ページの先頭行へ戻る
PRIMECLUSTER 導入運用手引書 4.7<Cloud Services 編>

26.2.1 ネットワークの引継ぎ

PRIMECLUSTERは、パブリッククラウド上のクラスタシステムにおけるネットワークの引継ぎのためにアーキテクチャパターンを提供しています。クラスタシステムの円滑な設計のために、これらのアーキテクチャパターンから適したものを選択してください。

ネットワークの引継ぎのためのアーキテクチャパターンと各パターンに適したシーンを以下に示します。

表26.1 ネットワークの引継ぎのためのアーキテクチャパターンと適用シーン

適用シーン

アーキテクチャパターン

留意事項

オンプレミスまたはほかのVNet内のクライアントが利用するバックエンドサーバのクラスタシステム

内部ロードバランサーによるネットワーク引継ぎ(推奨)

  • オンプレミスなどVNet外のクライアントシステムからアクセスを行う場合は、VPN接続が必要です。

  • クラスタノードからフロントエンドIP(引継ぎIP)へのアクセスが必要なミドルウェアでは、本アーキテクチャを使用できません。

  • 内部ロードバランサーで設定可能なフロントエンドIPはIPv4のみで1つだけとなります。

  • 内部ロードバランサーは1クラスタシステムに1つ使用可能とします。そのため、相互待機構成の場合は、セカンダリIP付け替えによるネットワーク引継ぎ機能と内部ロードバランサーを組み合わせて使用する必要があります。

セカンダリIP付け替えによるネットワーク引継ぎ

  • オンプレミスなどVNet外のクライアントシステムからアクセスを行う場合は、VPN接続が必要です。

  • VPNサービスを使用した際に、内部ロードバランサーによるネットワーク引継ぎを使用できない場合は本アーキテクチャパターンを使用してください。

  • クラスタアプリケーションの切替えの際にAzure コマンドラインインタフェースを使用してIPの付け替えを行うため、切替え時間が長くなります(1IPあたり数十秒)。

26.2.1.1 内部ロードバランサーによるネットワークの引継ぎ

同一VNet内のクライアントシステムから、クラスタノードへのアクセスを許可するアーキテクチャパターンです。オンプレミスなどVNet外のクライアントシステムからアクセスを行う場合は、VPN接続が必要です。アプリケーション層はオンプレミス、データベースアクセス層はクラウド、といったようなハイブリッド構成が可能です。

本アーキテクチャパターンでは、クラウドサービスが提供するAzure内部ロードバランサーを使用して、クラアントからの接続をクラスタの運用ノードに振り分けることで、ネットワークの引継ぎを実現します。クライアントが、内部ロードバランサーのIPアドレス(以下、引継ぎIPアドレス)に接続すると、内部ロードバランサーは、その通信を運用ノードのIPアドレスに転送します。クラスタアプリケーションが切り替わった場合には、内部ロードバランサーは新運用ノードのIPアドレスに通信を転送します。

図26.1 内部ロードバランサーによるネットワーク引継ぎ

VPN接続を実現するためには、クライアント環境が配備されたネットワーク側でVPNの設定や機器が必要になります。

26.2.1.2 セカンダリIP付け替えによるネットワークの引継ぎ

同一VNet内のクライアントシステムから、クラスタノードへのアクセスを許可するアーキテクチャパターンです。オンプレミスなどVNet外のクライアントシステムからアクセスを行う場合は、VPN接続が必要です。アプリケーション層はオンプレミス、データベースアクセス層はクラウド、といったようなハイブリッド構成が可能です。内部ロードバランサーによるネットワーク引継ぎを使用できない場合は本アーキテクチャパターンを使用してください。

本アーキテクチャパターンでは、Azureコマンドラインインタフェースを使用して、運用ノードの仮想NICに対してセカンダリIPを割り当てることで、ネットワークの引継ぎを実現します。クライアントからの接続は、セカンダリIPを使用して行います。クラスタアプリケーションが切り替わった場合には、セカンダリIPを旧運用ノードの仮想NICから削除し、新運用ノードの仮想NICに付け替えます。

注意

本アーキテクチャパターンを使用した場合、クラスタアプリケーションの切替えの際にAzure コマンドラインインタフェースを使用してIPの付け替えを行うため、切替え時間が長くなります(1IPあたり数十秒)。

図26.2 セカンダリIP付け替えによるネットワーク引継ぎ

VPN接続を実現するためには、クライアント環境が配備されたネットワーク側でVPNの設定や機器が必要になります。