ここでは、本製品の導入に必要になる、ストレージ環境の構成と設定値の決定について説明します。
システムに必要なストレージの構成を決定します。
本製品がサポートするストレージ構成は以下のとおりです。
構成 | システムディスク | データディスク |
---|---|---|
1 | SANストレージ | SANストレージ |
2 | ローカルディスク (*1) | ローカルディスク (*1)、NAS |
3 | ローカルディスク (*1) | SANストレージ |
4 | iSCSIストレージ | iSCSIストレージ (*2) |
5 (*3) | ローカルディスク (*1) | iSCSIストレージ |
*1: ローカルディスクには、サーバの内蔵ディスクとストレージブレードを含みます。
*2: データディスクを使用する場合、ハードウェア・イニシエータを使用してください。ソフトウェア・イニシエータを使用してクローニングイメージの採取・配付を行った場合、データが破損する危険性があるため、ソフトウェア・イニシエータは使用しないでください。
*3: 本構成を使用する場合、ソフトウェア・イニシエータとiSCSIディスク用LANに接続するLANスイッチのポートに対するVLAN設定を、組み合わせて使用してください。LANスイッチのポートに対するVLAN設定は、運用サーバとiSCSIストレージに接続するポートに対して行ってください。予備サーバとクローニング配付先サーバに接続するポートに対しては行わないでください。
参考
構成1、構成3および構成4の場合、I/O仮想をサポートします。
HBA address renameを利用しサーバ切替えをする場合、1台のサーバにSAN/iSCSIストレージが1台だけ接続されている構成で行えます。
1台のサーバに複数ストレージが接続されている構成ではできません。
VIOMを利用しサーバ切替えをする場合、1台のサーバに複数ストレージを接続できます。
これはVIOMがBIOSに設定するストレージ起動順番を、サーバ切替え時に引き継ぐことができるためです。
SANストレージをクラスタの共有ディスクとして利用できます。
なお、クラスタ定義されているサーバに対するサーバ切替えはできません。
SAN/iSCSIストレージへのパスはシングル、マルチの両方をサポートします。
構成5でサーバ切替えを行う場合、サーバ切替え時にVLAN設定を自動変更する設定が必要です。
構成5でクローニングイメージ採取を行う場合、以下の操作が必要です。
【Windows】
採取完了後に再起動またはiSCSIディスクのマウントを行います。
【Linux】
採取前に、iSCSIディスクのマウント設定についてOS起動時のfsckチェックを外します。また、採取完了後に再起動またはiSCSIディスクのマウントを行います。
構成5でクローニングイメージ配付を行う場合、配付完了後に配付先サーバで、iSCSIディスク用LANに接続するLANスイッチのポートのVLAN設定を行う前に、ソフトウェア・イニシエータ設定を変更してください。ソフトウェア・イニシエータの設定が同じサーバが複数存在する場合、データが破損する危険性があるため、変更した設定に問題がないか確認してください。
システムディスクがSANストレージで、データディスクがローカルディスクの構成では、バックアップ・リストア、サーバ切替え、クローニングの機能を使用しない範囲で利用できます。
本製品で実現する機能
本製品では、I/O仮想を利用し、サーバに搭載されているHBAのWWN、NICのMACアドレス、ブート設定およびネットワーク設定を引き継ぐことで、サーバに接続されるストレージ装置の設定を変更しなくても、サーバ切替えやサーバ交換ができます。また、I/O仮想を利用できない環境では、サーバに接続されるファイバーチャネルスイッチ、ストレージ装置の設定を変更することで、サーバ切替えができます。
WWNには、WWNN、WWPNの2種類の値があり、それぞれノードの値、ポートの値として使用されます。
以下にサーバ切替えの例を示します。
図4.8 I/O仮想を利用したサーバ切替え例(WWNを切り替える場合)
サーバ側では物理サーバとHBAのWWN、ストレージ側ではHBAのWWNとストレージのボリュームとの関係を定義し、システムを設計します。
以下にHBAの2ポートを使いマルチパスでストレージに接続するときの例を示します。
詳細は、各ストレージ製品のマニュアルを参照してください。
注意
管理対象サーバにHBAのポートが合計3ポート以上搭載されている構成は、サポートしていません。
図4.9 WWNのシステム設計
