仮想マシン機能とは、ソフトウェアにより仮想マシン環境を実現するための機能のことです。
物理マシンに装着されたCPU、メモリ、ネットワークおよびディスクの各資源を仮想化することで、1つの物理マシン上に独立した複数の仮想マシンを構築することができます。
PRIMECLUSTERは、複数のゲストOS間でクラスタシステムを構築することができます。
注意
KVM環境では、管理OSをハイパーバイザーと、VMware環境では、管理OSをESXiホストと読み替えてください。
PRIMECLUSTERを導入する仮想マシン環境では、以下の操作を行わないでください。
- ゲストOSの一時停止
- ゲストOSの一時停止状態から再開
- ゲストOSを停止していない状態での、管理OSの停止、または、再起動
参照
KVM環境での仮想マシン機能の詳細については、“Red Hat Enterprise Linux 6 Virtualization Administration Guide”または“Red Hat Enterprise Linux 7 Virtualization Deployment and Administration Guide”を参照してください。
VMware環境での仮想マシン機能の詳細については、VMware vSphereのソフトウェア説明書を参照してください。
■仮想マシン機能の構成
■仮想マシン機能上でのクラスタシステム
仮想マシン機能上では、クラスタシステムとして以下の方式があります。
1つの管理OS上のゲストOS間でクラスタシステムを構築する場合
管理OS異常切替機能を使用せず、複数の管理OS上のゲストOS間でクラスタシステムを構築する場合
管理OS異常切替機能を使用して、複数の管理OS上のゲストOS間でクラスタシステムを構築する場合(KVM環境のみ)
各クラスタシステムの用途と注意事項は以下のとおりです。
クラスタの方式 | 用途例 | 注意事項 |
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1つの管理OS上のゲストOS間でクラスタシステムを構築する場合 |
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管理OS異常切替機能を使用せず、複数の管理OS上のゲストOS間でクラスタシステムを構築する場合 |
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管理OS異常切替機能を使用して、複数の管理OS上のゲストOS間でクラスタシステムを構築する場合(KVM環境のみ) |
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本構成では、1つの物理マシンでクラスタシステムを動作させることができます。PRIMECLUSTER上で動作するuserApplicationの動作検証を行う場合に有効です。
注意
VMware環境で、ゲストOSに異常が発生した場合、ノード状態がLEFTCLUSTERとなります。LEFTCLUSTERからの回復については、“PRIMECLUSTER Cluster Foundation 導入運用手引書”の“5.2 LEFTCLUSTER からの回復” を参照してください。その後の操作については、“7.2 PRIMECLUSTERシステムの運用操作”を参照してください。
本構成では、ハードウェア(ネットワークやディスク)が故障しても、フェイルオーバにより業務を継続動作させることができます。
注意
KVM環境で、管理OSが動作できない場合、ノード状態がLEFTCLUSTERとなる場合があります。詳細については、“7.4.2 仮想マシン機能使用時にLEFTCLUSTER状態となった場合の対処方法”および“7.2 PRIMECLUSTERシステムの運用操作”を参照してください。
KVM環境で複数の管理OS上のゲスト間でクラスタシステムを構築する場合には、管理OS異常時に自動的に切替えを行える機能(管理OS異常切替機能)を使用することができます。
仮想マシン機能に他筐体ゲスト間クラスタを構築時、管理OSに異常が発生すると、クラスタを構成するノードが、LEFTCLUSTER状態になる場合があります。管理OS異常切替機能とは、KVM環境の他筐体ゲスト間クラスタにおいて、管理OSにPRIMECLUSTERを導入することで、下記の管理OSの動作異常時にゲストOSと連携し、ゲストOS上のクラスタアプリケーションを自動で切替えることを可能とする機能です。
- 管理OSのパニック
- 管理OSのOSハング(スローダウン)
ただし、本機能の利用によりRMSの優先度設定が使用できなくなる等、運用上の注意がありますので、設計時に考慮の上、使用してください。
注意
ゲストOSのクラスタアプリケーションの作成で、RMSの優先度(ShutdownPriority)属性は設定しないでください。
管理OS異常を検出するとその管理OSを強制停止するため、異常が発生した管理OS上のゲストOSはクラスタの有無にかかわらず、すべて停止します。
管理OSでは、ゲストOSで必要となる以下のリソースを除き、クラスタアプリケーションにリソースを登録しないでください。
・ ゲストOSで利用するネットワークを制御するGlsリソース
・ ゲストOSを制御するためのCmdlineリソース(「付録F KVM環境で管理OSのクラスタアプリケーションからゲストOSを制御するためのCmdlineリソースの設定」を参照)
管理OSで業務を稼働させ、その業務の高負荷が原因で管理OSが強制停止された場合、強制停止された管理OSで動作するゲストOSの業務にも影響が出ます。
図2.1 仮想マシン機能上で管理OS異常切替機能を使用したクラスタシステム
図2.2 管理OS異常時の切替えイメージ
また、PRIMECLUSTERを導入したゲストOSのライブマイグレーションや仮想マシンイメージのコピーによるクラスタシステムの複製が可能です。
■クラスタシステムにおけるKVM環境でのマイグレーション
クラスタシステムで利用できるKVMのマイグレーション機能には、以下の3種類の方式があります。
ライブマイグレーション
稼働中のゲストOSを移動させます。
オフラインマイグレーション
一時停止状態のゲストOSを移動させます。
エクスポート/インポートによるマイグレーション
停止状態のゲストOSのXML設定ファイルを、エクスポート/インポートします。
KVM環境でのマイグレーション機能は、以下のクラスタシステムの方式で利用できます。
管理OS異常切替機能を使用せず、複数の管理OS上のゲストOS間でクラスタシステムを構築する場合
管理OS異常切替機能を使用して、複数の管理OS上のゲストOS間でクラスタシステムを構築する場合
ゲストOSを稼動状態でマイグレーション(ライブマイグレーション)することで、運用・待機の冗長構成を維持したまま、サーバの保守を実施できます。
図2.3 クラスタシステムにおけるライブマイグレーション
図2.4 予備サーバへのライブマイグレーション
ゲストOSを一時停止状態にしてマイグレーション(オフラインマイグレーション)することで、運用・待機の冗長構成を維持したまま、待機サーバの保守を実施できます。
図2.5 予備サーバへのオフラインマイグレーション(実行前)
図2.6 予備サーバへのオフラインマイグレーション(実行中)
図2.7 予備サーバへのオフラインマイグレーション(実行後)
停止状態のゲストOSをエクスポート/インポートによるマイグレーションをすることで、予備サーバでゲストOSを起動し、運用・待機の冗長構成を維持したまま、待機サーバの保守を実施できます。
図2.8 予備サーバへのエクスポート/インポートによるマイグレーション(実行前)
図2.9 予備サーバへのエクスポート/インポートによるマイグレーション(実行中)
図2.10 予備サーバへのエクスポート/インポートによるマイグレーション(実行後)
クラスタシステムでKVMのマイグレーション機能を利用する場合、事前設定が必要です。詳細は“付録G KVM環境でマイグレーション機能を使用する場合”を参照してください。
注意
マイグレーション実施中は、クラスタシステムの切替えは行われません。
クラスタシステムの切替え中には、マイグレーション操作を行わないでください。