
少子化で18歳人口が減少を続けている現在、多くの大学では、ITを戦略的に活用して「大学サバイバル時代」を勝ち抜く「独自の魅力づくり」に取り組んでいます。こうした背景のもと、長野大学 様(以下、敬称略)でも更なる学生サービスの充実に向け、パーソナライズされた情報を提供できる「全学情報ポータル・システム」を構築しました。これにより、学生は、自分の履修している講義についての情報をいつでもどこでも入手できるようになりました。
この新しい学生サービスのプラットフォームとして、Linuxが選択されました。安定稼働、セキュリティ、コストという3つの要件を満たすOSとして、最適だと判断されたからです。長野大学ではLinuxをベースにして、新しいサービス機能を追加できる、可能性に満ちたポータル基盤を構築することに成功しました。
| 導入前の課題 | 導入による効果 | |
|---|---|---|
学生サービスの向上 |
信頼性の高いシステム基盤構築 |
|
パソコン所持制度の有効活用 |
学生の利便性向上 |
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教職員の事務作業の効率化 |
長野大学独自の魅力づくりに成功 |
長野大学はすべての学生が、同じように学べる環境づくりに力を入れてきた。情報教育にも積極的で、学内にはいち早くユビキタス環境を整えている。学生が学びやすい環境づくりを、潜在ニーズを先取りしながら実現したいと考えてきた長野大学は、さらに次の学生サービスのアイデアを練っていた。
パソコン所持制度により、「1人1台環境」の実現は近い。この環境を利用して、講義に関する休講/補講/試験スケジュールなどの情報を、スピーディーに配信しようと長野大学では考えた。そこで、自分が履修している講義についての情報がいち早く入手できるように、パーソナライズされた情報を提供する「全学情報ポータル・システム」の構築を目指した。
長野大学ではポータル・システム構築にあたり、基盤OSにLinuxを選択した。安定性、コスト、セキュリティというポータル・システムの3要件を高度に満たすことができるOSだからだ。同校には、長年にわたってUNIX文化が根付いており、Linuxを使いこなすことのできる教員が在籍していることも選定理由のひとつとなっている。
Linuxベースの全学情報ポータル・システムは、2003年4月にサービスを開始した。サービス内容は、学生ポータル、教職員ポータル、掲示板の3つである。学生は、パソコンまたは携帯電話を使って、パーソナライズされた情報を即座に入手できる。いつでもどこでも時間を有効活用できる、快適なキャンパスライフの基盤が整備された。
基幹システムの稼働に耐えるLinuxの安定稼働に尽力してきた富士通は、全学情報ポータル・システムの構築にあたっても、「安定性、セキュリティ、コスト」の3要件を実現できるLinuxシステムの構築を行なった。ポイントは、長野大学の学生サービスに対する理念を理解したうえで、さまざまな技術力を、サポートを結集させたことである。
UNIXシステムと同等の安定稼働と高度なセキュリティをIAサーバという安価なプラットフォーム上で実現したことにより、長野大学ではさらなる学生サービス充実に弾みをつけた。システム基盤として簡易シングルサインオン機能を搭載しているため、今後開発するシステムはいずれもアカウントを共有して効率よく利用できる。


長野大学の特徴は、あらゆる意味で開かれた大学だということでしょう。
その端的な例のひとつが、オープンオフィスアワーズ制度です。長野大学の教員の研究室は決められた曜日に学生に対して開放されており、講義やゼミに関する質問はもちろん、個人的な悩みや就職を含む将来への相談なども積極的に受け付けます。学生一人ひとりへのきめ細かなケアで、徹底した少人数教育を推し進めてきたのです。
オープンな校風は、障害を持つ学生と一般学生を区別することなく、開学当初から入試の門戸を開放してきた実績にも表れています。入学後も、教育面では講義の事前資料を点字で用意したり、施設面では車椅子用の昇降機を用意するなどきめ細かく配慮。そのサポート体制は、全国障害学生支援センターの調査で、障害学生への配慮度全国4位にランキングされているほどです(出典:「大学ランキング2002年度版」朝日新聞社発行)。
