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Interstage Application Server アプリケーション作成ガイド(CORBAサービス編)
Interstage

3.7.5 シーケンス型

(1)IDLマッピング

IDL言語でシーケンス型sequenceを指定した場合、C言語では以下の構造体(シーケンス構造体)にマッピングされます。また、シーケンス構造体の領域獲得関数(関数名:“モジュール名_インタフェース名_構造体名_alloc”。以降XX_alloc関数と呼ぶ)と、データ域(_buffer)の領域獲得関数(関数名:“モジュール名_インタフェース名_構造体名_allocbuf”。以降XX_allocbuf関数と呼ぶ)が生成されます。
シーケンス構造体の構造を以下に示します。

struct
{
    CORBA_unsigned_long    _maximum;    /* シーケンス配列の最大個数 */
    CORBA_unsigned_long    _length;     /* シーケンス配列の使用個数 */
    void                   *_buffer;    /* データ域 */
}; 

以降では、以下のIDL定義例をもとに説明します。

IDL言語
module ODsample{
    interface  seqtest{
        typedef sequence<long>  sampleseq; 
        sampleseq op1(in sampleseq seq1, out sampleseq seq2, inout sampleseq seq3 );
    };
};

C言語
typedef struct
{
    CORBA_unsigned_long    _maximum; 
    CORBA_unsigned_long    _length;  
    CORBA_long             *_buffer; 
} sampleseq;

(2)クライアントアプリケーションで扱うパラメタ

クライアントアプリケーションのパラメタの扱いについて以下に示します。

パラメタ

サーバへ渡すパラメタ

サーバから渡されたパラメタ

in

シーケンス構造体/データ域(_buffer)を獲得する場合は、XX_alloc関数/XX_allocbuf関数を使用します。
メンバにシーケンス配列の最大個数/使用個数/データ域アドレスを設定します。

inout

シーケンス構造体/データ域(_buffer)を獲得する場合は、XX_alloc関数/XX_allocbuf関数を使用します。
メンバにシーケンス配列の最大個数/使用個数/データ域アドレスを設定します。

リリースフラグにCORBA_TRUEが設定されていると、データ部の領域はスタブにより解放されます。
リリースフラグにCORBA_TRUEが設定されていないと、スタブではデータ部の領域を解放しません。この場合、アプリケーション内で領域を保持し、不要になった段階でデータ部の解放処理を行ってください。

領域は、スタブで自動的に獲得されます(各メンバも設定されます)。
リリースフラグは、サーバへ渡すパラメタに設定された値から変化しません。

out
復帰

領域は、スタブで自動的に獲得されます(各メンバも設定されます)。このとき、リリースフラグにCORBA_TRUEが設定されます。

(inoutパラメタと同じ)


注意

クライアントおよびスタブで獲得した領域は、不要になった時点でCORBA_free()で解放する必要があります。このとき、データ域の領域(XX_allocbuf関数で獲得)を解放するかどうかを、リリースフラグで指定します。

リリースフラグの参照/設定は、以下の関数/フラグを使用します。

[関数]

CORBA_boolean CORBA_sequence_get_release( void * );
      void          CORBA_sequence_set_release( void *, CORBA_boolean );

[フラグ]

  • CORBA_TRUE
    CORBA_free()発行時、シーケンスデータ領域も解放されます。

  • CORBA_FALSE
    CORBA_free()発行時、シーケンスデータ領域は解放されません(デフォルト)。

なお、スタブで獲得されたパラメタ(out,復帰)のリリースフラグは、CORBA_TRUEに設定されます。
ただし、シーケンス型/any型のsequenceをin/inoutに使用する場合は、XX_allocbuf関数で獲得したシーケンス型/any型の領域に対して、リリースフラグにCORBA_TRUEを設定してください。また、out/inout/復帰値に使用する場合、シーケンス型の_bufferの型がシーケンス型/any型の場合、かつ_bufferがNULLでない場合は、CORBA_free()で領域を解放する前に、_buffer領域に対してリリースフラグにCORBA_TRUEを設定してください。

クライアントアプリケーションでの処理例を以下に示します。

ODsample_seqtest_sampleseq  *seq1, *seq2, *seq3, *ret;
CORBA_Object         obj;
CORBA_Environment    env;
CORBA_long           *smp;
int                  i;

/* inパラメタ */
seq1 = ODsample_seqtest_sampleseq_alloc();   /* 領域獲得 */
seq1->_maximum = seq1->_length = 2;
seq1->_buffer = ODsample_seqtest_sampleseq_allocbuf(2);
for( i = 0; i < 2; i++ ){ 
    smp = &(seq1->_buffer[i]);
    *smp = i; 
}
CORBA_sequence_set_release( seq1, CORBA_TRUE ) ;  /* リリースフラグ設定 */

