統合の最初の作業は、外部からサービスを操作するためのWebサービスを実装することです。このWebサービスをプロビジョニングサービスと呼びます。プロビジョニングサービスは、アプリケーションをSystemwalker Service Catalog Managerのサービス購入管理と統合するために必要になります。サービス利用部門がサービスの利用申請をするときや、利用中のサービスの管理をおこなうときは、Systemwalker Service Catalog Managerはこのプロビジョニングサービスを呼び出します。また、利用者の追加や管理をおこなう場合も、プロビジョニングサービスを呼び出すことがあります。
アクセス種別としてエクスターナルアクセスを使用することを選択した場合には、プロビジョニングサービスを実装する必要はありません。このアクセス種別では、サービスの購入後、利用者はアプリケーションに直接アクセスします。利用者はアプリケーションに直ちに転送されます。それ以降の利用者の操作はクライアントとアプリケーションの間でSystemwalker Service Catalog Managerを全く介することなく直接行われます。
プロビジョニングサービスを実装するに当たっては、以下の点を考慮する必要があります。
インスタンスの提供方法
サービス利用部門がサービスを購入したとき、アプリケーションはサービスの購入に必要なすべての処理を実行し、サービスの識別子をSystemwalker Service Catalog Managerに返す必要があります。アプリケーション側でサービスのために提供されるもののことを「インスタンス」と呼びます。「インスタンス」という用語は、購入済サービスに対してアプリケーションケーションが提供するものの全体を指します。
実際の動作や作成するインスタンスは、アプリケーションの性質や機能によって決まります。たとえば、アプリケーション使用中にサービス利用部門がデータを作成して保存したとします。このとき、アプリケーションはデータコンテナの中に独立したワークスペースを作成する場合もありますが、独立したデータベースのインスタンスを作成する場合もあります。
プロビジョニングのモード
インスタンスプロビジョニングには、同期モードと非同期モードがあります。
インスタンスを直ちに用意できる場合に利用します。アプリケーションは必要な処理をすべて実行し、処理の完了を確認します。これによりSystemwalker Service Catalog Managerはサービスを公開し、サービス利用部門がサービスを利用できる状態になります。
手作業が必要になる場合、あるいは大量のデータや仮想マシンをセットアップする必要がある場合など、処理に時間を要するときに利用します。この場合、アプリケーションは処理が保留されていることをSystemwalker Service Catalog Managerに通知します。つまり、アプリケーション側で開始した処理が終了していない状態です。処理が終了したら、アプリケーションはサービス購入管理サービスを使用して改めてSystemwalker Service Catalog Managerに完了を通知する必要があります。何らかの理由で処理が終了しなかった場合も、その旨をSystemwalker Service Catalog Managerに通知する必要があります。
Systemwalker Service Catalog Managerは、非同期プロビジョニングプラットフォーム(APP)を利用した非同期プロビジョニングサービスの開発をサポートしています。APPは、非同期でアプリケーションを統合する際に必要なプロビジョニングサービスや、関数・データ永続・通知機能を提供するフレームワークです。フレームワーク本体・サンプル・ドキュメントは、非同期プロビジョニング用統合パッケージ(fujitsu-bss-integration-app-pack.zipファイル)に同梱されています。
アプリケーションのパラメーター
アプリケーションが、Systemwalker Service Catalog Managerのサービスプロビジョニングに関連するパラメーターを必要とする場合もあります。パラメーターは、異なる構成を提供したり、サービスを制限したりするために提供します。たとえば、作成可能なフォルダ、ファイル、あるいはオブジェクトの上限値を指定する場合などに利用できます。アプリケーションのパラメーターは、技術サービス定義で指定します。
Systemwalker Service Catalog Managerは、プロビジョニングの際にアプリケーションへパラメーターを渡します。パラメーターの処理はアプリケーション側でおこないます。特に、パラメーターの内容でサービスに制限が加えられている場合は、アプリケーションが制限を正しく処理する必要があります。たとえば、購入済サービスに対して作成できるファイル数の上限値がパラメーターで決まっている場合、アプリケーションはファイルの数を記憶し、上限値を超えないようにする必要があります。
技術サービス定義でパラメーターを定義する方法の詳細については、“運用ガイド(技術サービス開発部門編)”を参照してください。
利用者管理
利用者がSystemwalker Service Catalog Manager経由でアプリケーションにアクセスする場合には、利用者管理のオペレーションを実装しておく必要があります。このオペレーションは、Systemwalker Service Catalog Managerでサービス利用部門が新しい利用者を購入済サービスに割り当てたとき、利用者の割り当てを購入済サービスから解除したとき、あるいは利用者のプロファイルを更新したときに呼び出されます。アプリケーションが独自の利用者管理をおこなっている場合などは、利用者のアカウントを作成するなど、これらのオペレーションに対応する処理を実行する必要があります。
プロビジョニングサービスの実装には2つの方法があります。
サービスをJavaクライアントとして実装する(“3.2.1 Javaクライアントでの実装”を参照)。
サービスをJava以外のクライアントとして実装する (“3.2.2 Java以外のアプリケーションでの実装”を参照)。