社会に向けて開かれたアカデミズムも強く意識しています。学部は、産業社会学部と社会福祉学部の2学部ですが、両学部ともに、IT時代・高度情報化社会に対応できる個性豊かな人材を育成するため、実践的でしかも創造的な教育を行なっているのです。
特に情報教育には力を入れています。在学中は言うまでもなく、卒業後、就職先では分野を問わずコンピュータの活用や情報交換の手段として、また円滑な社会福祉サービスの利用を促進したり、高齢者や障害者の情報取得・発信を支援する手段のひとつとして、コンピュータとネットワークを使いこなすスキルは不可欠なものになると長野大学では考えているからです。
「本学の学内には、教室から学生食堂にいたるまで無線LAN環境を敷設。学内にある約150台のパソコンは全学生に開放されており、ユビキタス環境が実現されています」と、長野大学情報システムセンター長 谷口 道興氏は説明します。さらに入学と同時にパソコンを所持する「パソコン所持制度」もスタートしました。学生は無線LANを装備したパソコンを携帯し、講義やコミュニケーションの場面で幅広く活用しています。
もうひとつ、教職員の間に「学生の学ぶ気持ちをきめ細かくサポートしよう」という高い意識が浸透しているのも長野大学の大きな特徴です。
「学生に求められてからやるのではなく、ニーズを先取りし、他大学に先駆けてサービスを形にするように心がけています。そのために必要であれば、コンピュータもネットワークも最大限に活用しようと考えています」と、長野大学情報システムセンター事務長 吉岡 清氏は強調します。

先に紹介したように、「学生のニーズを先取りしてサービスを充実させていきたい」という視点で取り組んでいる長野大学は、パソコン所持制度によって実現しつつある「学生1人1台環境」をより有効に活用したいと考えました。講義のみで利用するのではなく、学生生活をより豊かにするためにも先進技術を役立てようと構想を練ったのです。
「まず、大学に来なくても、休講や補講の情報を入手できる仕組みを作ろうと考えました」と谷口氏。
「時間をかけて登校したら休講だったというのでは、学生の学ぶ意欲がそがれてしまいますからね」と谷口氏は説明します。
学内にはユビキタス環境が実現し、パソコンをクリックしていけば、世界中の最新のニュースが動画や音声入りで入手できることがあたりまえの感覚になってきました。それなのに、試験のスケジュールは、大学の掲示板に貼り出された個別の情報を手書きで書き写さなければなりません。自宅からでも、移動中でも、最新の情報を入手して、より自由なスタイルで活用していきたいという潜在需要が高まっていました。
長野大学では掲示板の内容をそのままパソコンで見られるサービスだけでなく、さらに一歩踏み込んで、学生一人ひとりが本当に必要としている情報をパーソナライズして提供することを目指しました。自分が履修している講義についての情報をいち早く受け取り、自分に対する大学からの連絡を受け取れる学生ポータルの実現です。学生一人ひとりへのきめ細かなケアを、コンピュータの世界でも実現しようとしたのです。
もちろん教職員も「1人1台環境」を活用します。急な休講のお知らせを確実に学生へ伝達することのできる仕組みは、教職員にとっても待望の環境だといえます。学生と教職員が一体になったコミュニケーションの密度も高まり、少人数教育の徹底にさらに磨きがかかることも期待できます。
こうした背景から2002年、長野大学は、全学情報ポータル・システムの構築を開始しました。


ポータル・システムの構築にあたって、最初に決めたのは、OSをLinuxにするということでした。そして、Linux上で安定稼働するアプリケーションとして、富士通が提供する大学向けポータルサイト構築システム「Campusmate/Portal(キャンパスメイト/ポータル)」を選定。学生一人ひとりにパーソナライズした情報を提供するため、学籍システムおよび履修管理システムという大学の基幹システムとも連動させています。
サーバは、Webサーバ/アプリケーションサーバ兼用として1台、データベースサーバを1台の合計2台です。どちらも先進のIntelプロセッサを搭載したIAサーバ「PRIMERGY(プライマジー)」を採用しました。Webサーバ/アプリケーションサーバにはRed Hat Linuxを搭載し、データベースサーバにはWindows(R) 2000 Serverを搭載しましたが、どちらのOSに対しても最適な環境を提供できるのがIAサーバ「PRIMERGY」の特徴です。
