マルチサーバ管理機能を用いてサイトを運用する場合の基本的な設計項目について説明します。
■ 資源と配置先の関係
マルチサーバ管理機能では、一括操作機能の対象となるサービスやワークユニットなどの資源に対して、配置先を指定します。配置先はサーバグループまたは単体運用の管理対象サーバです。
上記の指定を行うことにより、その資源の操作対象サーバが決定します。
同一の業務を運用するサーバ群を、一つのサーバグループとして管理することで、そのサーバ群に対して、一括した運用管理が行えるようになります。また、IJServerは、多階層(Webサーバ、Servletコンテナ、EJBコンテナ)で構成されることがありますが、このような場合、階層毎にサーバグループを構成し、配置することで、一つのIJServerとして運用管理できます。
たとえば、ワークユニットAの配置先をサーバグループAとした場合、ワークユニットAは、サーバグループAに所属するすべての管理対象サーバに配置されます。このワークユニットAに対する起動操作を行うと、サーバグループAに所属する各管理対象サーバ上に配置されたワークユニットAがすべて起動されます。
Interstageシステムなどのように、サーバに対して1対1で存在する資源の場合には、サーバグループや単体運用の管理対象サーバが、直接の操作対象になります。
たとえば、サーバグループAに対してシステムの環境設定を更新した場合、サーバグループAに所属するすべての管理対象サーバのシステム環境設定が更新されます。
■ 異なるバージョンのInterstageがインストールされている配置先の資源
マルチサーバ管理機能では、管理サーバのバージョンを含めて、5世代古いバージョンの管理対象サーバ(管理サーバのバージョン12.0の場合はバージョン8.0以上のサーバ)までを同時に管理できます。
Interstageの資源は、インストールされているバージョンによって機能範囲が異なる場合があります。その場合、資源の機能範囲は指定された配置先にインストールされているInterstageのバージョンの機能範囲となります。たとえば、Interstage 7.0の配置先に配置されたIJServerはInterstage 7.0の機能範囲となり、Interstage 8.0の配置先に配置されたIJServerはInterstage 8.0の機能範囲となります。
IJServerは、多階層(Webサーバ、Servletコンテナ、EJBコンテナ)で構成され複数のサーバグループまたは単体運用の管理対象サーバを配置先とすることがあります。このような場合、IJServerの配置先はすべて同じバージョンのInterstageがインストールされている必要があります。
■ サイト内の同名資源の扱い
ワークユニットなど、名前を付けることができる資源は、配置先を分けることで、サイト内に同名の資源を複数作成できます。この場合、資源名は同名でも別の資源として管理されます。
したがって、業務内容の異なる同名のワークユニットでも、同一サイト内で運用することができます。
■ リレーション(ライン型/メッシュ型/IPCOMを使用する)
IJServerを多階層システムで運用する場合、各階層のサーバ間の連携方式(リレーション)を以下の方式から選択します。
ライン型
ライン型は、前段のサーバグループに所属する管理対象サーバと、後段のサーバグループに所属する管理対象サーバを1対1で関連付ける方式です。関連付けられる管理対象サーバは、サーバグループ内通番が同じ管理対象サーバです。業務データは、関連付けられたサーバ間でのみ通信されます。
ライン型はIJServerを運用する以下のサーバ間で指定できます。
Webサーバ(Webサーバコネクタ)とServletコンテナの間
ServletコンテナとEJBコンテナの間
ライン型で1対1に関連付けられた管理対象サーバのうち、片方をサーバグループから削除した場合は、削除された管理対象サーバに割り当てられていたグループ内通番は欠番となるため、関連付けは解除されます。ライン型のリレーションを選択したサーバグループ間で、関連付けられる対象が存在しない管理対象サーバは、一括操作によるIJServerワークユニットの起動、停止処理の際には起動、停止処理の対象から外れます。
メッシュ型
