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PRIMECLUSTER  導入運用手引書 4.7

G.1 VMware環境でのクラスタシステム

VMware環境でPRIMECLUSTERを使用する場合は、ESXiホスト上のゲストOS間クラスタリング(仮想マシン機能)が可能です。

VMware環境において、ゲストOSに異常が発生すると、ゲストOS上のアプリケーションが動作できない状態となります。ゲストOSにPRIMECLUSTERを適用することで、異常発生時には運用系のゲストOSから待機系のゲストOS上へアプリケーションの切替えが発生し、信頼性の高いゲストOS環境を実現します。

強制停止方式

VMware環境でのクラスタシステムには、“VMware vCenter Server連携機能”と“I/Oフェンシング機能”を使用する2種類の強制停止方式があり、いずれかの強制停止方式を選択する必要があります。

ゲストOSや仮想マシンの異常発生時に、運用ノードを確実に停止してから業務の切替えが可能なため、通常は

VMware vCenter Server連携機能を使用した強制停止方式を設定することを推奨します。

ただし、以下の場合には、I/Oフェンシング機能による強制停止方式を設定してください。

  • VMware vCenter Serverを使用できない場合、または、ゲストOSからVMware vCenter Serverにアクセス(vCenter Serverと通信、または操作)できない場合

  • PRIMECLUSTER 4.3A40以前でI/Oフェンシング機能を使用しているVMware環境からアップグレードする場合

注意

  • I/Oフェンシング機能による強制停止方式使用時には、下記の注意点があります。

    • クラスタインタコネクトの障害によりクラスタパーティションが発生した場合、生存優先度に関わらず、クラスタアプリケーションが起動しているゲストOSがパニックします。

    • 業務の切替え時に運用ノードがパニックする場合、一時的に運用と待機の両方のゲストOSでクラスタアプリケーションの状態がOnlineになる場合がありますが、両方のゲストOSからの共用ディスクへの同時アクセスは防止されるため、業務への影響はありません。

  • VMware vCenter Server連携機能による強制停止方式では、ESXiまたはサーバ本体の異常発生時に業務の切替えは行われず、LEFTCLUSTER状態となりますが、VMware vSphere HAと組み合わせることで、ESXiまたはサーバ本体の故障時の業務の切替えも可能となります。

VMware vCenter Server連携機能を使用した強制停止(推奨)

ゲストOSの異常発生時、VMware vCenter Serverと連携してゲストOSの仮想マシンを電源停止することで業務の切替えを実現します。

本方式では、共用ディスクがないクラスタ環境や、1つのESXiホスト上のゲストOS間のクラスタ環境でも仮想マシンの強制停止が可能です。共用ディスクを使用する代わりに、VMware vSANを使ってデータを共有する構成も可能です。

図G.1 VMware環境でのクラスタシステム(VMware vCenter Server連携機能)

VMware vSphere HAと組み合わせることで、ESXiまたはサーバ本体の故障時の業務の切替えも可能となります。

図G.2 VMware環境でのクラスタシステム(VMware vCenter Server連携機能+VMware vSphere HA+VMware vSAN)

注意

vSphere HAと組み合わせた場合に、ESXiまたは本体の故障により別のESXiサーバで再起動した仮想マシンが、VMware vCenter Server連携機能により電源停止されることがあります。

I/Oフェンシング機能を使用した強制停止

SCSI-3 Persistent Reservation を排他制御機能として利用し、異常が発生したゲストOSをパニックにより停止させることで業務の切替えを実現します。VMware vCenter Server が不要なため、クラスタを構成する仮想マシン以外のサーバを用意する必要がありませんが、SCSI-3 Persistent Reservation に対応した RDM (Raw Device Mapping)接続の共用ディスクが必要です。

注意

以下の環境ではI/Oフェンシング機能による強制停止方式は使用できません。

  • 1つのESXiホスト上のゲストOS間のクラスタ環境

  • クラスタアプリケーションを構成するノード数が3ノード以上の環境

  • 共用ディスクを使用するクラスタアプリケーションが複数存在する環境

  • GDSサーバ間ミラーリング構成のディスクを使用する場合

  • 共用ディスクとしてVMware vSANのディスクを使用する場合

  • VMware vSphere HAを使用する場合

  • PRIMECLUSTER Wizard for SAP HANAを使用する場合

参考

I/Oフェンシング機能を使用したクラスタ構成では、SA_icmpシャットダウンエージェントを設定することで、ネットワーク(管理LAN/インタコネクト)経路でゲストOSの応答の有無を確認し、応答が無い場合に切替えを実施します。このため、異常が発生したゲストOSが完全に停止していない場合(OSハング状態等)、両方のゲストOSから共用ディスクに同時にアクセスされる可能性があります。I/Oフェンシング機能は、SCSI-3 Persistent Reservation を利用することで両方のゲストOSからの同時アクセスを防止します。(VMware vCenter Server連携機能を使用した構成では、異常が発生したゲストOSを完全に停止してから切替えを行うことで、両系アクセスを防止します。)

なお、確認に使用するネットワーク経路のNICが停止していた場合、そのネットワーク経路ではゲストOSの応答の有無を確認しません。すべてのネットワーク経路のNICが停止していた場合は、ゲストOSの応答の有無を確認できないため、切替えを実施しません。

引継ぎIPアドレスを登録しているクラスタシステムでは、切替え時に通信機器の経路情報が更新されるため、複数のゲストOSで引継ぎIPアドレスが活性化された状態となった場合でも、切替え先のノードにアクセスできます。ただし、異常が発生したゲストOSが完全に停止せず残り続けた場合、通信機器の経路情報が切替え元のノードに戻ることがあります。切替え先のノードから通信機器に対して60秒周期で経路情報を通知することで、誤って切替え元のノードにアクセスされる時間を短縮します。