教育システムの基盤OSとしてLinuxを選択したのは、安定性、セキュリティ、コストというポータル・システムに不可欠な3つの要件を高度に満たすことができるOSであるからです。
第1の要件である安定性についてですが、すべての情報の入り口となるポータル・システムに、安定性が強く求められることは言うまでもありません。その点、長野大学には長年に渡りUNIX文化が根付いており、重要なシステムはすべてUNIXで構築してきました。
長野大学は、商用インターネットが普及する以前からインターネットの前身となる計算機ネットワークの研究に参画しており、1980年代半ばにはすでに「nagano.ac.jp」のドメインを取得して世界中の研究者とコミュニケーションを行なってきました。当時の計算機ネットワークと言えばUNIXオンリーですから、一見するとコンピュータとはまったく関係ないようなテーマを研究しながら、実は高度なUNIX技術を身につけている教授も学内に在籍するほどです。
「わたしが本学の学生であったころから、情報系の講義はUNIXが中心でした」と、長野大学 情報システムセンター 主事 猪俣 安弘氏は言葉を添えます。
講義に使う教育システムそのものもUNIXベースで構築してきました。多数の端末を接続するネットワークシステムを高い信頼性のもとに稼働させ、安定した教育環境を実現するには、UNIXを選択するのが自然な流れであったからです。
第2の要件はセキュリティです。ポータルは、学生/教職員に関する多種多様な情報が集まる入り口であると同時に、悪意ある攻撃にさらされる可能性があることを忘れることはできません。Linuxはセキュリティを重視して設計されたOSであり、ウィルスやワームの被害が少ないことでも定評があります。
「ポータル・システムの構築にあたり、セキュリティの観点から、DMZゾーンに設置するWebサーバのOSは、必ずLinuxにすることを基本方針にしていました」と、長野大学情報システムセンター 主事 池谷 道英氏は説明します。
第3の要件はコストです。これについて長野大学では、全学情報ポータル・システム構築に先駆けて、2001年、教育システムの基盤OSとしてUNIXからLinuxへの移行を決断していました。以来、UNIXの高信頼性を、より低い投資で実現できるOSとして、Linuxは高く評価されてきました。限られた予算の中で、安定性を追求しなければならないポータル・システムには、Linuxが最適であると判断されたのです。
| 長野大学Campusmate / Portalシステム構成(導入時) | |
|---|---|
|
構築期間 |
2ヶ月 |
|
学内クライアント |
約800台 |
|
インフォメーションボード |
1 |
|
WEB / APサーバ |
PRIMERGY L200 |
|
DBサーバ |
PRIMERGY P250 |
Linuxベースの全学情報ポータル・システムは、2003年4月にサービスを開始しました。
サービス内容には、学生ポータル、教職員ポータル、掲示板という3つの機能があります。
学生ポータルは学生個人のための情報の入り口です。自分が履修している講義の時間割を確認できる「マイ時間割」など、入手した情報を便利に活用するための機能も提供されます。また、履修している講義についての休講/補講/試験スケジュールといった情報は、プッシュメールで配信されます。
学生ポータルは、携帯電話でも利用することができます。学生はいつでもどこにいても、必要な教務情報を入手できるようになり、時間を有効活用できるようになりました。学内にいないときでも長野大学の良さを感じていられるような、社会に向けて開かれたキャンパスライフの基盤が実現したのです。
教職員ポータルも、教職員個人の業務を支援してくれます。教員は、臨時休講などの連絡を自宅や出張先から送信できるようになり、便利になりました。
掲示板は、学内に設置した大型プラズマディスプレイに、すべての講義に関する連絡事項を一覧表示する機能です。内容は、従来、紙に書いて貼り出していたものと同様ですが、事務室の職員は手元のパソコンで掲示内容を修正できます。