メッシュ型は、前段のサーバグループに所属する管理対象サーバと、後段のサーバグループに所属する管理対象サーバを網羅的にn対mで関連付ける方式です。業務データの通信は、前段のサーバから後段のサーバ群に対し、分散して行われます。
メッシュ型は、IJServerを運用するWebサーバ(Webサーバコネクタ)とServletコンテナの間で指定できます。
Webサーバ(Webサーバコネクタ)からServletコンテナへのリクエスト振り分けは各Webサーバごとに処理中リクエストが最も少ないところに振り分けられます。ただし、セション管理を使用している場合には、セションを生成したServletコンテナと同じServletコンテナに以降のリクエストも振り分けられます。
IPCOMを使用する
IPCOMを使用して負荷分散を行う方式です。IPCOMを使用する場合は、前段のサーバグループに所属する管理対象サーバと後段のサーバグループに所属する管理対象サーバを網羅的にn対mで関連付ける方式です。業務データの通信は、前段のサーバから後段のサーバ群に対し、分散して行われます。
“IPCOMを使用する”は、以下のサーバ間で指定できます。
Webサーバ(Webサーバコネクタ)とServletコンテナの間
ServletコンテナとEJBコンテナの間
ライン型、メッシュ型、IPCOMの使用は、サーバグループ間ごとに指定します。たとえば、WebサーバとServletコンテナ間はメッシュ型とし、ServletコンテナとEJBコンテナ間はライン型とするシステム構成も構築できます。
■ 業務LANのIPアドレスと管理LANのIPアドレス
サイトに所属する管理対象サーバには、IJServerで業務を運用する場合に使用する業務LANのIPアドレスと、管理サーバから管理対象サーバを操作/管理するために使用する管理LANのIPアドレスを指定できます。
業務用のLANと管理用のLANを分けた環境を構築し、マルチサーバ管理機能を運用する場合には、各LAN上のIPアドレスを指定します。このように、LANを分けない場合には、同一のIPアドレスを指定します。
IPアドレスの種類 | 説明 |
管理LANのIPアドレス | システムの運用管理のために使用するIPアドレスです。管理サーバが、管理対象サーバのInterstage JMXサービスに対して要求を送信する時に、宛先のIPアドレスとして使用します。 |
業務LANのIPアドレス | 業務で使用するためのIPアドレスです。業務用のLANと管理用のLANを分ける場合には、業務用のLAN上のIPアドレスを指定します。 |
管理対象サーバに複数のIPアドレスを持つ場合で、かつすべてのIPアドレスに対して、管理サーバからpingコマンドを実行ても接続できない場合には、管理対象サーバで isjmxchangedefコマンドを使用してInterstage JMXサービスのカストマイズをおこなう必要があります。詳細は“リファレンスマニュアル(コマンド編)”の“isjmxchangedef”を参照してください。
■ 運用設計
Interstage管理コンソールは、基本的に、以下のような開発や保守などのフェーズで使用します。
業務資源(アプリケーション等)の開発
システム環境の構築
定常運用中の業務更新
小規模環境における運用操作
業務の定常運用においては、Systemwalkerなどの運用管理製品を使用し、管理サーバやサイトに所属する管理対象サーバの運用操作および監視を行うことを推奨します。
■ サイトへのサーバ追加時の認証について
サイトへのサーバ追加を行う場合、その操作者が、追加対象サーバの管理者権限を持つ必要があります。本権限に対する認証は、サイトへのサーバ追加操作時に、追加対象サーバの管理者権限を持つユーザのユーザ名とパスワードを指定することで行われます。サイトへのサーバ追加が成功した場合、管理サーバのInterstage管理コンソールにログインすることで、追加を行ったサーバ(管理対象サーバ)に対する操作を行えるようになります。
なお、上記の認証は、サイトへのサーバ追加操作時のみに行われますので、サイトへのサーバ追加操作完了後、サーバ追加時に指定したユーザ名、パスワードを変更しても影響はありません。
ユーザ名/パスワードへJIS2004で追加になった文字を含む文字列を指定することはできません。