サーバが故障した場合や保守のために停止させる場合に、事前に予備サーバを指定しておくことで、サーバを切り替えて起動する機能です。
また、サーバ異常検出時に自動的に予備サーバに切り替える自動リカバリも行えます。
予備サーバへの切替え方式には以下の3つがあり、どの方式を使用するかは、サーバ切替えを設定する時点で、そのサーバに対してHBA address renameの設定、またはVIOM上でサーバプロファイルが設定されているかに応じて決まります。
ただし、ハードウェア環境によって、利用可能な方式は異なります。詳細については、「ServerView Resource Coordinator VE インストールガイド」の「1.2 ハードウェア環境」の「注意」を参照してください。
バックアップ・リストア方式
ローカルブート環境のサーバで、事前にバックアップしたシステムイメージを予備サーバにリストアして起動します。
以下の場合に選択されます。
サーバに対してHBA address renameまたはVIOMのサーバプロファイルで、仮想WWNまたはブート設定が設定されていない場合
予備サーバ情報設定時に"内蔵ディスクブート+SANデータ(バックアップリストア方式)"チェックボックスにチェックを入れた場合
サーバに対してHBA address renameまたはVIOMでサーバプロファイルが設定されている場合は、サーバ切替え時に、WWNやサーバプロファイルも切り替えられます。
サーバを切り替えた場合、OSやアプリケーションは最後にバックアップしたときの状態で、予備サーバで動作します。
システムイメージのバックアップ・リストアでは、管理対象サーバのBIOSで認識された1台目のローカルディスク(起動ディスク)の内容だけが、バックアップ・リストアの対象になります。
2台目以降のローカルディスク(データディスク)の内容はバックアップ・リストアすることができないため、サーバを切り替えた際に、自動的に予備サーバに引き継ぐことができません。
2台目以降のローカルディスクを利用する場合は、他のバックアップソフトウェアを利用して、データのバックアップ・リストアを行う必要があります。
なお、1台目のディスクに複数の区画(Windowsのドライブ、Linuxのパーティション)を設定している場合は、すべての区画がバックアップ・リストアの対象になります。
HBA address rename方式
SANブート環境のサーバで、HBAに設定したWWNを予備サーバに引き継ぎ、ブートディスクを予備サーバに接続して起動します。サーバに対してHBA address renameが設定されている場合に選択されます。停止した管理対象サーバが使用していた起動ディスクをそのまま使用して予備サーバを起動するため、利用者はハードウェアが交換されたことを意識しなくても、運用を継続できます。
VIOMサーバプロファイル切替え方式
サーバがストレージ装置上にあるブートディスクから起動する環境の場合、事前にVIOMによるI/O仮想化によってサーバプロファイルに設定したWWN、MACアドレス、ブート設定およびネットワーク設定を予備サーバに引き継ぎ、ブートディスクを予備サーバに接続して起動します。サーバに対してVIOMのサーバプロファイルで仮想WWNが設定されている場合に選択されます。停止した管理対象サーバが使用していた起動ディスクをそのまま使用して予備サーバを起動するため、利用者はハードウェアが交換されたことを意識しなくても、運用を継続できます。
HBA address rename方式とVIOMサーバプロファイル切替え方式を合わせて、I/O仮想化方式とも表現します。
PRIMERGY BXシリーズのサーバでは、どの方式の場合でも、サーバ切替え時にネットワークの設定(LANスイッチの内部ポートのVLAN IDまたはポートグループ)を予備サーバに引き継げます。
VIOMサーバプロファイル切替え方式や、バックアップ・リストア方式の場合、サーバに対してVIOMのサーバプロファイルで仮想MACアドレス、ブート設定およびネットワーク設定が設定されているときは、これらの設定も予備サーバに引き継ぎます。これにより、MACアドレスを意識するソフトウェアやネットワーク機器の設定変更は必要ありません。
切り替えられた状態のサーバに対して、再度同じサーバ切替え方式によって、動作中の予備サーバを停止させて元の運用サーバを起動する操作を"切戻し"と呼びます。また、切戻しを行わず、起動した予備サーバをそのまま運用サーバに変更する操作を"継続"と呼びます。
注意