このポータルを立ち上げる際に特に配慮したのは、全学生へ同レベルのサービスを提供するためのアクセシビリティの実現でした。たとえば音声読み上げ機能は標準で提供することにしました。カーソルを移動するだけでメニューの文字などを音声で読み上げるため、視覚障害を持つ学生でも個人ポータルを気軽に利用できます。このように、さまざまなハンディキャップを持つ学生も楽に利用できるように、メニュー表示の文字の大きさやことばの表現などの細部にまで、きめ細かい工夫を凝らしたのです。
こうした利便性の高いシステム作りをサポートしたのが富士通です。2001年の教育システム再構築を担当した経緯から、その後も月1回の定例会を実施。長野大学の学生サービスの理念に対して、きちんとした理解ができているベンダーであるという評価から、全学情報ポータル・システムの構築も富士通が担当することになったのです。
長野大学が富士通を選定した理由として、Linux関連の技術力が高いことも挙げられます。
富士通は、メインフレームやUNIXで培ってきた高度な技術力とノウハウを結集して、Linux環境でも、メインフレームと同等の信頼性を実現しようという取り組みを重ねてきました。日本企業として初めて米国レッドハット社と提携し、販売やサポートなどの包括的な活動を共同で展開しているのはそのひとつのあらわれです。また、IAサーバ「PRIMERGY」において、1999年3月からLinuxのサポートを開始。すでに5年の長きにわたって、Linuxを安定稼働させてきました。全学情報ポータル・システムの構築にあたっても、Linuxの安定稼働が約束されているPRIMERGYを活用することで、システムのTCOを削減しつつ、安定したシステムを構築することができました。
学籍システムや履修管理システムなど、基幹系システムとの連携を短期間で作り上げるうえでも、富士通の経験とノウハウが活かされました。
稼働開始後も、長野大学の学生サービスの理念に沿って、機能追加や迅速なサポートを行なっています。

今後、全学情報ポータル・システムは、学生ポータルと教職員ポータルの両面で、さまざまなサービス内容の追加が予定されています。
学生ポータルでは、2004年4月から、履修講義の登録ができるようになります。図書館検索、講義資料の公開・ダウンロードなどのサービスも予定しています。住所変更などの各種届も、学生ポータルから送信できるようにする計画です。システム基盤として簡易シングルサインオン機能を搭載しているため、今後新たに開発するシステムはいずれも、アカウントを共有して効率よく利用できます。
アンケートや住所変更などの各種届が個人ポータルから送信できるようになれば、さらなる学生サービスの向上につながります。
「さらに、学生/教職員間のコミュニケーションの密度が上がり、スピードアップすることで、計画的な学生指導も工夫することができるでしょう」と谷口氏は意欲的に語ります。
長野大学では、UNIXシステムと同等の安定稼働と高度なセキュリティを、IAサーバという安価なプラットフォーム上で実現できるLinuxを選択したことにより、さらなる学生サービス充実に向けての可能性を手に入れたのです。
| キャンパス | 長野県上田市下之郷658-1 |
|---|---|
| Tel | 0268-39-0001 |
| Fax | 0268-39-0001 |
| URL | http://www.nagano.ac.jp/ |
| 学部 | 産業社会学部、社会福祉学部 |
| 特長 | 産業社会学部では、21世紀の社会を担う創造的で個性豊かな卒業生を世に送り出すために、インターンシップをはじめとする将来の職業を見据えた教育カリキュラムを充実させている。同学部産業社会学科では、環境・生活文化やコミュニティ政策など4コースを用意し、地域社会の文化や産業を担う新たな社会を創造する人間づくりを目指している。同学部産業情報学科では、経営や情報の4コースを用意し、IT時代・高度情報社会に対応できるITを知る経営者、知識集約産業で活躍できる人材の育成を目指している。社会福祉学部では、福祉と医療の最前線で活かせる実践力の養成を目指している。また社会福祉学部が用意している9コースのうち、情報バリアフリーコースでは、情報システムや情報機器の利活用を通じて、円滑な社会福祉サービスの利用を促進。高齢者や障害者の情報取得・発信を支援する専門家を養成している。 |
[取材日:2004年1月28日]
日経コンピュータ[2004年3月8日号] 掲載記事
PDFLinuxをベースに全学ポータル・システムを構築し、学生サービスの向上を実現(356KB、1ページ)