石川県は雨量や水位などの河川の情報を県民や水防関係者などにリアルタイムで発信する「石川県河川総合情報システム」を構築・運用している。従来システムはスマートデバイスへの対応やレスポンス、可用性、過去データの活用などに課題を抱えていた。
そこで富士通のミドルウェアを軸にシステムを再構築。以前の各種課題を解決するとともに、河川の情報発信における日本初のスマートデバイスGPS対応など、先進的な仕組みを実現した。ユーザーインターフェースの抜本的な改善による利用率向上などもあわせ、県の水害対策強化に大きく貢献している。
[ 2015年10月30日掲載 ]
業種: | 自治体 |
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製品: | ソフトウェア
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1 | 現在地付近の河川情報をスマートデバイスで確認したい | GPSを活用して情報を効率的に発信する仕組みを構築 | |
2 | 防災を担うシステムにふさわしい高可用性を確保したい | 障害の予兆検知によるトラブル発生前の対処で可用性を向上 | |
3 | 過去17年分のデータをより素早く容易に活用したい | 過去データをデータベースに格納して高速検索・統計を実現 |
石川県土木部河川課が運用する「石川県河川総合情報システム」では、県内の各観測所や気象庁、国土交通省から雨量や水位、ダム諸量のデータを収集し、県民や水防関係者などへWebやメールで情報を発信する。情報は10分間隔で更新され、エリアごとに表示される。
石川県河川総合情報システムの画面
「豪雨の箇所や水位が上昇して危険な河川の情報をリアルタイムに発信することで、県民の皆さまの安全につなげたい。石川県は南北に細長い地形的特徴から急流河川が多く、かつ、近年は局地的豪雨も増えていることから、河川の情報発信の重要性はより増しています」と石川県は語る。
石川県河川総合情報システムは2001年に新規構築したが、状況の変化とともにいくつかの課題が浮上していた。従来システムでもWebで情報を公開していたが、スマートフォンやタブレットなどのスマートデバイスに最適な形とは言えず、再構築にあたっては普及が急速に進むスマートデバイスへの対応は必須だった。
さらに、従来システムの公開情報・操作画面が、操作に不慣れな人にはわかりづらいという声から、県民に広くわかりやすい情報発信をするため、ユーザビリティやアクセシビリティに配慮し、利用者が必要な情報をより素早く容易に入手できるようにする必要があった。
同時に、以前は集中豪雨時にアクセスが集中し、Webページが表示されにくい状態になることもあり、Webのレスポンス不足と可用性の向上も課題となっていた。
「県民の安全にかかわるシステムでは、非常時も安定的に情報を発信し続けるために、利用者が不特定多数になることを考慮して安定したレスポンスと可用性を確保する必要があります」と石川県は話す。
また、従来システムでは過去400日分のみデータを保持し、それ以前のデータはCSV形式で別途保存する形態をとっていたため、400日以前も含めた統計データを求められた際は、担当者が手間と時間をかけてデータを集めて統計処理をしていた。
2014年9月、年度末のソフトウェアの保守切れを控え、インフラからアプリケーションまでシステムをすべて再構築することになり、複数ベンダーの提案が比較検討された。
提案にあたっては、他県のシステムでの豊富な実績を元にスマートデバイスの機能を活かした先進的な情報発信の仕組みやハードウェア/ソフトウェア一体のサポート体制などのシステム要件を実現するため、アプリケーションサーバ「Interstage Application Server」を中心に、データベースに「Symfoware Server」、クラスタソフトウェアに「FUJITSU Software PRIMECLUSTER」などのミドルウェアを導入した富士通の提案が採用された。
新システムでは、必要な情報を効率よく伝えるためスマートデバイスを利用した情報発信で富士通が提案するスマートデバイス内蔵のGPSを活用した。GPSにより、利用者が現在地付近の情報を取得できれば、迅速な水防活動、避難活動につながる。
Web画面にはInterstage Application Server の「jQuery Mobile」を利用した。既存のパソコン画面の生成ロジックに簡単な記述を追加するだけで、デバイスの違い、OSや画面サイズ、Webブラウザの種類の違いを吸収してスマートデバイス対応の画面を作成できる。
公開情報・操作画面は「誰でもすぐに使える」(石川県)を目標に、ユーザーインターフェースを根本的に見直した。Webのレスポンスは、データベースへのアクセスを最小化する仕組みとWebアプリケーションのマルチプロセス構成をInterstage Application Serverに用意することで性能向上を図った。
可用性の点では、Interstage Application Serverでメモリ不足やJavaのGC(ガベージコレクション:注1)異常の予兆を事前検知できるようにした。また、クラスタソフトウェアによる二重化構成、サーバトラブルの予兆検知にサーバ運用管理ソフトウェア「FUJITSU Software Serverview Suite」も導入し、総合的に可用性を高めた。
さらに、過去17年分、約250カ所の雨量や水位などの過去データをフォーマット統一した上でSymfoware Serverにすべて格納し、高速検索・統計処理に対応できるようにした。
【石川県様導入事例 システム概要図】
新システムは約半年という短い開発期間でカットオーバーを実現。Interstage Application Server のjQuery Mobileによって、あらゆるスマートデバイスに最小限の開発工数で対応できた。「GPSによって、現在地の情報をスマートデバイスで即座に取得可能になりました。河川のシステムでは日本初となります。おかげで、県民や水防関係者などはより的確に情報を得られるようになりました」(石川県)。
同時に、情報を大型モニタにリアルタイムで表示できるようになり、災害時における課内の情報共有が飛躍的にスムーズになった。
その上、ユーザーインターフェースの抜本的な改善で、県民視点の直感的でわかりやすい公開情報・操作画面による情報発信を実現し、県民や職員からも好評で、パトロールなどにも広く活用されている。また、新たに作成したリーフレットを県民に配付したこともあり、確実に利用者が増えている。
Webのレスポンス向上も果たした。性能を従来より大幅にアップし、アクセス集中時でもスムーズに画面が表示でき、河川監視カメラの画像情報などもあわせ、サービスの充実とともに迅速な水防活動や避難活動を多角的に支援している。
可用性も狙い通りの成果が得られている。予兆監視などの事前検知によって、トラブルが起きる前に対処でき、災害時はもとより常時安定した運用を具現化している。
また、Symfoware Serverによって、すべての過去データを活用した統計処理が可能となった。関係機関などから統計情報の要求があっても短時間で提供でき、担当者の労力も時間も飛躍的に削減した。他にも、ハードウェア/ソフトウェア一体となったワンストップのサポートが運用保守コスト低減に寄与している。
今後も、ICT分野における技術革新の成果を活用して、システムのさらなる向上を目指す。
石川県庁
所在地 | 石川県金沢市鞍月1丁目1番地 |
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知事 | 谷本 正憲 |
土木部河川課概要 | 主な事務・事業は石川県の河川および海岸の維持修繕・管理・工事、河川の水利、ダムの管理、水防など。石川県内の災害復旧事業も担う。
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ホームページ | 石川県河川総合情報システム ホームページ |
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