自動リカバリによるサーバ切替えは、ハードウェア故障を検出した場合に動作します。ソフトウェアの異常によるOS停止や、OSの自動再起動では動作しません。
詳細については、「9.3 サーバ切替え条件」を参照してください。
また、自動リカバリは、ハードウェア故障を契機に動作するため、OSの異常を調査するメモリダンプを採取することよりも、サーバを強制停止して高速に切り替えることを優先します。
そのため、サーバ切替えでは、OS異常時のメモリダンプ採取が設定されていても、メモリダンプは採取されません。
予備サーバへの切替え方式は、バックアップ・リストア方式、HBA address rename方式、VIOMサーバプロファイル切替え方式のどれか1つを利用できます。
HBA address renameによる切替えを利用する場合は、HBA address renameの設定が完了したことを確認してから、サーバ切替えの設定を行ってください。
Hyper-VのVMホストについてサーバ切替えを利用する場合は、物理NICを2つ以上用意してください。
VMホストの管理LAN用などの、VMホストが外部のサーバと通信するためのネットワークは、物理サーバ専用にし、仮想ネットワークを構成しないでください。
また、外部仮想ネットワーク環境を構成したネットワーク上では、VMホスト用の仮想ネットワークをすべて無効にしてください。詳細については「A.2 利用する製品別の設定」を参照してください。
VMゲストに対しては、個別に予備サーバを設定できません。VMゲストをSANまたはNAS上の共有ディスクに配置したうえで、VMホストに対して予備サーバを設定するか、サーバ仮想化ソフトウェアの高可用性機能を利用してください。
サーバ仮想化ソフトウェア製品ごとの高可用性機能については、「A.3 利用する製品別の機能」を参照してください。
なお、1台のVMホストに対しては、本製品による予備サーバへの切替えと、サーバ仮想化ソフトウェアの高可用性機能による切替えのどちらかを設定してください。
運用サーバと予備サーバが別のシャーシに存在し、それぞれのサーバが接続されたLANスイッチブレードがPRIMERGY BX900シリーズであり、かつIBPモードで動作している場合は、両方のLANスイッチブレードに同じ名前のポートグループが設定されている場合にだけ、サーバ切替えができます。
Intel PROSetでLANを冗長化している場合、Intel PROSetがMACアドレスを内部で保持しているため、サーバ切替え後、切替え元のMACアドレスが引き継がれます。このため、切替え元サーバ動作時にMACアドレスが競合し通信に影響を与えることがあります。サーバ切替え後、Intel PROSetの再設定を行ってください。
また、物理OSが動作しているサーバと、VMホストとVMゲストが動作しているサーバがある環境で、両方がHBA address renameまたはVIOMを利用してSANブート構成にしている場合は、以下の設定を組み合わせることで、物理OSとVMゲストで予備サーバを共有できます。
詳細については、「9.2 構成」の「図9.3 物理OSとVMゲスト(サーバ仮想化ソフトウェアの高可用性機能)で予備サーバを共有する構成」を参照してください。
VMゲストに対するサーバ仮想化ソフトウェアの高可用性機能(VMware HAなど)の予備サーバとして、VMゲストが動作していないVMホストを指定する。
物理OSのサーバ切替えの設定で、予備サーバとしてa.で指定したVMホストが動作している物理サーバを指定する。
この設定を行うことで、物理OSの動作しているサーバが故障した場合は、予備サーバ上のVMホストが停止されたあとに切り替わります。VMゲストが動作している物理サーバが故障した場合は、サーバ仮想化ソフトウェアの高可用性機能により、VMゲストが予備サーバに切り替わります。どちらか一方の切替えを行った状態では、他方の切替えは行えません。
参考
バックアップ・リストアによるサーバの切替え時間は、約3分 + システムイメージのリストアにかかる時間です。システムイメージのリストアにかかる時間は、ディスク容量やネットワークの状態などに応じて異なりますが、目安として、ディスク容量が73GBの場合でおよそ30~40分(システムイメージの転送に10~20分、システム再起動(複数回)と設定変更などの処理に20分)かかります。
HBA address renameによるサーバの切替え時間は、約5分 + サーバの起動時間です。サーバの起動時間は、OSの起動時間と、OS起動時に自動起動するサービスの起動時間に応じて異なります。また、予備サーバでVMホストが動作している場合は、予備サーバの停止時間も加算されます。