SAP ERP システムジョブの実行状態は、通常、投入元のSAP ERP スケジュールジョブの実行状態を通して監視しますが、直接監視することもできます。この他、XMIログの出力レベルの変更などのSAP ERP システムジョブに対する操作も行うことができます。
本節では、SAP ERP システムジョブの直接監視、操作について説明します。
SAP ERP システムジョブの実行状態を直接監視するには、r3statコマンドを使用します。r3statコマンドは、Systemwalker Operation Manager サーバのコマンドラインから入力します。r3statコマンドの使用例を以下に示します。
$ r3stat example
“example”は、システム導入時に設定したセション開設用情報名です。この例では、r3statコマンドは、“example”に設定されたSAP ERP システムに接続し、そこで実行されているSAP ERP システムジョブの状態を表示します。
表示されるSAP ERP システムジョブの実行状態は、以下のとおりです。
SAP ERP システム上で実行中です。投入元のSAP ERP スケジュールジョブの状態表示は、“実行中”になります。
SAP ERP システム上で実行待ちです。投入元のSAP ERP スケジュールジョブの状態表示は、“実行中”になります。
SAP ERP システム上で実行待ちです。readyよりも実行優先度が低い状態です。投入元のSAP ERP スケジュールジョブの状態表示は、“実行中”になります。
SAP ERP システム上で実行待ちです。releasedよりも実行優先度が低い状態です。投入元のSAP ERP スケジュールジョブの状態表示は、“実行中”になります。
SAP ERP システム上で異常終了しました。投入元のSAP ERP スケジュールジョブの状態表示は、“異常終了”になります。また、Systemwalker Operation ManagerでSAP ERP スケジュールジョブを強制終了した場合も“terminated”になります。この場合、投入元のSAP ERP スケジュールジョブの状態表示は、“強制終了”になります。
SAP ERP システム上で正常終了しました。投入元のSAP ERP スケジュールジョブの状態表示は、“正常終了”になります。
参考
SAP ERP システムジョブの実行結果を確認するには、XMIログを参照します。SAP ERP システムジョブが出力したXMIログは、[監視-ジョブ]ウィンドウ-[前回履歴]シートで参照できます。
SAP ERP システムジョブの稼働実績をCSV形式で出力することができます。稼働実績をCSV形式で出力するには、r3statコマンドの“-v”オプションを使用します。出力されたCSVファイルを表計算ソフトに読み込んでグラフ化すれば、ジョブの稼働実績が一目で分かります。システムの負荷分散などを検討する時に便利です。
出力される項目は、終了コード、開始日付、開始時刻、終了日付、終了時刻、およびSAP ERP システムジョブの名前です。
稼働実績をCSV形式で出力する時のコマンドの使用例およびコマンドに指定するオプションと値を以下に示します。
コマンドの使用例
$ r3stat -v -f file01 example
コマンドに指定するオプションと値
“-f”オプション
“-f”オプションには、SAP ERP システムジョブの管理ファイルを指定します。SAP ERP システムジョブの管理ファイルとは、r3jobファイルまたはこのファイルを改名したファイルのことです。このファイルには、SAP ERP システムジョブのジョブ名とジョブ番号が管理されています。
指定した“example”
“example”は、システム導入時に登録したセション開設用情報名を指定します。
上記の例では、r3statコマンドは、セション開設用情報“example”にしたがってSAP ERP システムに接続し、SAP ERP システムジョブの管理ファイル“file01”で管理されているSAP ERP システムジョブについて情報を収集します。収集した情報は、CSV形式で出力します。
注意
SAP ERP システムジョブの管理ファイルについての注意
SAP ERP システムジョブの管理ファイルは、一定期間ごとに名前を変更するか、削除してください。名前の変更や削除を行わない場合、SAP ERP システムジョブの管理ファイルにより、ディスクの空き容量が不足し、システムが正常に動作しなくなることがあります。
なお、SAP ERP システムジョブの管理ファイルは、r3execコマンド実行時に自動的に作成されるので、改名や削除したあとに作成する必要はありません。
SAP ERP システムジョブの管理ファイルは、以下に格納されています。
UNIX版の場合
/var/spool/mjes/r3/r3job
Windows版の場合
Systemwalker Operation Managerインストールディレクトリ¥MpWalker.JM¥Mpmjessv¥R3¥R3job
参考
SAP ERP システム上で同時に実行できるSAP ERP システムジョブの数は、バックグラウンド用に割り当てられたSAP ERP システムのWP(ワークプロセス)の数に依存します。このWP数は、時間指定などによって動的に変化させられます。夜間はバックグラウンドのWP数を多くして、同時に実行できるSAP ERP システムジョブの数を増やすとよいでしょう。WPの詳細は、SAP ERPのドキュメントを参照してください。
r3mgrコマンドを使うと、SAP ERP システムジョブを直接操作することができます。SAP ERP システムジョブに対して可能な操作は、以下のとおりです。
XMI出力レベルの変更
SAP ERP システムジョブが出力するXMIログの情報量を変更します。
ステップ情報の変更
投入済のSAP ERP システムジョブのABAP/4ステップを変更します。
保留中のSAP ERP システムジョブの実行
保留中のSAP ERP システムジョブを実行します。保留中のSAP ERP システムジョブとは、r3execコマンドの“-n”オプションを使って投入したジョブのことです。
“XMI出力レベルの変更”以外の操作は、会話モードで行います。会話モードとは、コマンドの実行に必要な情報を対話形式で入力するモードのことで、r3mgrコマンドによって起動されます。
“-s”オプションを指定したときの会話モードの表示例および表示されるプロンプトを以下に示します。
会話モードの表示例
# r3mgr -s DEST Please input Job information input. JOBNAME : ABCDEFG JOBCOUNT : 1234567 TARGET_HOST : TARGET_GROUP : JOBGRP00 Call? [y]/n : y Calling... Again? y/n : n
表示されるプロンプト
“JOBNAME”および“JOBCOUNT”
操作対象のSAP ERP システムジョブの入力を促すプロンプトです。
“TARGET_HOST”および“TARGET_GROUP”
アプリケーションサーバ(TARGET_HOST)または、サーバグループ(TARGET_GROUP)の入力を促すプロンプトです。
両方とも入力を省略するか(改行のみを入力する)、いずれか一つを入力することができます。アプリケーションサーバを入力した場合は、サーバグループのプロンプトは表示されません。サーバグループを入力したい場合は、アプリケーションサーバのプロンプトで改行のみを入力すると、サーバグループを入力することができます。
“Call? [y]/n”
先の入力にしたがって、操作を有効にしてよいかを問い合わせるプロンプトです。“y”を指定すると操作を有効にします。この例では、“JOBNAME”、“JOBCOUNT”およびサーバグループで指定した、保留中のSAP ERP システムジョブを実行します。“n”を指定すると操作を無効にします。
“Again? y/n”
別の操作を行うかを問い合わせるプロンプトです。“y”を指定すると、再度入力を促すプロンプトが表示されます。“n”を指定すると、会話モードが終了します。