図G.3 VMware環境でのクラスタシステム(I/Oフェンシング機能)

VMware vCenter Server連携機能とI/Oフェンシング機能による強制停止方式を比較した表は以下の通りです。

項目

強制停止方式

VMware vCenter Server連携機能(推奨)

I/Oフェンシング機能

構成

VMware vCenter Server

必須
(ゲストOSからVMware vCenter Serverにアクセス(vCenter Serverと通信、および操作)できることと、VMware vCenter Serverにクラスタの動作している仮想マシンの停止権限のあるユーザを作成することが必要)

必須ではない

同一 ESXiホスト上のゲストOS間でのクラスタ構成

不可

クラスタアプリケーションを構成するノード数

2~16ノード

2ノード

クラスタアプリケーション構成

制限なし

以下のいずれかのみ可能
・クラスタアプリケーションが1つのみ
・複数のクラスタアプリケーションのうち、共用ディスクがあるクラスタアプリケーションが1つのみ

生存優先度の設定

不可

(生存優先度に関わらず、クラスタアプリケーションが起動しているゲストOSがパニック)

共用ディスク

必須ではない
以下が使用可
・各ESXiホストからアクセス可能なデータストア上に作成した仮想ディスク
・RDM(Raw Device Mapping)接続のディスク
・VMware vSAN のディスク

注意:vSphere 6.7 Update 1より前の環境においては、クラスタノード間で共用するディスクは、仮想ディスク(データストア)、RDM、VMware vSANのいずれも、共用するESXiホスト数を8ホスト以内にする必要があります。共用するESXiホスト数が8ホスト以内であれば、クラスタノード数が16ノードまで共用可能です。
vSphere 6.7 Update 1以降の環境においては、8ホストより多くのホストをサポートすることが可能です。詳細は、VMware Knowledge Base “Enabling or disabling simultaneous write protection provided by VMFS using the multi-writer flag (1034165)”を参照してください。

必須
(SCSI-3 Persistent Reservation に対応したRDM (Raw Device Mapping)接続の共用ディスク)

以下は使用不可
・各ESXiホストからアクセス可能なデータストア上に作成した仮想ディスク
・VMware vSAN のディスク

ネイティブマルチパス(NMP)のパスポリシー

すべてサポート

「最近の使用」または「ラウンドロビン」のみサポート

VMware vSphere HAの使用

不可

PRIMECLUSTER Wizard for SAP HANAの使用

不可

その他の未サポートの構成・機能

・VMware vSphere FT
・VMware vSphere DRS
・VMware vSphere DPM
・スナップショット機能
・Data Protectionによるバックアップ
・仮想マシンのサスペンド

・VMware vSphere FT
・VMware vSphere DRS
・VMware vSphere DPM
・スナップショット機能
・Data Protectionによるバックアップ
・仮想マシンのサスペンド
・FCoEによるストレージ接続
・VMware vSphere vMotion
・VMware vSphere Storage vMotion

異常発生時の動作

クラスタインタコネクト異常

運用ノード、または、待機ノードが強制停止され、業務の切替え、または、待機ノードの切捨てが行われる

・SA_icmpにクラスタインタコネクトのみを指定した場合:
業務の切替えが行われるが、I/Oフェンシング機能によって旧運用ノードがパニックする場合がある

・SA_icmpにクラスタインタコネクトとそれ以外のネットワークを指定した場合:
業務の切替えは行われず、LEFTCLUSTER状態となる

運用系のゲストOSや仮想マシンの異常

運用ノードが強制停止され、業務の切替えが行われる

運用ノードがパニックし、業務の切替えが行われる

待機系のゲストOSや仮想マシンの異常

待機ノードが強制停止され、待機ノードの切捨てが行われる

待機ノードの切捨てが行われる(待機ノードはパニックしない) ※

ESXiまたはサーバ本体の故障

・VMware vSphere HAを有効にしている場合:
業務の切替え、または、待機ノードの切捨てが行われる

・VMware vSphere HAを有効にしていない場合:
PRIMECLUSTER単体では、業務の切替えは行われず、異常の発生したESXi上にあるノードはLEFTCLUSTER状態となる

業務の切替えが行われる(運用ノードはパニックする)、または、待機ノードの切捨てが行われる(待機ノードはパニックしない) ※

VMware vCenter Serverの故障

仮想マシンの強制停止不可

仮想マシンとVMware vCenter Serverとの間のネットワークの故障

仮想マシンの強制停止不可

異常発生時のダンプ採取

不可
(電源断による強制停止のみのため。そのため、クラスタノードの異常の原因を特定できないことがある)

保守時の制限事項

コールドマイグレーション使用時

なし

クラスタを構成する2ノードが同一のESXiホスト上で動作するようにマイグレーションした場合、ゲストOS、仮想マシン、クラスタインタコネクト異常時の業務切替えが行えなくなる。

※ I/Oフェンシング機能を使用している場合、待機ノードが一時的に動作しなくなったことで待機ノードの切捨てが行われます。その後、待機ノードが動作できるようになる場合、以下のように動作します。

SA_icmpにクラスタインタコネクトのみ指定した場合:
動作できるようになった待機ノードに業務の切替えが行われます。I/Oフェンシング機能によって旧運用ノードがパニックする場合があります。

SA_icmpにクラスタインタコネクトとそれ以外のネットワークを指定した場合:
業務の切替えは行われず、LEFTCLUSTER状態となります。待機ノードのOSを再起動してください。

注意

  • VMware vCenter Server連携機能とI/Oフェンシング機能の強制停止方式のどちらかを必ず設定してください。両方同時に設定する構成や、いずれの強制停止方式も設定しない構成はできません。