Linkexpress 導入ガイド
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第3章 Linkexpressサーバの導入> 3.4 多重度制御機能の設計

3.4.1 回線の同時使用数の調整

転送処 (ファイル転送、メッセージ転送、ジョブ連携処理)を行うことによるシステムおよび通信パス単位での回線の同時使用数のことを多重度と呼びます。Linkexpressはこの多重度を制限する機能を提供しています。多重度の上限値を設定しない場合、Linkexpressが動作するサーバの性能およびシステム設定により、サーバ自体が不安定になる可能性があります。このため、ネットワーク定義で最大多重度を指定することを推奨します。

[多重度数のカウントタイミング]

多重度は、転送処理のコネクション数でカウントしていません。多重度をカウントアップするタイミングは、転送処理を受け付けた時点です。また、多重度をカウントダウンするタイミングは、転送処理で使用したリソースの開放後です。このため、多重度は転送処理のリソースを管理する指標となります。

また、転送処理の起動側利用者が転送完了を認識したタイミングでは、応答側はリソース開放できておらず多重度がカウントダウンできていないことがあります。このタイミングで、起動側から続けて転送要求を発行すると応答側では多重度オーバを検出する可能性があります。このため、多重度の見積もり方法としては、起動側:1に対して、応答側:2の採用を推奨します。なお、多重度数が大きい場合は、応答側多重度は起動側多重度×1.5 などの値を採用してください。

[定義方法]

最大多重度の定義は、自システム全体の指定と、自システム全体の指定値の範囲で通信パス単位の指定の2段階で行います。通信パス単位の最大多重度は、起動側多重度と応答側多重度を別個に定義します。
環境定義ユーティリティで指定する場合、自システム全体の最大多重度は自サーバの通信環境から、「多重度」を指定します。通信パス単位の最大多重度は通信パスの設定情報から、「要求用転送多重度」と「応答用転送多重度」を指定します。
ネットワーク定義をエディタで編集する場合、自システム全体の最大多重度はcomdef定義命令のscaleオペランド、通信パス単位の最大多重度はpath定義命令のreq_scaleオペランドとind_scaleオペランドで指定します。

comdef定義命令については「6.5.5.2 comdef定義命令」を参照してください。

path定義命令については「6.5.5.4 path定義命令」を参照してください。

[多重度の構成]

多重度は通信パスの種類、および業務の内容により値の構成が異なります。多重度の構成を以下に示します。

通信パス単位の多重度は通信パスの種類に応じて(1)〜(5)の多重度数を計算し、算出します。(注)

  1. 転送処理によって発生する多重度です。
  2. (1)の転送処理で起動されたジョブの結果通知を相手システムに転送するための多重度です。
  3. (1)の転送処理で起動された分散型システム連携の応答側処理が転送結果通知または格納結果通知を行うための多重度です。
  4. 制御サーバから業務を操作するための多重度です。
  5. リアルタイムモニタなど、業務監視を行うための多重度です。

    自システム全体の多重度は上記の見積もりで得られた値の総和として算出します。

注) ダウンロード型システム連携の処理に対しては多重度の計算を行いません。

[多重度の見積もり方法]

通信パス単位で必要となるデータ転送の最大多重度の見積もり方法を以下に示します。表中の括弧つき数字は多重度の構成要素に対応しています。上記の説明を参考にしてください。
また、lxdspscaleコマンドにより、ファイル転送サービスの多重度を表示します。lxdspscaleコマンドの詳細については「コマンドリファレンス」の「7.1 lxdspscaleコマンド」説明を参照してください。なお、本コマンドは、Linkexpress V4.0L10相当(「マニュアル体系と読み方」の「バージョン・レベルの表記方法」参照)以降のサーバで利用可能です。

注) ジョブ結果通知を行わないジョブについては(2)に多重度を加算する必要はありません。

[多重度指定の範囲]

各単位での指定範囲および指定値の関係は以下のとおりです。

注1) Linkexpress for Windows V1.1L20相当以前のUNIXサーバの場合、上限値は64です。
Linkexpress V3.0L20相当以前のサーバの場合、上限値は99です。
注2) 0を指定、または省略した場合、最大多重度の256が採用されます。
注3) 0を指定、または省略した場合、comdef定義命令のscaleオペランドの値が採用されます。

[最大多重度を指定した運用の実施]

システム全体の多重度は、各通信パス単位に指定した多重度の総和か、またはそれ以下の値を指定することを推奨します。なお、システムおよび通信パスの多重度が最大多重度を超えると多重度オーバが発生します。この場合は多重度の調整を行ってください。
Linkexpressは多重度をコネクション単位ではなく、転送時に利用するリソースの獲得開放単位で計算しています。Linkexpressが転送完了通知を行った時点ではコネクションの切断が完了していないため、ファイル転送で使用した多重度は使用中の多重度数に含まれています。なお、多重度が減少するのは、コネクションを切断し、該当するメモリ情報をすべて解放した後になります。
また、最大多重度はCPU、物理メモリ等のサーバ性能や、仮想メモリ等のシステム設定およびLinkexpressと同時に動作する他のアプリケーションプログラムにより、大きく影響を受けます。Linkexpressおよび運用時同時に動作するアプリケーションプログラムを動作させる運用テストの実施を推奨します。

[多重度オーバ時の動作と多重度の調整方法]

データ転送の多重度が最大多重度を超えた時の動作は、comdef定義命令のscaleオペランドに多重度オーバ時の動作として指定します。多重度オーバが発生した場合、新規の転送処理はこの指定に従ってLinkexpress内で待ち合わされるか、または多重度オーバによりデータ転送を異常終了します。

scaleオペランドについては「6.5.5.7.49 scaleオペランド(comdef定義命令)」を参照してください。
転送要求の待ち合わせが発生した場合は、データ転送の多重度が最大多重度を下回り次第、処理を順次再開します。なお、応答側で多重度オーバが発生した時はscaleオペランドで指定した多重度オーバ時動作にかかわらず異常終了します。
多重度オーバが発生した場合の多重度の調整方法を以下に示します。

システム全体の多重度 :
通常、システム全体の最大多重度は、各通信パスに指定した最大多重度の総和か、またはそれ以下の値を設定します。システム全体の最大多重度をその値より小さくした場合は、多重度オーバ時に要求を待ち合わせるように指定してください。待ち合わせが発生すると、転送処理の開始は遅れますが、起動側の処理は保証されます。
通信パスの起動側多重度 :
起動側処理の場合、Linkexpressはscaleオペランドの指定に従って多重度オーバ時の動作を決定します。多重度オーバ時に要求を待ち合わせるように指定したシステムの場合、待ち合わせ処理によって転送処理が保証されます。転送処理を異常終了するように指定したシステムでは、通信パス単位の指定で多重度オーバが発生しないよう起動側多重度を設定してください。
通信パスの応答側多重度 :
応答側処理の場合、Linkexpressは多重度オーバが発生すると、scaleオペランドで指定した多重度オーバ時動作にかかわらず、相手システムからの要求を拒否します。そのため、応答側処理の転送処理は異常終了します。多重度オーバによる処理異常を防ぐには、必ず通信パス単位の指定で多重度オーバが発生しないよう応答側多重度を設定してください。

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