データブロックサイズ、最大ファイルサイズの関係

データブロックサイズは、値を指定しないでファイルシステムを作成した場合、ファイルデータ領域のサイズ、またはファイルシステムを構成する最大パーティションサイズをもとに、自動で算出されます。ファイルシステムサイズが大きくなると、データブロックサイズも大きくなります。また、データブロックサイズが大きくなると、最大ファイルサイズも大きくなります。

以下に、データブロックサイズを指定しないでファイルシステムを作成した場合の、ファイルシステムサイズ、データブロックサイズ、最大ファイルサイズの関係を示します。

表2.20 ファイルシステムサイズ、データブロックサイズ、最大ファイルサイズの関係

ファイルシステムサイズ

データブロックサイズ

最大ファイルサイズ

~1テラ

8キロ

1テラ -8キロ

(1テラ+1)~2テラ

8キロ~16キロ

(1テラ -8キロ) -(2テラ -16キロ)

(2テラ+1)~4テラ

8キロ~32キロ

(1テラ -8キロ) -(4テラ -32キロ)

(4テラ+1)~8テラ

8キロ~64キロ

(1テラ -8キロ) -(8テラ -64キロ)

(8テラ+1)~16テラ

16キロ~128キロ

(2テラ -16キロ) -(16テラ -128キロ)

(16テラ+1)~32テラ

32キロ~256キロ

(4テラ -32キロ) -(32テラ -256キロ)

(32テラ+1)~64テラ

64キロ~512キロ

(8テラ -64キロ) -(64テラ -512キロ)

(64テラ+1)~128テラ

128キロ~1メガ

(16テラ -128キロ) -(128テラ -1メガ)

(128テラ+1)~256テラ

256キロ~1メガ

(32テラ -256キロ) -(128テラ -1メガ)

(256テラ+1)~512テラ

512キロ~1メガ

(64テラ -512キロ) -(128テラ -1メガ)

(512テラ+1)~1ぺタ

1メガ

128テラ―1メガ

(1ペタ+1)~2ペタ

2メガ

256テラ―2メガ

※ 単位はバイト

注意

  • データブロックサイズは、ファイルデータ領域のサイズから算出されます。ファイルシステムサイズには、ファイルデータ領域のサイズだけでなく、メタデータ領域やアップデートログ領域のサイズなども含まれるため、上記の表のファイルシステムサイズの各境界値付近では、データブロックサイズが 1段階小さい値になる場合があります。

  • 上記の表のデータブロックサイズが、ファイルシステムサイズに対して使用可能な最小のデータブロックサイズです。これよりも小さいデータブロックサイズを使用することはできません。

参照

ファイルシステムのデータブロックサイズはファイルシステム作成時に変更することができます。

詳細は、“コマンドリファレンス”の sfcmkfs(8) を参照してください。