PRIMECLUSTER Wizard for Oracle は、PRIMECLUSTER 上で Oracle データベースのクラスタ運用を行うためのソフトウェア製品です。PRIMECLUSTER 上で Oracle Real Application Clusters (Oracle RAC) によるスケーラブル運用や、Oracle データベースのスタンバイ運用 (コールドスタンバイ) 、シングルノードクラスタ運用、Oracle Data Guard/Oracle Active Data Guard環境でのクラスタ運用を行うことができます。
Oracleデータベースのマルチテナント機能を使用したマルチテナント・コンテナ・データベース(CDB)とプラガブル・データベース(PDB)のスタンバイ運用(コールドスタンバイ)、シングルノードクラスタ運用を行うことができます。
CDBの環境設定、監視、起動・停止制御、運用の方法はとくに明記しない限りOracleインスタンスと同じです。PDBについては各章のPDBに関する記事を参照してください。
参照
Oracle Data Guard/Oracle Active Data Guard環境でスタンバイ・データベースのクラスタ運用を行う場合、"付録G Oracle Data Guard/Oracle Active Data Guardを使用する場合"を参照してください。
本製品は、以下の機能を提供します。
機能 | 概要 |
---|---|
環境設定 | クラスタ運用のための環境設定インターフェース |
監視 | Oracle インスタンス、リスナーの状態を監視するデーモンプロセス |
起動・停止制御 | Oracle インスタンス、リスナーの起動・停止を制御するスクリプト |
運用・設定コマンド | 運用時に使用するコマンド類 |
環境設定
Oracleデータベースのクラスタ運用を行うには、userApplication (クラスタアプリケーション) に Oracle インスタンスやリスナーを「リソース」として登録する必要があります。本製品は、それを行うための環境設定インターフェースを提供します。詳細は、「第2章 環境設定」を参照してください。
監視
Oracle インスタンス、リスナーの監視を行います。
監視処理中に異常を検出した場合、スタンバイ運用では、Oracle インスタンスまたはリスナーの再起動やフェイルオーバを自動的に行います。スケーラブル運用では、Oracle Clusterware が Oracle インスタンスまたはリスナーのリカバリーや縮退を行います。詳細は、「3.1 クラスタ環境における Oracle データベースの制御」を参照してください。
Oracle インスタンスの監視
以下の方法で Oracle インスタンスを監視します。
Oracle インスタンスのバックグラウントプロセスの監視
SYSTEM ユーザーにて Oracle インスタンスへ接続し、PMON・SMON・DBWn・LGWR・CKPT の5つのバックグラウンドプロセスの存在を一定周期で監視します。
SQL 文の実行による監視
監視用テーブルを使って SQL 文(INSERT・UPDATE・DELETE・COMMIT)が実行できることを一定周期で監視します。SQL 文の実行結果から Oracle インスタンスの状態を監視します。そのため、Oracle インスタンスのプロセス生死だけでなく、論理的な異常も検出することが可能です。
リスナーの監視
以下の方法でリスナーを監視します。
リスナープロセスの監視
リスナープロセスの存在を一定周期で監視します。
tnsping コマンドによる監視
スタンバイ運用では、Oracle データベースの tnsping コマンドを実行しネットサービスが有効か確認します。
スケーラブル運用では、tnsping コマンドによる監視は行いません。
Oracle Clusterware の監視
Oracle Clusterware を監視しません。
CDBとPDBの監視
CDBの監視方法は“Oracle インスタンスの監視”と同じです。
PDBの監視は、CDBに接続してPDBの管理表を取得し、PDBの状態を確認します。PDBの異常を検出するとsyslogへメッセージを出力します。PDBの異常による再起動やフェイルオーバは行いません。
起動・停止制御
userApplication の状態遷移に従って、Oracle インスタンス、リスナー、Oracle Clusterwareを自動的に起動・停止します。詳細は、「3.1 クラスタ環境における Oracle データベースの制御」を参照してください。
Oracle インスタンスの起動・停止
スタンバイ運用では、Oracle インスタンスの状態をチェックし、リカバリー処理を実施しながら起動します。例えば Oracle データベースのオンライン・バックアップ中に Oracle インスタンスがダウンした場合、次回の起動処理中に END BACKUP を自動的に実行します。停止においては、デフォルトでは IMMEDIATE モードで停止し、正常に停止できなかった場合は、さらに ABORT モードで停止します。そのため、高速なフェイルオーバが可能です。
Oracle RAC スケーラブル運用では、Oracle データベースの srvctl コマンドを使った起動・停止を行います。
リスナーの起動・停止
スタンバイ運用では、Oracle データベースの lsnrctl コマンドを使った起動・停止を行います。また、起動・停止処理と同時にリスナープロセスのチェックも行い、起動や停止が正しく行われたことも確認します。
Oracle RAC スケーラブル運用では、リスナーを起動します。
Oracle Clusterware の起動・停止
Oracle RAC スケーラブル運用の場合、Oracle データベース の crsctl コマンドを使った起動・停止を行います。
CDBとPDBの起動・停止
CDBの起動・停止方法は“Oracle インスタンスの起動・停止”と同じです。
CDBの起動後にCDB上の全てのPDBを起動します。