使用するWWNの決定
HBA address renameまたはVIOM利用時には、使用するWWNを決定します。
HBA address renameまたはVIOMで使用するWWNを決定し、サーバ側にはOS(業務)と物理サーバを関連付け、ストレージ側にはボリュームを関連付けます。
HBA address renameまたはVIOMを利用することで、サーバに搭載されたHBAのWWNを意識しなくても、仮想化されたWWNを利用してサーバとストレージの設計が行えます。物理サーバが存在しないなどの、サーバに搭載されたHBAのWWNが把握できない場合でも、サーバとストレージを設計できます。
HBA address renameを利用する場合、WWNは"I/O仮想化オプション"で提供された値を使用します。
VIOMを利用する場合、WWNは以下のどれかの値を使用します。
"I/O仮想化オプション"で提供された値
VIOMインストール時に選択するアドレス範囲から自動的に選択される値
WWNの衝突によるデータの破損を防ぐため、"I/O仮想化オプション"で提供された値を使用することをお勧めします。
参考
"I/O仮想化オプション"は、全世界で一意のWWNを提供します。これにより予期しないWWNの衝突を防ぐことができます。
注意
HBA address renameとVIOMで同じWWNを使用しないでください。同じWWNを使用した場合、データが破損する危険性があります。
HBA address renameまたはVIOMで使用するWWNの形式を、以下に示します。
提供されたWWNの先頭"2x"を以下のようにWWNNとWWPNに割り当てて利用します。
20: WWNNとして利用
2x: WWPNとして利用
HBA address renameでは、xはHBAのI/Oアドレスの降順に割り当てられます。
なお、HBAのI/Oアドレスは、HBAのBIOS上またはHBAベンダーが提供しているツールで確認してください。
注意
HBA address renameでは、HBAのI/Oアドレスの降順にWWNを割り当てるため、HBAに記載されているポート番号順と一致しない場合があります。
詳細は、「C.2 HBA address rename設定時のWWNの割当て順序」を参照してください。
決定したWWNは、サーバ側の設計とストレージ側の設計で使用します。
サーバ側の設計
サーバごとに利用するWWNを割り当て、サーバ側の設計で使用します。
ストレージ側の設計
サーバごとに接続するボリュームを決定し、サーバに割り当てたWWNと同じWWNを、ストレージ側の設計で使用します。
使用するWWNの決定(VIOM利用時)
VIOMを利用する場合、VIOMの設定を先に行います。それによって決定したWWNと同じ値をストレージ側にも設定します。
サーバ側では物理サーバとiSCSIアダプターのIQN、ストレージ側ではiSCSIアダプターのIQNとストレージのボリュームとの関係を定義し、システムを設計します。
以下にiSCSIインターフェースの2ポートを使い、マルチパスでストレージに接続するときの例を示します。
詳細は、各ストレージ製品のマニュアルを参照してください。
図4.10 IQNのシステム設計
使用するIQNの決定
iSCSIを利用するには、使用するIQNを決定します。
iSCSIで使用するIQNを決定し、サーバ側にはOS(業務)と物理サーバを関連付け、ストレージ側にはボリュームを関連付けます。
IQNは以下で構成されます。
タイプ識別子"iqn."
ドメイン取得日
ドメイン名
ドメイン取得者が付けた文字列
IQNは、一意である必要があります。
サーバ名や、"I/O仮想化オプション"で提供された該当するサーバのネットワークインターフェースに割り当てる予定のMACアドレスなどを、IQNの一部として使用することで、一意のIQNを作成してください。
IQNが重複している状態で、同時にアクセスを行うとデータが破損する危険性があります。
"I/O仮想化オプション"で提供された仮想MACアドレスを使用する場合の例を以下に示します。
例
MACアドレスが00:00:00:00:00:FFの場合
IQN iqn.2010-04.com.fujitsu:0000000000ff
決定したIQNは、サーバ側の設計とストレージ側の設計で使用します。
サーバ側の設計
サーバごとに利用するIQNを割り当て、サーバ側の設計で使用します。
ストレージ側の設計
サーバごとに接続するボリュームを決定し、サーバに割り当てたIQNと同じIQNを、ストレージ側の設計で使用します。