/* inoutパラメタ */
seq3 = ODsample_seqtest_sampleseq_alloc();
seq3->_maximum = seq3->_length = 3; 
seq3->_buffer = ODsample_seqtest_sampleseq_allocbuf(3); 
for( i = 0; i < 3; i++ ){ 
    smp = &(seq3->_buffer[i]); 
    *smp = i*10; 
}
CORBA_sequence_set_release( seq3, CORBA_TRUE ) ;   /* リリースフラグ設定 */

/* サーバ呼出し */
ret = ODsample_seqtest_op1( obj, seq1, &seq2, seq3, &env ); 

/* 領域解放 */
CORBA_free( seq1 );             /* inパラメタ */
CORBA_free( seq2 );             /* outパラメタ */
CORBA_free( seq3 );             /* inoutパラメタ */
CORBA_free( ret );              /* 復帰パラメタ */

(3)サーバアプリケーションで扱うパラメタ

サーバアプリケーションのパラメタの扱いについて以下に示します。

パラメタ

クライアントから渡されたパラメタ

クライアントへ渡すパラメタ

in

各領域(シーケンス構造体/データ域)は、スケルトンで自動的に獲得/解放されます。
データ域(_buffer)がシーケンス型/any型の場合、かつ_bufferがNULLでない場合は、_buffer領域に対して、リリースフラグにCORBA_TRUEを設定してください。

inout

各領域(シーケンス構造体/データ域)は、スケルトンで自動的に獲得されます。このとき、リリースフラグにCORBA_TRUEが設定されます。
データ域(_buffer)がシーケンス型/any型の場合、かつ_bufferがNULLでない場合は、inの領域を解放する前に、_buffer領域に対して、リリースフラグにCORBA_TRUEを設定してください。

inoutデータの領域を更新する場合は、以下の処理を行ってください。
CORBA_free()でデータ域(_buffer)を一度解放し、XX_allocbuf関数で再獲得します。
データ域(_buffer)がシーケンス型/any型の場合は、XX_allocbuf関数で獲得した領域に対してリリースフラグにCORBA_TRUEを設定してください。

リリースフラグにCORBA_TRUEを設定する、またはリリースフラグを設定しない場合、領域はスケルトンで自動的に解放されます。
リリースフラグにCORBA_FALSEを設定する場合、スケルトンではデータ域を解放しません。この場合、不要になった時点で領域の解放処理を行ってください。

out
復帰

XX_alloc関数/XX_allocbuf関数でシーケンス構造体/データ域(_buffer)を獲得します。
データ域(_buffer)がシーケンス型/any型の場合は、XX_allocbuf関数で獲得した領域に対してリリースフラグにCORBA_TRUEを設定してください。

リリースフラグにCORBA_TRUEを設定する場合、領域はスケルトンで自動的に解放されます。
リリースフラグにCORBA_FALSEを設定する、またはリリースフラグを設定しない場合、スケルトンではデータ域を解放しません。この場合、不要になった時点で領域の解放処理を行ってください。


サーバアプリケーションでの処理例を以下に示します。

ODsample_seqtest_sampleseq
*ODsample_seqtest_op1(
    ODsample_seqtest            obj, 
    ODsample_seqtest_sampleseq  *seq1, 
    ODsample_seqtest_sampleseq  **seq2, 
    ODsample_seqtest_sampleseq  *seq3, 
    CORBA_Environment  *env ) 
{
    ODsample_seqtest_sampleseq  *seq; 
    CORBA_long                  *smp; 
    int                         i; 

/* outパラメタ */
    seq = *seq2 = ODsample_seqtest_sampleseq_alloc();       /* 領域獲得 */
    seq->_maximum = seq->_length = 4;                       /* メンバ設定 */
    seq->_buffer = ODsample_seqtest_sampleseq_allocbuf(4);  /* データ域獲得 */
    for( i = 0; i < 4; i++ ) { 
        smp = &(seq->_buffer[i]); 
        *smp = i*100; 
    } 
    CORBA_sequence_set_release( *seq2, CORBA_TRUE );         /* リリースフラグ設定 */

/* inoutパラメタ */
    seq3->_maximum = seq3->_length = 5; 
    CORBA_free( seq3->_buffer );                            /* 領域解放(データ域) */
    seq3->_buffer = ODsample_seqtest_sampleseq_allocbuf(5); /* 領域再獲得(データ域) */
    for( i = 0; i < 5; i++ ) {                              /* パラメタ設定 */
        smp = &(seq3->_buffer[i]); 
        *smp = i*1000; 
    } 
    CORBA_sequence_set_release( seq3, CORBA_TRUE );         /* リリースフラグ設定 */

/* 復帰パラメタ */
    seq = ODsample_seqtest_sampleseq_alloc();               /* 領域獲得 */
    seq->_maximum = seq->_length = 6;                       /* メンバ設定 */
    seq->_buffer = ODsample_seqtest_sampleseq_allocbuf(6);  /* データ域獲得 */
    for( i = 0; i < 6; i++ ) {  
        smp = &(seq->_buffer[i]); 
        *smp = i*10000; 
    } 
    CORBA_sequence_set_release( seq, CORBA_TRUE );          /* リリースフラグ設定 */
    return( seq ); 
}